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岩手県 達増拓也知事(2016年3月) | 公益財団法人フォーリン・プレスセンター(FPCJ)

首長による情報発信

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岩手県 達増拓也知事(2016年3月)

投稿日 : 2016年03月11日

東日本大震災から5年。一時は“壊滅状態”ともいわれた岩手県沿岸部の街も、インフラの整備や工場などの再建によって活気が戻ってきた。震災5年を迎え、岩手県は今後どのように復興に取り組んでいくのか。岩手県の達増拓也知事に、県の現状とこれから進むべき道について聞いた。(聞き手:FPCJ理事長 赤阪清隆)

 

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―東日本大震災から5年の節目を迎えるに当たり、これまでの県の復興の取り組みに対する評価および今後の展望をお聞かせください。

 

2011年3月11日以来、東北3県をはじめとする復興は、世界各地からのご支援によって強力に支えられてきました。5年たつとはいえ、まだまだ課題は多く、私たちの復興は今も“ピーク”にある状況です。

 

④(三陸鉄道北リアス線全線開通 平成26年4月)震災の被害は、岩手県内だけで、死者4,672人、行方不明者1,124人(2016年1月31日)にも及びました。特に沿岸部の被害は甚大で、住宅、学校、病院などの公共施設の多くが機能を失い、県の主要産業でもある水産業に関しては、漁船や養殖施設がほぼ壊滅という大変な事態でした。そこで県では一刻も早い復興を目指し、震災から5カ月後の2011年8月に「岩手県東日本大震災津波復興計画」を策定しました。復興期間を3期8年に設定し、それぞれの段階に応じた取り組みを想定することで、より体系的な復興プロセスを目指しました。結果、2014年までに、災害廃棄物の撤去、三陸鉄道の全線運行再開などを実現することができました。(写真:三陸鉄道北リアス線全線開通(2014年4月))

 

今は第2期本格復興期間の最終年に移っていく段階で、復興の事業が量的にピークを迎えています。予算も確保できていますので、これを維持し、着実に進めていくことがまず大事な局面です。

 

―岩手県内で被災された方の住宅事情、生活状況はどのように変化してきているのでしょうか。

 

②応急仮設住宅団地(釜石市)今もなお、応急仮設住宅での生活を余儀なくされている方がたくさんおられます。さらにこの状況が何年か続く方もいらっしゃいますので、心や体のケア、コミュニティの支援など、復興の質の向上がさらに大切になってきます。復興の重点は、まず住宅の再建です。災害公営住宅は2017年3月末までに約9割が完成する予定です。一方で、持ち家再建のための土地の造成は、あと3年はかかる見込みです。そこから家を建てるとなるとさらに時間がかかりますから、一番被害が大きい陸前高田市も視野に入れると、10年くらいかかってしまいます。ただ、今後応急仮設住宅から災害公営住宅や持ち家に住民の方々が移っていけば、いよいよ復興もゴールに向けて動いていく展開になります。また、たとえ住む場所を確保できたとしても、働く場所がなければ、ふるさとを離れなければならなくなります。何よりもなりわいの再生が急務です。水産業については、必要な漁船や養殖施設はほぼ再建され、水揚げ量も震災前の8割まで回復しました。水産加工業も、壊れた工場がどんどん新しくなり稼働を始めています。商工業関係も被災した事業所の約8割が再開しましたが、現在は、むしろ労働力の確保が課題になっています。(写真:釜石市の応急仮設住宅)

 

―復興も別のステージに移ってきて、次の正念場を迎えていますね。岩手県として、復興とともにアピールしていきたい部分、特に産業分野についてはいかがでしょうか。

 

⑥銀河のしずく名称発表会(H27.11)岩手県は農林水産業が盛んで、農業産出額は全国11位、漁業生産額は全国14位です。米の生産も盛んで、「岩手県南ひとめぼれ」が全国食味ランキングで「特A」を21回取っています。今年の秋に市場に出る予定の新しい県のオリジナル品種「銀河のしずく」も「特A」を取りました。(写真:「銀河のしずく」の新名称発表会でその特色を説明する達増知事)

 

 

漁業では、全国第1位の漁獲量を誇るワカメに加え、カキ、ホタテ、ホヤなども、震災前の水準で生産されるようになっています。サケ、アワビ、ウニなどの稚魚を育てて放流する栽培漁業も盛んです。世界に通用する質の高いものばかりですので、今後は、国内はもちろん、海外への輸出にも力を入れていきたいと考えています。米はすでに香港やアジア中心に輸出が増えているほか、アメリカや香港への輸出用の肉を処理する認定を受けた工場ができて、牛肉の輸出額も伸びています。海産物に関しては、少し前までは冷凍サンマのようなものをアジアに輸出していましたが、最近は、おしゃれなビンや缶に入ったおいしい加工品の人気が高まってきて、輸出が次第に増えてきたところです。

 

 ⑤釜石曳き船まつりで湾内を周回する漁船(H27.10) SONY DSC

(左:釜石伝統の「曳き舟まつり」で湾内を周回する漁船(2015年10月)、右:新しく生まれ変わった大船渡魚市場)

 

 ―産業が活性化すれば、復興もさらに加速しますね。岩手県ではさらに、「ふるさと振興総合戦略」を策定したとお聞きしています。その特色をお話しいただけますでしょうか。

 

⑦釜石市 橋野鉄鉱山復興は、「ふるさとを消滅させない」という意味で、いわゆる地方創生、ふるさと振興と相通じるものです。昨年10月に策定した「岩手県ふるさと振興総合戦略」を着実に推進して、ふるさと振興を軌道に乗せていきたいと考えています。

 

ふるさと振興の実現に向けて岩手県が今、目の前に抱えている問題に、人口減少があります。その背景にあるのが、人口流出の問題と出生率の低下、少子化です。岩手県の有効求人倍率が全国平均よりも低くなると、人口流出が増える傾向にあります。国には、地方経済が総体的に悪くならないように、経済政策をしてもらうことが大事ですし、地方も一人一人の生産性を高めていく努力をすることによって、東京一極集中を是正していこうとしています。日本全体にも言えることですが、若者や女性の生きにくさが原因としてあり、就職、結婚、出産、子育てなど、それぞれのライフステージに合わせて、切れ目なく対策を講じていく必要があります。就職のサポートはもちろん、今年度は“いきいき岩手”結婚サポートセンターを作って結婚の支援も始めました。さらに、出産、子育てがやりやすいような医療、福祉体制の充実にも力を入れていきます。(写真:明治日本の産業世界遺産としてユネスコ世界遺産に登録された橋野鉄鋼山(釜石市))

 

―復興のプロセスと併行して、新しく構想している事業はありますか。

 

①広報)希望のかけ橋・ベルトコンベヤH27.1.16「三陸創造プロジェクト」として、先端的な研究施設の整備などを推進していきたいと考えています。象徴的なものとしてILC(国際リニアコライダー)※の建設実現の構想が挙げられます。さらに、再生可能エネルギーの開発も復興計画の中で取り組んでおり、洋上風力発電など、今までなかったような新しい科学技術を沿岸部に導入していくことに力を入れていきたいと考えています。また、震災直後に世界遺産に登録された平泉、2015年に登録された釜石市の橋野鉄鉱山のような地域資源を活用しながら観光振興にも力に入れ、国内外から観光客を呼び込んでいきたいです。

 

私たちは震災でたくさんのものを失いましたが、県の未来は大きく開けています。意外と思われるかもしれませんが、2013年からの2年間で、沿岸市町村の20~24歳の人口が8%増加したのです。震災後、ある程度の人口減少は覚悟しており、実際にほとんどの年齢層は減り続けているのですが、20代前半だけは増えているのです。震災後のうれしい変化です。そこに数字で予測できない、人間の底力のようなものが、岩手沿岸、しかも若い人を中心に起きていることが証明されており、将来に向けて、大変頼もしく思っています。(写真:土砂を運ぶために建設されたベルトコンベヤー専門のつり橋「希望のかけ橋」(陸前高田市))

 

 

―若い人が増えているということで、これからいろいろなことが期待できますね。そういった部分を、外国メディアにも取材してもらえるよう、FPCJからも働きかけていきたいと思います。ILCの建設や世界遺産に加え、2019年のラグビーワールドカップに向けて建設中の釜石市のスタジアムにも注目しています。今日はありがとうございました。

 

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※全長31㎞から50㎞にわたる地下トンネルに建設予定の世界最先端の素粒子実験施設。地下100メートルに盤石な花崗岩がある北上山地が有力な候補地に挙がっている。

 

写真提供:岩手県

 

FPCJは2016年3月3日から4日にかけて、「5年目の復興」をテーマに、岩手県沿岸部の復興状況を取材するプレスツアーを実施しました。詳細はこちらへ。

 

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