プレス・ブリーフィング(報告)

一覧に戻る

実施日 : 2011年10月28日

報告(プレス・ブリーフィング):金属資源大国ニッポン(2011年10月28日)

投稿日 : 2013年08月21日

img4eadf86b1b75b平沼光・東京財団研究員・政策プロデューサーをお招きし、「金属資源大国ニッポン」のテーマでお話しいただきました。参加者は、外国プレス3名を含む計10名でした。

 

平沼氏は、「日本は資源がない国だと考えられているが、見方を変えれば全く違う姿が見えてくる」と述べた上で、以下のような点を指摘しました。

 

(1)鉱物資源を取り巻く世界の現状と日本

 

1)各国が環境と経済成長の両立を図り所謂グリーン・ニューディール政策を進めるようになった。レアアースは環境・エネルギー産業に不可欠で、その重要性はますます高まっている。

 

2)日本を襲った昨年からの二つの激震:(1)昨年9月の尖閣諸島沖での中国漁船による衝突事故以降、中国からの対日レアアース輸出の実質的な禁止。(2)福島第一原発事故で日本はエネルギー基本計画を見直し再生可能エネルギー推進を急ぐことに。鉱物資源の安定確保がますます必要となる。

 

(2)日本の金属資源のポテンシャル

 

1)日本は地下資源は乏しいが、地上に目を向ければ「都市鉱山」という莫大な資源のポテンシャルがある。例えば、都市鉱山として日本に蓄積されている金の蓄積量は6,800t。地下埋蔵量世界一の南アフリカの埋蔵量6,000t以上。銀も60,000tで、埋蔵量世界一のポーランド(51,000t)を凌ぐ。このほかにも、環境・エネルギー産業でさらに必要となる銅、太陽光発電などで使われるインジウムなど、日本の都市鉱山には様々なレアメタルが大量に眠っている。

 

2)日本を取り囲む広大な海にも資源のポテンシャルがある。
-日本の領海と排他的経済水域(EEZ)の海底には、海底熱水鉱床、コバルト・リッチクラストなどレアメタルを豊富に含む鉱床が存在することが確認されている。政府は海底鉱床の開発を進め、2020年度からの商業化を目指している。
-日本の研究チームが今夏、レアメタル含有量が高くレアメタルの採取も容易な「レアアース資源泥」が太平洋公海の海底に膨大に存在することを発見。日本のEEZ内にも高い確率で存在することが明らかになっている。
-日本を取り囲む海水にも大量のリチウム、コバルトなどの金属資源が溶け込んでおり、それらを抽出する技術の開発が進んでいる。

 

(3)最大の資源は日本人の叡智

 

1)レアアースが環境・エネルギー産業の必需品となり、その安定確保が日本の課題となっているが、そもそも環境エネルギー技術でのレアアース利用を発明したのは日本人(佐川眞人博士)。

 

2)レアアース獲得競争激化の中、日本では既にレアアース使用量削減の技術開発が進行している。昨年12月、佐川博士は新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)などと共に、ジスプロシウム使用量の40%削減に成功したと発表。

 

以上を受け平沼氏は、「日本には資源がないと言われていたが、都市鉱山というものが物質としてある。さらに、海には大きな可能性がある。そして、我々の知恵を活かせば資源を生み出すことも、使わないこともできる」、「資源獲得のための国同士のいざこざをやめ、人類が知恵を絞りさえすれば、どこの国でも金属資源大国になりうる」と講演を結びました。

 

リンク
動画報告

FPCJとは
取材協力
取材に役立つ情報
活動の記録
外国への情報発信