プレスツアー(案内)

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実施日 : 2023年03月27日 - 28日

群馬プレスツアー

投稿日 : 2023年03月03日

【取材テーマ】共生社会

Ⅰ.国内有数の「移民」の町・大泉町、「多文化共生」への模索
Ⅱ.石段街の温泉地 伊香保で進む「ユニバーサルツーリズム」
Ⅲ.「誰ひとり取り残さない社会」に向けたデジタルの活用

 



 

Ⅰ.国内有数の「移民」の町・大泉町、「多文化共生」への模索

 

日本政府は2019年、少子高齢化に伴う深刻な人手不足を背景に、「改正入管法」を施行し、正面から外国人を「労働者」として広く受け入れる方向に舵を切った。政府は一貫して「移民政策はとらない」という立場を示しているが、この法改正は、「日本の外国人政策の転換点」や「移民元年」などとも表現された。全国の製造業や飲食業、建設業、農業などの現場は、もはや外国人の労働力なしには成り立たない状況になっている。世界で人材の獲得競争が激しさを増し、一方で日本の経済的な魅力が相対的に低下するなか、日本が外国人から「選ばれる国」であり続けるためには、「多文化共生社会」の実現は待ったなしの課題だ。

【写真提供:大泉町観光協会】

 

群馬県の大泉町は、町の総人口約4万2千人のうち約8千人(人口のおよそ2割)が外国人という、日本有数の「移民の町」だ。スバルやパナソニックといった大企業の工場も立地し、北関東でも屈指の工業の町である大泉町では、1980年代後半から製造現場での労働力不足が深刻化した。1990年の入管法の改正により日系二世・三世とその家族に就労活動の制限がない在留資格が認められるようになると、町は積極的に日系のブラジル人やペルー人を受け入れ、その後、定住が進んだ。外国人のうち過半数は日系を中心としたブラジル人で、町にはポルトガル語の看板を掲げたスーパーやレストランなどが立ち並ぶ。

 

外国人住民が急激に増加し、言葉や生活習慣の違いによる戸惑いや摩擦が生じるなかで、大泉町では、多文化共生を推進し、全国に先駆けて様々な事業に取り組んできた。日本語に不慣れな子どもたちのために、町の公立小中学校すべてに「日本語学級」を設置したほか、外国人住民に町の情報や日本での生活ルールを伝えるため、役場窓口に通訳を配置し、ポルトガル語版広報紙も発行。外国人住民にも地域の住民としてまちづくりの担い手になってもらうため、町からの情報を家族や同僚など身近な外国人に母国語で伝えてもらう「文化の通訳」登録制度を創設したほか、日本人住民と外国人住民が共同で行う町の清掃ボランティア活動、災害等の際に活躍してもらう外国人ボランティア団体の育成も進めてきた。

 【写真提供:大泉町】

 

大泉町は現在、外国人住民の高齢化と多国籍化という、新たな局面を迎えている。働き盛りで来日し定住した外国人住民が高齢期を迎えつつあるなかで、年金問題や医療介護という、大きな課題が顕在化してきている。また、近年は南米系外国人だけでなく、ネパールやベトナムをはじめとするアジア系外国人も仕事を求めて増えており、その国籍は49ヶ国にわたる。町の「ブラジル色」が薄まるなか、これまで「ブラジルタウン」を掲げ、観光資源としてブラジル文化を売りにしていた町の観光協会も、近年は「インターナショナルタウン」を前面に打ち出すようになっている。

 【写真提供:大泉町観光協会】

 

群馬県には県全体で約6万5千人の外国人が暮らしており、人口に占める割合は東京都、愛知県に次いで全国で3番目に高い。県では、日本人県民と外国人県民が互いの文化的な違いを認め合い、多様性を活かして新たな価値を「共」に「創」っていくことが群馬県の強みの源泉になるとして、2021年4月には全国で初となる「多文化共生・共創推進条例」を施行した

 

本ツアーでは、群馬県及び大泉町からブリーフィングを受けた後、10歳で来日し大泉町の変化を見届けて来た日系ブラジル人三世の平野勇パウロ(ひらの いさむ ぱうろ)さん、大泉町観光協会の中山正樹(なかやま まさき)事務局長の案内で町内を視察する。ブラジル人向けの小売店やレストランの関係者のほか、アジア系の外国人住民にも話を聞き、「近未来の日本の縮図」「多文化共生社会の試金石」と呼ばれる大泉町の現状を取材する。

 

 

 

Ⅱ.石段街の温泉地 伊香保で進む「ユニバーサルツーリズム」

 

伊香保温泉(渋川市)は、日本を代表する温泉地の1つだ。シンボルの石段街の両脇に旅館や土産物屋、飲食店が軒を連ね、コロナ前までは年間100万人以上の宿泊客が訪れていた。山中の湯元で湧き出たお湯は、山の傾斜を利用して石段の内部の湯樋を流れ、その左右の温泉宿に届けられる。

【写真提供:渋川伊香保温泉観光協会】

 

 

 

傾斜地を活用した温泉街・伊香保で、年齢や国籍、障がいの有無を問わず、誰にでも観光を楽しんでもらう「ユニバーサルツーリズム」の取組が本格化している。車いす利用者や足の不自由な高齢者にとって、伊香保温泉のシンボルの石段は、旅行を楽しむ上で障壁となる。地元の渋川市は2021年9月、東京オリパラ関連の国の事業の一環として、車いすのままで温泉街を散策するためのバリアフリーマップを作製した。障害者らでつくる団体「DET群馬」と現地調査を行い、車いすで石段の上まで上がる迂回ルートや、多機能トイレの情報などを記載。それぞれの坂道については、傾斜の角度とともに、「自力走行可能」「介助者を要する」などの目安も盛り込んだ。

【写真提供:DET群馬】

 

また、伊香保温泉は、1947年に聴覚障害者の全国組織「全日本ろうあ連盟」の結成大会が開かれたことから、今も「聖地」として全国から多くの聴覚障害者が訪れる渋川市聴覚障害者福祉協会は、2022年5月、伊香保を訪れた聴覚障害者にゆかりの場所や観光スポットを周遊してもらえるよう、日頃から一緒に活動している地元の手話サークルや手話通訳者、更に伊香保温泉観光ガイドの会とともに実行委員会を立ち上げ、手話動画付きの観光マップを作製した。地図上のQRコードをスマートフォンなどで読み込むと、観光スポットなどを案内する手話動画を見ることができる。

【素材提供:渋川市聴覚障害者福祉協会】

 

客室や浴場に手すりをつける、床の段差をなくすといった「バリアフリー化」に力を入れる旅館やホテルも増えている。ホテル松本楼は、1991年に車いす対応のトイレを設置するなど、温泉旅館として全国でもいち早くバリアフリーを取り組んで来た。現在は温泉付きのバリアフリールームを計7室備え、コロナ禍での政府による非常事態宣言下でも、バリアフリールームだけは予約が絶えなかった。固いものが食べられない人には刻み料理を、乳幼児向けには成長段階に合わせた離乳食を板前が用意するなど、食のバリアフリーにも力を入れる。

【写真提供:ホテル松本楼】

 

山の傾斜を利用した配湯方式など伊香保の温泉文化について取材した後、渋川市聴覚障害者福祉協会の関係者と全日本ろうあ連盟「結成の地」の記念碑を訪れ、手話動画付きの観光マップについて説明を受ける。続いて、自身も車いす利用者であるDET群馬の飯島邦敏(いいじま・くにとし)代表とともに、石段街における「バリアフリー観光」を体験。ホテル松本楼では、若女将の松本由起(まつもと ゆき)さんから説明を受け、館内を視察する。

 

 

 

Ⅲ.「誰ひとり取り残さない社会」に向けたデジタルの活用

 

2023年4月に「G7群馬高崎デジタル・技術大臣会合」が開催される群馬県では、「共生社会」の実現に向けて、AIなどのデジタル技術を活用したユニークな取組も始まっている。

 

少子高齢化に伴う人口減少により、地方では交通インフラの維持・運営が困難となり、マイカーを運転できない高齢者ら「交通弱者」の移動手段の確保が課題となっている。一般社団法人ソーシャルアクション機構(前橋市)の「福祉Mover」は、買い物や通院等のために外出を希望する高齢者等と、近所を走るデイサービス(通所介護施設)の送迎車の空席をリアルタイムでマッチングし、交通弱者の移動を支援するサービス。移動を希望する人がスマートフォンやコールセンターを通して自宅などの乗車場所と行きたい場所を送ると、近くを走るデイサービスの送迎車両が通常の送迎ルートから「寄り道」して迎えに来て、目的地まで送り届けてくれる。既存のデイサービス送迎網を利用した「相乗りサービス」は、脆弱化する地域の公共交通を補完するものとして、全国から注目を集めている。

(一社)ソーシャルアクション機構の担当者から「福祉Mover」の概要について説明を受けるとともに、スマートフォンから送迎車両を呼ぶデモンストレーションを見学する。

 

     

【写真提供:(一社)ソーシャルアクション機構】

 


前橋市の「めぶくEYE(アイ)」は、スマートフォンのカメラとAI技術を使って、視覚障害者の自由な歩行をサポートするサービスだ。障害物や信号の色、周囲の景観などスマホのカメラが捉えた視界をクラウド上のAI技術で画像認識し、音声で伝えることで、「景色が聴こえる」歩行を実現。その自助のシステムに、スマホを使用した遠隔地からのナビゲーション、さらに近くの共助者による支援として“助けられたい人”と“助けたい人”のマッチングによる共助のシステムを組み合わせて、視覚障害者の困難な「移動」を、楽しみのある「散歩」に変える。また、市が展開している共助プラットフォームと連携することで、視覚害が自身の体験したまちの危険箇所などの情報を提供し、障害者本人が安心・安全なまちづくりに貢献することも可能だ。このアイデアは2022年夏のDigi田甲子園で優勝(内閣総理大臣賞受賞)しており、市では2024年春からの本格展開を目指している。

「めぶくEYE(アイ)」の概要について説明を受けた後、デモンストレーションを見学する。

  

【画像提供:前橋市】

 

群馬県は2022年3月、全国初となるデジタルクリエイティブに特化した若者人材育成拠点「tsukurun GUNMA CREATIVE FACTORY」(前橋市)をオープンした。県内の小中高生は誰でも無料で利用でき、プロも使用するような最先端のデジタル技術やソフトウェアを使って自由に創作活動を行ってもらうことで、クリエイティブマインドを育む。tsukurunでの人材育成については、XR-kaigi(国内最大級のVR・メタバース等の展示会)アワードのアクティビティ部門で優秀賞を獲得。県庁32階には、「人とつながる、新たなアイデアが生まれる」をコンセプトに、官民共創スペース「NETSUGEN」がオープン。約120の会員(民間企業)と行政機関が連携し、ビジネス創出や社会課題の解決に取り組んでいる。群馬県は2020年に「eスポーツ・新コンテンツ創出課」を新設し、「eスポーツ」の特性を活用した「地方創生(ひとづくり、まちづくり、しごとづくり)」と「群馬県のブランド力向上」に取り組んでいる。

「tsukurun」と「NETSUGEN」を視察し、全国トップレベルの「デジタル先進県」を目指す群馬県の取組について、担当者から説明を受ける。

 

 

【写真提供:群馬県】

 


Ⅳ.伝統に新たな価値を吹き込む「創作こけし」の世界

 

日本に昔からある木製の郷土玩具「こけし」。一般的な「こけし」は丸い頭に円柱状の胴体が典型的な形だが、「創作こけし」は伝統的な姿形にとらわれない、自由な形とデザインが特徴で、より作り手の個性が光る。群馬県は「創作こけし」の生産量で全国の約7割を占め、その代表的な工房が、榛東村(しんとうむら)にある「卯三郎(うさぶろう)こけし」だ。2010年に製作したオランダ生まれの世界的なキャラクター「ミッフィー(miffy)」をモチーフにしたこけしが大ヒットしたのを機に、本格的に「キャラクターこけし」に進出。木製ならではの温もりと高級感、伝統工芸ならでは繊細な色使いと品質が国内外で評価され、新市場を切り拓いた。現在、工房では、おかっぱ頭のクラシカルなこけしから人気のキャラクターこけしまで年間13万体制作し、欧州を中心に世界18か国にも輸出している。

「卯三郎こけし」の創業者・岡本卯三郎さんの孫で、創作こけし作家の岡本義弘(おかもと よしひろ)副社長から作り手の思いを聞くとともに、こけし作りの工程を視察する。

 

      

【写真提供:卯三郎こけし】

 



【実施要領】

 

1.日程

2023年3月27日(月)~28日(火)

 

2.スケジュール

【3月27日(月)】

07:00          日本プレスセンタービル発(貸切バス)

09:00-10:00    群馬県/大泉町ブリーフィング

10:10-13:20    大泉町視察(ブラジル料理店での昼食を含む)

14:00-15:00    石川建設株式会社(太田市)

16:15-17:15    卯三郎こけし

17:45          伊香保温泉着(森秋旅館泊)

 

【3月28日(火)】

08:30-09:00    伊香保温泉街視察

09:15-12:00    伊香保温泉ユニバーサルツーリズム 取材

12:10-12:50    昼食

13:45-14:45    一般社団法人ソーシャルアクション機構

15:15-15:45    NETSUGEN

15:45-16:15    視覚障がい者歩行サポートシステム「めぶくEYE」

16:45-17:30    tsukurun-GUNMA CREATIVE FACTORY-

20:00          日本プレスセンタービル着

 

3.参加資格

原則として、外務省発行外国記者登録証保持者

 

4.参加費用

10,000円

(全行程交通費、宿泊費(1泊2食)、昼食(1、2日目)を含む)

 

5.募集人数

10名(各社ペン又はカメラ1名、TVは1社2名まで)

※定員を超えた場合は主催者側で調整することがあります。

 

6.FPCJ担当

取材協力課 菅原・渡邉

(Tel: 03-3501-3405、E-mail: ma@fpcjpn.or.jp)

 

7.備考

(1)本ツアーはG7群馬高崎デジタル・技術大臣会合開催推進協議会が主催し、公益財団法人フォーリン・プレスセンター(FPCJ)が運営を担当しています。

(2)本ツアーの内容は、予告なく変更になる可能性があります。

(3)参加者には経費の一部を負担していただいていますが、営利を目的とした事業ではありません。

(4)本ツアー中に発生した事故や怪我・病気、トラブル等について、G7群馬高崎デジタル・技術大臣会合開催推進協議会及びFPCJは一切の責任を負いかねます。参加者は個人の判断・責任において、必要に応じ旅行傷害保険等に加入して下さい。

(5)写真・TV撮影に関しては、担当者の指示に従ってください。

(6)ツアーの様子を記録した動画・写真・記事を、群馬県やFPCJのホームページやSNS等に掲載することがありますので、予めご了承ください。

 

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