実施日 : 2016年01月27日 - 29日
報告:北海道(札幌・帯広)プレスツアー「冷たい雪を利点に変える」
投稿日 : 2016年04月01日
2017年開催予定の冬季アジア札幌大会を前に、第8回札幌アジア冬季競技大会組織委員会主催、FPCJ企画・運営による北海道(札幌・帯広)プレスツアーを実施しました。本プレスツアーには、中国、香港、韓国、バングラデシュ、カザフスタン、米国、イタリア、スペインの8か国・地域から13名の記者が参加しました。
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<1日目>
1. 大倉山ジャンプ競技場
ツアーのはじめに、記者一行はスキージャンプの国際大会が数多く開催されてきた大倉山ジャンプ競技場を訪れました。1972年開催の冬季オリンピック札幌大会に関する貴重な所蔵品やウィンタースポーツの歴史が展示されている札幌ウィンタースポーツミュージアムを見学し、スキージャンプの佐藤幸椰選手と原田雅彦監督にインタビューしました。記者からは、日本のスキージャンプの特徴や、オリンピックでの金メダルの数、佐藤選手のトレーニングについて質問が挙がりました。
ジャンプ台の上に設置されている展望ラウンジに移動した記者一行は、施設担当者から、大倉山ジャンプ競技場は世界でも珍しく大都市にあり、アクセス面や利便性において利点があると説明を受けました。展望ラウンジから一望できる札幌市街地の景色にカメラを向ける記者の姿が見られました。
2. 「さっぽろ雪まつり」雪像制作現場
さっぽろ雪まつりの開催を1週間後に控えた大通り会場を訪れ、雪像制作の現場を取材しました。外国からの観光客も年々増えている雪まつりの舞台裏に、記者たちは高い関心を示していました。数ある雪像の中でも毎年高い評価を受けている自衛隊による製作現場では、「聖ポール天主堂跡」の雪像づくりが進んでいました。元自衛官でもある札幌市雪像制作団の森岡孝友隊長からは、雪像づくりは自衛隊の防衛訓練になるとの説明があり、記者は興味深そうに聞いていました。市民ボランティアが北海道新幹線の雪像を作っている現場では、道内外から集まったボランティアにインタビューし、雪まつりに参加する意気込みや思いを聞きました。
3. 一般社団法人エゾシカ協会/株式会社玉木商店
北海道ではエゾシカが増加し、農林業への被害や交通事故などが社会問題になっています。エゾシカ協会は、シカとの良好な共生関係を目指しており、エゾシカの数をコントロールするために、資源としてシカ肉を活用することにも取組んでいる、と松浦友紀子理事から説明を受けました。松浦さん自身もハンターとして活動し、「獲って食べる」をモットーにした女性ハンターのネットワークづくりにも力を入れているとのことです。
日本茶の製造・販売を行っている玉木商店の玉木康雄社長は、お茶に欠かせないおいしい水をつくる森をエゾシカによる荒廃から守るため、ハンターとして活動しています。同時に、仕留めたシカの肉を有効活用するため自ら佃煮を開発・商品化しており、記者たちにもお茶漬にしてふるまいました。シカ肉は、高タンパク質・低脂肪であるとの説明に対し、輸出の可能性を問う記者の声もありました。
<2日目>
4. 札幌市長インタビュー
秋元克広市長から、祭りやスポーツを通して雪を楽しみ、またエネルギーとして有効活用する札幌市ならではのまちづくりについて説明を受けました。「札幌市も外国人観光客が増えている理由は何か」という記者からの質問に対し、秋元市長は「東南アジア諸国の人々にとって雪は非日常なので、魅力的なのではないか」と答えました。他には、多量の雪を管理する難しさ、アベノミクスやTPPの影響、冬季アジア札幌大会の予算と経済効果について質問が挙がりました。
5. 都心北融雪槽
札幌市内の雪を効率的に溶かすとともに、冬の終わりに貯蔵した雪を氷雪エネルギーとして夏の冷房などに利用する融雪槽を取材しました。市の担当者から融雪槽の仕組みや処理能力、氷雪エネルギーの省エネ効果について説明を受けました。「融雪槽が完成する前はどのように都心の雪を処理していたのか」という記者からの質問には、「50台ほどのトラックで郊外や河川に運んでいた」と回答があり、融雪槽は設備投資にコストがかかるが環境負荷を低減でき、都心の雪を都心で効率的に処理するという利点があるとの説明がありました。その後、記者たちは融雪槽で撮影やインタビューを行いました。
6. 森浦農場
雪を利用した倉庫(雪室)でジャガイモを甘く熟成させるとともに、長期保存により年間を通して安定した出荷を行っている森浦農場を取材しました。記者たちは、農場の4代目の森浦政明さんから、ジャガイモを低温多湿に保つことででんぷんが糖に変わる仕組みや、雪室の設備、生産しているジャガイモの種類などについて説明を受けました。また記者からは、貯蔵方法や経営状況、アベノミクスやTPPに対する考えについて多くの質問が挙がりました。雪室で貯蔵した甘いジャガイモの試食をした記者は、その美味しさに驚きの声をあげていました。
7. 帯広の森屋内スピードスケート場
2017年の冬季アジア大会でスピードスケート競技の開催地となる帯広の森屋内スピードスケート場を訪れました。冬の寒さが厳しい帯広市では、スピードスケートのみならず、屋内で陸上やフットサル、テニスができる多目的施設としても人気を集めています。小学生や中学生がスケートの練習に励んでいるスケート場では、地元スケートクラブの監督や選手にインタビューを行いました。「このような設備で、子供のころから練習できるのは素晴らしい」と感想を述べる記者もいました。
<3日目>
8. 帯広市長インタビュー
米沢則寿市長へのインタビューでは、記者から「農業が盛んな地域で厳しい冬を逆転の発想で利用する戦略はあるか」、「TPPやフードバレー構想といった国の政策についてどう思うか」、「中国をはじめとした外国人観光客が増えているなか、日中関係を前進させるようなポイントはあるか」といった質問が挙がりました。米沢市長は、TPPについては食品の安全性や付加価値を高めることで海外輸出に取組むとし、また日中関係では市民レベルでの相互理解が大切であるとの考えを示しました。帯広市から何人の選手が冬季アジア大会に出場するかを問う質問に対しては、「一人でも多くの選手に出場してほしい」と答えました。
9. ノラワークスジャパン
冬の厳しい寒さと温泉熱を利用し、十勝地方でマンゴーを生産しているノラワークスジャパンを取材しました。同社の特徴は、ビニールハウス内の季節を真逆にすることで冬にマンゴーを収穫していることにあります。冬の間に貯えた雪を使って、夏のビニールハウス内を冬の環境にする仕組みや、冬に夏の環境を作り出すために使われる温泉の井戸を視察しました。中川裕之社長は、当初は北海道でマンゴーを栽培することに理解を得られず苦労しながらも、3年ほど前から出荷できるようになった経緯を説明しました。記者たちは極寒の地で自然環境と再生可能エネルギーを活用してマンゴーを栽培する取組みに驚きの声を上げていました。
10. ばんえい競馬
北海道を農業大国へと築き上げた立役者でもある大型のばんえい馬が、そりを引いて速さを競う世界で唯一の馬そり競馬「ばんえい競馬」を取材しました。馬の資料館では、ばんえい馬が農業に従事していた様子や、戦争に駆り出された歴史、ばんえい競馬の成り立ちについて取材しました。帯広競馬場では、模擬レースの様子を取材し、馬と一緒に走って応援するばんえい競馬ならではの臨場感を味わいました。
11. リバティヒル広瀬牧場
最後に、生乳の生産のみならず、新鮮な牛乳でアイスクリームの製造・販売も行うリバティヒル広瀬牧場を訪れました。4代目経営者の廣瀬文彦さんから、牧場に来た子どもと接するうちに食育の場が必要であると感じたことや、TPP協定交渉の大筋合意を受けて農家自らが加工販売にも携わる必要性を感じていることについて聞きました。記者からは、「酪農家としてどこまで自由に牛乳を加工し販売できるのか」、「TPPが大筋合意されたことはいいことか」、「冬が厳しいことの利点は何か」といった質問が挙がりました。また記者は、見学者用の部屋や搾乳している牛舎で、それぞれ撮影やインタビューを行いました。