社説読みくらべ

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参議院選挙、与党勢力が躍進

投稿日 : 2016年07月19日

JAPAN-TOKYO-UPPER HOUSE ELECTION

 

朝日:「後出し改憲」に信はない

産経:安定基盤を懸案解決に

日経:改憲より先にやるべきことがある

毎日:まず自民草案の破棄を

読売:安定基盤で経済再生の貫徹を

 

 

写真:新華社/アフロ

 

 

第24回参院議員選挙が7月10日に行われ、自民、公明両党は安倍晋三首相が勝敗ラインとした改選過半数の61を上回る70議席を獲得した。おおさか維新の会は7議席と躍進し、これら3党と日本のこころを大切にする党、諸派・無所属の非改選議員を合計した「憲法改正」志向の議員総数は、改憲発議に必要な参院の3分の2(162議席)を上回る165議席を占めた。安倍首相は、選挙後の記者会見で、憲法改正について「この選挙で是非が問われたとは考えていない。今後、与野党関係なく憲法審査会でしっかり議論してほしい」と述べた。

 

一方、野党第1党の民進党は32議席(改選前45議席)に後退した。野党で健闘したのは共産党だけで6議席(改選前2議席)と倍増した。無所属の野党統一候補は4議席にとどまった。

 

■ 改憲勢力、参院でも3分の2以上に

 

全国紙5紙は7月11日付の社説で一斉に選挙結果について論評したが、最大の注目点は改憲勢力が衆参両院で「3分の2」以上になったことだ。“護憲的”な立場の朝日、毎日と“中立的”な日経の3紙は、今回の結果を「歴史的な選挙」(朝日)、「戦後政治史の転換点になる可能性がある」(毎日)、「1946年11月の日本国憲法公布から70年。戦後政治は大きな転換点にさしかかっている」(日経)として、今後の改憲をめぐる展開に警戒感をにじませた。

 

一方で、“改憲的”な立場の読売は、改憲勢力の拡大を「前進」と評価したが、「これで改正発議が現実味を帯びたとみるのは早計だろう」と慎重な見方を示した。産経は、「改憲や安全保障体制の強化などに総力を挙げるべきである」と述べるにとどまった。

 

朝日は、選挙結果を受けて「改憲の議論が現実味を帯びながら進められていく」としながらも、「これで一気に進むほど憲法改正は容易でない」と論じた。その理由は、国民は今回の選挙で憲法改正にゴーサインを出したわけではなく、与党内でも“加憲”を主張する公明党が「慎重論を強めている」ためだとしている。選挙では「改憲隠し」をしたとも批判した。

 

毎日も、今後の展開について「初めて国会が改憲案を発議する事態もあり得る」との認識に立ち、憲法審査会再開の条件は、「自民党が野党時代の12年にまとめた憲法改正草案を、まず破棄することだ」と主張した。理由は、草案に日本の伝統の過度の賛美や、自衛隊の「国防軍」化などが盛り込まれているためとしている。その上で、自民党が草案を最終目標に掲げている限り「与野党による落ち着いた議論を阻害し続ける」として、冷静な憲法論議の環境整備が政権与党の責務であると論じた。また、公明党に対して「従来以上に自民党に対するブレーキ役を果たす責任がある」と注文を付けた。

 

日経も、与党勝利は「対立争点を設定しない戦術」によるとして、選挙での改憲隠しを批判するとともに、「国会の憲法審査会でいきなり具体的な発議項目を詰めていくような展開は、やはり民主的な手続きのうえからも問題と言わざるを得ない」と指摘した。さらに、自民党の改憲草案について、「保守色が濃すぎてとても多くがのめる代物ではない。見直しの党内論議を求めたい」と強調した。

 

一方、読売は、改憲勢力の拡大を評価しながらも、改憲論議が簡単に進むものではないとの認識を示した。その理由は、「具体的な改正項目について、各党の足並みが必ずしもそろっていないからだ」と指摘した。さらに、憲法改正は、国会の発議後、国民投票で過半数の賛成を必要とすることから、「野党第1党の民進党も含め、幅広い合意が可能な項目の改正を追求するのが現実的だ」と求めた。

 

産経は、改憲や安保体制の強化に総力を挙げる必要性を強調し、「この勝利を懸案解決に結び付ける責任を首相は負った」と指摘するにとどまった。

 

■ 不調に終わった「野党共闘」

 

注目された「野党共闘」については、全国紙は全体的に厳しい評価となった。読売は「共闘の効果は限定的だった」として、特に安保法制を「違憲」として廃案を求める主張は支持されなかったと強調した。また、共産党との「野合」批判が、野党共闘に大きな影響を及ぼしたと指摘し、野党第1党の民進党の“左傾化”について「安保関連法の廃止を求める戦術には終止符を打ち、より建設的な論戦を与党に仕掛けるべきではないか」とした。

 

産経も、基本的な根幹の異なる共産党との選挙協力は「最大の失敗」とした上で、「政権の受け皿を目指すなら、与党に真に対抗できる現実的な政策を磨くことが不可欠」と強調した。

 

一方、朝日は、野党共闘は「一定の結果を残した」と評価しながらも、「全国的に政権批判の受け皿になるには力強さを欠いた」と分析。巨大与党に対抗するには野党共闘が最も有効であるとして、「政権選択を問う次の衆院選」に向けて新たな野党共闘への態勢作りを急ぐ必要があるとした。

 

毎日も、すべての1人区で統一候補を擁立したことは「ある程度の効果を発揮した」と評価したが、民進党に対しては「選挙結果を重く受け止める必要がある」と厳しく指摘。「政権を担い得る政党として信頼回復の努力が欠かせない」として、共産党との共闘戦術を今後は見直すよう求めた。

 

日経は、民進党の再建の道のりの厳しさを指摘するとともに、「民共連携は与党を利する一面があった」と分析した。

 

 

※このページは、公益財団法人フォーリン・プレスセンターが独自に作成しており、政府やその他の団体の見解を示すものではありません。

 

 

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