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【実施報告】FPCJシンポジウム:国際秩序が直面する課題と今後の展望 ~外国メディアの視点から~(2月9日開催)

投稿日 : 2017年02月15日

IMG_2052平成29年2月9日、FPCJは「国際秩序が直面する課題と今後の展望~外国メディアの視点から~」をテーマとした国際シンポジウム(後援:外務省)を開催しました。本シンポジウムでは、英国、米国、カナダのジャーナリスト及び日本の有識者をパネリストに迎え、米国新政権誕生や英国のEU離脱など国際秩序が揺らぐ中で、日本及び欧米諸国の国内問題がそれぞれの対外政策に及ぼす影響を検証するとともに、国際社会の安定と繁栄のために、日本をはじめ各国に期待される役割やメディアが果たすべき役割について、安全保障や経済を含む総合的な観点から議論しました。

 

  ▶シンポジウムのプログラム・登壇者略歴はコチラ

 

 

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 【開催要旨】

 

1.第一セッションでは、「日本及び欧米諸国の国内問題が対外政策に与える影響」について、パネリストがそれぞれの視点から各国の状況やメディアの立場を紹介しました。(発言順)

 

■メアリー・デジェブスキー氏/インディペンデント紙コラムニスト(英)

EU離脱の国民投票によって過去50年間の外交政策が逆転した。英メディアについては、放送は厳しい規制・中立性を要求されるが、活字メディアやソーシャルメディア等は派閥主義を前面に打ち出しており、国民の議論においても常に参加者の立場にある。また英国が現在直面している状況は、2000年代に起きたイラク戦争と金融危機に影響されており、これらは経済や外交政策の失敗で、国民は専門家や政治家、国の指導層さえも信頼できなくなり、結果Brexitの投票にもつながった。

 

■ベイ・ファン氏/ラジオ・フリー・アジア編集長(米)

トランプ大統領が多用する「アメリカ第一」というフレーズは、1941年に孤立主義者が使い、トランプ大統領も「取り残された」と感じている白人のブルーカラーの有権者にうまく響いた。また、新政権がテロの恐怖を掻き立てている発言について、テロは米国が直面する最大の課題であり注視していくべきである。米メディアの役割については、トランプ大統領はSNSを巧みに使い国民とのやりとりを一変させた。メディアは事実関係を調べて国民に伝える責任をもっている。

 

■ジャン=フレデリック・レガレ=トレンブレー氏/ル・ドゥヴォアール紙国際部門記者(カナダ)

カナダは大きな政治的変動や、EUのような多国的枠組みも大きなテロもなく、「一つの島」のような存在である。外交政策の基本は多文化主義であり、シリア移民受け入れ決定も、特に恐怖心や抵抗力の高まりなどが起こるようなことはなかったが、貿易相手国として依存している隣国で新政権が誕生したことで国内政治にも影響がでてくるだろう。今のところトランプ政権については、「巨象がカナダ側に寝返りを打たないよう」様子を見ている。カナダメディアは米英ほどの影響力はないが、ソーシャルメディアにより情報を多く発信できている。

 

■中山俊宏氏/慶應義塾大学総合政策学部教授

日本では米英で台頭するような右派的ポピュリズムが見受けられないが、その理由として、現在の安定した保守政権や、共同体の空間を脅かすような危機意識が発生しにくいとの側面がある。一方で、日本は先進諸国の中で安定した対外政策を展開しつつも、トランプ政権の発足により米国との同盟関係や経済関係に不確定要素があることに強い不安が感じられる。

 

■細谷雄一氏/慶應義塾大学法学部教授

世界史的枠組みの視点から、現在は冷戦後に急速に進んだグローバル化に対する反動が先進国で共通して起きており、米英では強く、早いタイミングでそれが起きたが、日本は抑制的かつ起こるタイミングにずれがある。日本はバブル崩壊後内向きの20年を経て、ようやく安定政権である安倍首相が「地球儀俯瞰外交」を推進しており、再び海外で影響力を持つべきとの空気がある。

 

その後、 モデレーターの会田弘継・青山学院大学地球社会共生学部教授/共同通信社客員論説委員とともに、ソーシャルメディアの政治的影響、情報の信頼性の判断などについて各国の具体的状況を交えながらパネリスト全体で議論しました。

 

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2.第二セッションでは、「国際社会(特にアジア太平洋)の安定と繁栄のために、各国に期待される役割」について、それぞれの視点から各国の状況を紹介しました。(発言順)

 

■ジャン=フレデリック・レガレ=トレンブレー氏/ル・ドゥヴォアール紙国際部門記者(カナダ)

2015年にハーパー政権からトルドー政権への10年ぶりの政権交代があった。ハーパー政権時には国連の平和維持活動(PKO)への関与を取りやめ、また多国間アプローチから撤退するなど、「カナダ・ファースト(カナダ第一主義)」の政策をとっていたが、トルドー政権ではPKO活動をはじめ多国間協調主義への復帰を果たし、リベラルな視点から外交政策の舵をとっている。

 

■ベイ・ファン氏/ラジオ・フリー・アジア編集長(米)

これまで米国の政策は、民主主義を世界に浸透させるために他国にどんどん介入していくというものであったが、トランプ大統領は、多国間協議の場で米国はもはや役割を果たさないと明言した。また、TPPからの離脱表明は、米国がアジア太平洋地域での平和と安定のルールメーカーではなくなったことを意味するが、中国に同地域での覇権を握ることを認めたことになるのかは不明である。トランプ大統領が同地域でどのような役割を果たそうとしているのか注意深く観察する必要がある。

 

■メアリー・デジェブスキー氏/インディペンデント紙コラムニスト(英)

英国の外交政策は流動的である。英国の公式見解では、EUから離脱することにより、英国はEU以外の国との通商障壁がなくなり、よりグローバル化し、国際的な役割を取り戻すとしているが、実のところ、離脱支持者は古き良き英国にノスタルジーを感じている層であるがゆえに、国際社会から身を引き、グローバル経済から撤退するなど、内向きな英国が現れるかもしれない。いわば孤立主義と「グローバル・ブリテン」の中間の道を模索する可能性があるのではないか。

 

■細谷雄一氏/慶應義塾大学法学部教授

現在の国際社会は、どの国も国内の病を抱え身動きがとれなくなっている。例えば、トランプ大統領の出現や英国のEU離脱、そして、ロシアや中国がウクライナや南シナ海で行っているような、力による現状の変更などである。そのような中で、安定した政権運営の下で日本はリーダーシップを発揮する役割を期待されているが、不確定要素も大きく、困難を伴うであろう。

 

■中山俊宏氏/慶應義塾大学総合政策学部教授

米国は国際社会において、特別な役割を引き受けない「普通の国」になろうとしているのではないか。さらに匿名の世論調査ではトランプ大統領の支持率は過半数に達するとし、それが日本が直面している米国の姿なのであれば、既存の日米安全保障体制を根本から覆すことになるかもしれない。トランプ政権は、予期せぬ副産物として日本国民が既存の日米同盟に代わるものは何かを考えるきっかけを示唆しているが、同時に、日本は米国にとってベストパートナーであり、アジア太平洋地域の安定にとって必要な存在であることを主張していくべきだ。

 

最後に、会田教授は、世界は大きく変貌していくかもしれないが、今日の議論を参考にしつつ、今後の国際社会の情勢を見守っていきたいと総括しました。

 

質疑応答セッションでは、NAFTA再交渉や日米首脳会談への期待、英国や世界の若者の政治的な運動、トランプ政権に対する米メディアの対処などについて来場者から質問がありました。

 

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本シンポジウムには、国内外メディア、駐日大使館、自治体、大学、企業・団体関係者などから、計133名の御参加がありました。多くの方々に御来場いただき、誠にありがとうございました。

 

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