社説読みくらべ

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米大統領選挙、共和党・トランプ氏が勝利

投稿日 : 2016年11月11日

 

朝日:危機に立つ米国の価値観

産経:「自由の国」であり続けよ 新同盟関係へ日本は覚悟を

日経:米社会の亀裂映すトランプ氏選出

毎日:世界の漂流を懸念する

読売:トランプ氏の勝利の衝撃広がる 冷静に日米同盟を再構築したい

 

Donald Trump supporters rally outside of the Hilton Hotel in Midtown Manhattan.

 写真:The New York Times/アフロ

 

 

米大統領選挙(11月8日投票)で共和党候補のドナルド・トランプ氏が、民主党のヒラリー・クリントン前国務長官に勝利し、第45代大統領となることが決まった。全国紙5紙は、いずれも拡大版社説を10日付で掲げ、事前の予想を覆したトランプ氏の勝利に大きな驚きを示すとともに、同氏の過激な発言で浮き彫りになった米国の社会的分裂、排外主義や孤立主義への傾斜、世界的なポピュリズム(大衆迎合主義)の台頭などへの強い懸念を表明した。

 

今回の大統領選の結果について、各紙とも国際秩序を揺るがし、今後の国際関係における大きな転換点になりかねないと受け止めている。

 

■ 国際秩序の混乱への懸念

 

トランプ氏の勝利について、朝日は「戦後の国際秩序を揺るがす激震である」、毎日は「世界漂流の予感と言っても大げさではなかろう」、読売も「『予測不能』の事態の展開」とその衝撃の大きさを表現した。

 

日経も「数々の暴言で物議を醸してきた人物だけに内外に大きなきしみを生みかねない」と懸念を示すとともに、産経は「予想外の展開、規格外の人物の登場により『トランプ・リスク』が生じるのは避けられない」と指摘した。

 

また、全5紙に共通するのは、今回の選挙結果で浮き彫りになった米国の「内向き」志向、米社会的亀裂と政治の劣化、世界的なポピュリズムの拡散への強い懸念である。

 

朝日は、「内向き」で利益優先主義の大統領誕生について、「米国の国際的な指導力に疑問符がつく」と指摘し、“強いアメリカ”を取り戻すためには米国が体現してきた自由と平等、民主主義、法の支配、市場経済などの普遍的価値観に「立ち戻って信頼を築き直してもらいたい」と要望した。また、今回の結果は、「政党政治が狭量な分断の政争に明け暮れ、機能不全に陥っている」として、「その意味で、米国政治こそが最大の敗者とみるべきであろう」と論じている。

 

読売も、“史上最悪”の大統領選では、候補同士のレッテル貼りやポピュリズムの応酬で政策論争が深まらなかったとして「米国政治の劣化は深刻である」と強調した。その上で、「選挙戦で深まった米社会の亀裂の修復」こそが、最初に取り組むべき課題としている。

 

日経も、今回の選挙により米国民の一体感がなくなれば、国際社会における米国の指導的立場も大きく揺らぐとして、「(トランプ政権が)まず取り組むべきは社会の分断を止めることだ」としている。

 

毎日は、トランプ氏が「米国社会の不合理を解消するには既成の秩序や制度を壊すしかいない」と訴え、米国社会で少数派となりつつある白人の低所得者層を引き付けたやり方について「徹底したポピュリズムと言ってもいい」と指摘した。

 

産経は「米国内で内向き志向が強まる」ことへの強い懸念を表明するとともに、トランプ氏の発想の根本に“損得勘定”があることについて、「国際秩序の維持に努める重大な意義と天秤にかけられる話ではあるまい」とけん制した。

 

■ 日米安保、TPPへの影響必至

 

日米関係では、「日米同盟」への悪影響を懸念し、当面の冷静対処を求めながらも、安全保障と経済政策における同盟関係の再構築の必要性を訴えた。

 

読売は、同盟国を軽視するトランプ氏の外交・安保政策を問題視し、「中露の影響力が相対的に拡大し、『力による現状変更』の動きが加速する恐れがある。米主導の国際秩序をこれ以上揺るがしてはならないだろう」と指摘した。TPPを破棄し、北米自由貿易協定(NAFTA)も見直すとする保護主義的な姿勢についても、「米国の威信低下と長期的衰退は避けられまい」と論じた。さらに、同紙はトランプ陣営の人材不足と政策検討の甘さを指摘し、日本政府は「新政権の方針を慎重に見極めながら、同盟の新たなあり方を検討すべきである」と主張した。

 

産経も、トランプ氏が駐日米軍の経費負担増を求めていることに関連し、アジア太平洋地域は「中国の一方的海洋進出に歯止めをかけられるかどうかの岐路に立たされており、その成否は米国自身の国益にも結び付いている」として、日本政府は米軍の持つ抑止力の意義などについて「誤解を解く努力を重ねるべきだ」と指摘した。TPPの撤回についても、「米国の成長に資するはずがない」、「米国の信頼は失墜する」として、TPPの戦略的意義の再認識を求めた。

 

日経は、米国の外交政策が今後、内政への傾斜で手薄になりかねないことから、「米国のアジアへの目配りが弱くなることを覚悟しなくてはならない」と警鐘を鳴らした。その上で、駐留米軍の負担増について「日本の安全保障が米軍に依存しているのは事実であり、ある程度の負担増はやむを得ない」との姿勢を明確にした。TPPについては、アベノミクスの“推進役”として期待されているだけに、「安倍政権には打撃であり、シナリオの練り直しも必要になる」と主張した。

 

朝日は、駐留米軍への分担費増の要求や日韓両国の核武装容認発言について、「同盟関係への無理解に基づく発言」として、日本政府に対し「ねばり強く国際協調の重みを説明していく必要がある」と求めた。

 

毎日も、「同盟国との関係や国際協調を粗末にして『偉大な国』であり続けることはできない」と論じた。

 

 

※このページは、公益財団法人フォーリン・プレスセンターが独自に作成しており、政府やその他の団体の見解を示すものではありません。

 

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