外国記者に聞く

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【中国】環球時報 孫秀萍 特約記者

投稿日 : 2015年08月14日

写真 (記者提供クロッピング)

 

『環球時報』の孫秀萍特約記者は、中国において日中関係の摩擦が報道される度に、本来の日本の姿が十分中国に伝わらなくなっていると分析する。20年に亘る記者活動を「時間が経つにつれ、伝える立場にある責任の重さを感じる」と話す孫特約記者に、日本での取材について話を聞いた。 

 

 

~ 本来の日本の姿を伝える ~

 

 

― 主にどのような記事を執筆されていますか。

壁画 京都ツアー(於保)(補正済み)

『環球時報』は、中国国内で最も読まれている国際情報紙です。その中に、世界各国の文化や社会などを紹介する『都市風情』というコーナーがあり、私は主にそこに掲載される日本の記事を執筆しています。最近は、日本でこの数年社会現象となっている「婚活」を紹介しました。また、京都の二条城の壁画保存の取り組みや、鎌倉の禅寺・浄智寺に伝わる精進料理など文化に関する記事は、フォーリン・プレスセンターのプレスツアーに参加して書いたものです。『都市風情』は日本の地方のことなど、読者に知られていないことを紹介できるので、非常に気に入っているのですが、世界各国の都市が取り上げられるため、掲載までに時間がかかってしまうことがあります。

 

 

― FPCJのプレスツアーで執筆した記事をまとめた書籍を中国で刊行されていますね。

新聞紙面では字数の制限があるので、書ききれないことを本にしたり、ソーシャルメディアで紹介しています。その一つが、“とっても日本的なものを紹介している” という意味の『非常日本』という本で、『都市風情』に掲載された記事を中心にまとめています。さらに、日本の全体像を読者に伝えられればという想いで続編『実話日本』を準備中で、早ければ年内に刊行できます。また、中国版ツイッター微博(Weibo)とも連動させている個人的なブログ『日本播報』では、日本の日常を綴っています。 

 

  

― 最も印象に残っている取材について教えてください。

日本は、ここ100年の間で急速に発展した国です。中国も今、同じような道を歩もうとしています。日本取材にあたり常に念頭に置いているのは、「中国が日本の経験から学べる部分はどこか」ということです。そのような観点から、去年の愛媛県今治市のタオル産業の取材は印象に残っています。タオル工場の取材を通して、90年代から急増した安価な中国産タオルに押され、一時存亡の危機に直面しながらも独自の品質基準を満たす商品だけが「今治タオル」と認定される仕組みを打ち出し、有名デパートやギフト市場など新たな市場開拓を果たした過程を記事にしました。中国のものづくりが海外からどのような目で見られているのか、また大量生産である中国のものづくりへの警鐘として、学ぶべき所が多くありました。

 

 

― 中国の読者の一番の関心事項は。

やはり日中関係です。日本で暮らしている私はたくさんの良い面を見ているのですが、自国の日本報道を見ていると、日中関係の負の部分に集中しすぎていると感じます。この点に関して、日本のマスコミも同じ傾向があります。このため日本の国としての全体像がぼやけ、本来の日本を理解する妨げになっています。二国間関係の問題点に報道が集中することは、中国のマスコミだけでなく、日本のマスコミにも言える事かもしれません。中国の人々に本来の日本の姿をいかに伝えていけるかを、自らのテーマとしてこれからも探究していきたいと思います。

 

 

~ 誤解をとき、日本と中国の距離を縮める ~

 

 

― 来日前と後で日本の印象はどのように変わりましたか。

一般の中国人に共通して言えることは、日本との国交がなかった1945年から1972年の間、つまり戦後復興から高度経済成長期の日本に関する知識がないことです。私自身も戦後日本の貧しさや、日本人が歩んできた戦争の悲しみをかみしめながらの復興などを知らずに日本に来ました。そのせいか、日本は傲慢で、なんでも上から目線で、中国を見下しているという印象をもっていました。でも、91年に来日して実際に日本で暮らし、日本を自分の目や耳で知るようになってからは、日本人は礼儀正しく、秩序のある国という印象を持つようになりました。

 

 

― これから日本に来る中国の記者に、アドバイスをお願いします。

まず、先入観を捨てることです。情報伝達の制限と昔の戦争の影響で、中国人はなんとなく日本人の問題を探すような目で見ることが多いです。今の日本にぱっと飛び込んできても、多くの中国人の意識は1945年時点で止まっているのかもしれません。「日本人は絶対こうだ」というイメージで取材をすると、何を見ても負の面しか見えません。互いを見る目が食い違うことを意識しながら、自分の記事で日本人と中国人の誤解をとき、距離を縮めて行こうという志を持つことが大切です。自分が見ている現実に集中することを心がけてほしいと思います。

 

 

― 記者としての充実感を味わうのはどんな時ですか。

自分の目、耳を通じて体感したことを記事にし、紙面に掲載されることが一番の喜びです。中国で知られていない本来の日本の姿を、少なくとも中国の150万人の読者に知らせることができるのはうれしいことです。同時に、記者として、中国人が知らない日本を伝える立場にあるという責任の重さを、時間が経つにつれ増々感じています。

 

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 孫秀萍 特約記者 中国黒龍江省チチハル市生まれ。東北重型機械学院(燕山大学)工学部卒。夫の日本留学で1991年に来日、在日中国人向け新聞の編集職を経て1995年から『環球時報』の特約記者。同紙英語版(Global Times)にも英訳記事が掲載されることがある他、同系列の『環球人物』誌や『生命時報』紙にも寄稿している。「非常日本」、「別様欧州」などの著書がある。

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環球時報  1993年1月創刊。中国で最も読まれている国際情報紙(発行部数150万部)。中国共産党の機関紙『人民日報』の傘下。世界75の国に約350名の特派員、特約記者が駐在している。

 

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