2026.01.23 報告

報告:岩手県プレスツアー

OVERVIEW実施概要

実施日
2025年9月18日(木)〜19日(金)
訪問地
岩手県
参加者
6名
テーマ
多様な担い手が未来へ紡ぐ - 岩手の伝統継承の現場を訪ねて

裂き織、刺し子、ホームスパン、南部鉄器等の岩手県に根付く伝統工芸に焦点を当て、人口減少・少子高齢化が進むなかでの後継者育成や、テクノロジーを活用した郷土芸能の継承、女性や障害のある人々の活躍などをめぐる取組を取材するプレスツアーを実施しました。

プレスツアーには、フランス、ベトナム、韓国、台湾の4か国/地域のメディア5社から、計6名の記者が参加しました。

※本ツアーは岩手県が主催し、フォーリン・プレスセンターが企画・運営しました。
※取材先の詳細については、こちらのプレスツアー案内をご覧ください。



【1日目】

<大槌刺し子>

今回のプレスツアーの最初に、記者たちは岩手県沿岸部の大槌町を訪れ、東日本大震災で被災した女性たちがボランティア団体の支援を受けて立ち上げた「大槌刺し子」を訪れました。

大槌刺し子を運営する特定非営利活動法人テラ・ルネッサンスの佐々木加奈子氏から、団体の設立経緯やファッションブランドとのコラボレーションなどの活動について説明を聞いた後、15年間活動に参加している女性を含む職人たちが、布地やスニーカーに刺し子の刺繍を施す作業風景を視察しました。

記者たちは、刺し子職人として活動する女性たちに対し、参加したきっかけや、刺し子をするなかで感じること、震災直後の心境、震災発生時から現在までの町の変化に対する思い、今後の目標などについて質問しました。職人の一人、石井ルイ子氏は「震災後、絶望に苛まれる中で、刺し子の活動を通じて仲間との関わりを持つことで希望が見いだせた」と当時の心境を語りました。

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遠野伝承園 御蚕神(オシラ)堂>

続いて内陸の遠野市に移動し、遠野の人々の昔ながらの生活を伝える遠野伝承園を訪れました。支配人の齊藤和也氏の案内を受けながら、約250年前に建築され、その後同園に移築された茅葺き屋根の曲り家や、東北地方で守り継がれる民間信仰「オシラサマ」の木像が約1,000体祀られている御蚕神(オシラ)堂を視察しました。

記者は、民間信仰を今後どのように継承していくべきか、民間信仰を観光や教育とどのように結びつけていく考えがあるか、といった質問をしました。また、オシラサマの像に各々の願い事を書き込んだ様々な色の布を着せる体験をしました。

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株式会社岩鋳

続いて記者たちは、岩手県を代表する伝統的工芸品である南部鉄器を製造する、盛岡市の株式会社岩鋳を訪れました。初めに同社営業部長の高橋潔充氏から、同社の概要や製造する南部鉄器の特徴について説明を受けました。

その後、工房に移動し、職人たちによる型押しや鋳込み等の南部鉄器製造の一連の工程を、同社のベテラン職人で、伝統工芸士である八重樫亮氏による説明を受けながら間近で視察しました。

同社では効率的な職人育成システムが整っており、若手職人が多く育っています。そのうちの小川勇唯人氏と袋畑麻衣氏にも話を聞きました。記者たちは若手職人に対して、仕事をす
る中での大変なことや楽しいと思うこと、これからの目標などについて質問しました。若手職人の小川氏は、同社で働いていた伝統工芸士の自身の祖父のような職人になりたいとの目標を語りました。

また、記者から、伝統工芸士である八重樫氏に対し、なぜ職人一筋で30年間も働くことができたのか、といった質問が挙がりました。それに対し八重樫氏は、仕事に楽しみを見出すことができたので、自ずと続けることができた、と語りました。

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【2日目】

株式会社みちのくあかね会

盛岡市の株式会社みちのくあかね会は、戦後に未亡人となった女性たちの経済的自立を目的に設立されました。設立以来、現在まで女性だけで運営を続け、岩手県に根付く伝統工芸であるホームスパン(羊毛から紡いだ毛糸の手織物)を作っています。また近年では柔軟な働き方ができる制度を導入することによって、組織の体制維持を図っています。

取材では同社の若手社員である諏訪彩佳氏から、同社の歴史や製品の特徴などについて概要を聞きました。その後、同社で30年ほど働いているベテラン社員の谷藤敬子氏から、同社の歴史についての詳細を聞きました。

続いて、ほぼすべてが手作業で行われる同社のホームスパンの製作工程を視察し、長く愛用される高品質な製品が作られる現場を目にしました。

記者たちからは、ホームスパンの制作にあたっての難しさや、同社で働くようになったきっかけ、ホームスパンの魅力や今後の展望について質問が挙がりました。諏訪氏は、職人たちによる絶妙な力加減を生かして紡ぎだされる、軽く耐久性の高いホームスパンが自慢だと述べ、海外展開も視野に入れていきたいとの展望を語りました。

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株式会社幸呼来Japan

盛岡市の株式会社幸呼来Japanは、古い布を裂いて横糸として再利用し、新たな生地を織り出す、岩手県に伝わる伝統工芸「裂き織」を制作する会社です。同社は、障害や病気で一般就労が難しい人が働くための知識やスキル習得を支援する「就労継続支援B型事業所」として、障害がある利用者が、障害がない人とともに働いています。そこで生み出される高品質な製品は様々なブランド等から高く評価され、それらのブランドとのコラボレーション商品も製作しています。

代表取締役の石頭悦氏から同社の立ち上げの経緯について説明を聞いた後、障害のある利用者が裂き織を手作業で一つ一つ作り出す現場を、事業所長兼ディレクターの村山遼太氏の案内を受けながら視察しました。

記者からは、福祉の現場に伝統工芸を導入するにあたっての課題や、古くは生活の知恵であった「裂き織」が今やファッション性のある工芸品として評価されていることへの受け止めなどについて質問が挙がりました。また職人たちにも、日々の仕事のやりがいや難しさについてインタビューし、そのうちの一人である阿部桃弥氏は、難しい工程はあるものの、日々楽しんで製品作りに取り組むことができていると語りました。

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株式会社小彌太

花巻市にある株式会社小彌太は、高齢化により郷土芸能の用具を製作する職人が減少しているという課題に対し、3Dプリンターを活用した用具の製作に挑戦しています。

記者たちは、同社の10代目の継承者にあたる営業部課長の小瀬川雄太氏から、創業以来染物を主事業としてきた同社が郷土芸能事業を始めた経緯やその事業概要について聞きました。さらに、実際に3Dプリンターで郷土芸能の鹿踊(ししおどり)のお面を出力する様子と、郷土芸能の踊り手に欠かせない、ゴム製のわらじを製作する様子を視察しました。

記者たちは、小瀬川氏に対し3Dプリンターを使ったお面の製作にかかる日数や苦労した点、今後の目標などについて質問していました。

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<春日流落合鹿踊(ししおどり) 視察>

続いて記者たちは、株式会社小彌太の製作したゴムわらじを使っている、春日流落合鹿踊保存会による演舞を視察しました。和太鼓を打ち鳴らし勇壮に舞う踊り手たちの姿を、記者たちは熱心に撮影していました。

演舞の後、記者たちは、春日流落合鹿踊保存会の大野五月男氏から、約1,000年前に鹿の供養のために始まったとされる鹿踊の歴史について説明を受けるとともに、踊り手に、株式会社小彌太が製作したゴムわらじを使用した感想についてインタビューを行いました。

記者たちは、踊り手たちに、被っているお面の重さや普段の練習方法について熱心に質問し、強い関心を示していました。また、踊り手からお面を借りて装着し、その重さを体感する記者もいました。

株式会社小彌太の小瀬川氏にもインタビューする記者がおり、小瀬川氏は今後、鹿踊の踊り方を次世代に伝えるため、踊り手が踊っている姿を3Dスキャンすることで、360度から確認し、学習できるようにしたいと、次なる挑戦について語りました。

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◆本プレスツアーに関連する報道の一部をご紹介します(タイトルはFPCJ仮訳)

風傳媒 (台湾)

9月29日付:
大谷翔平的故鄉之旅!旅日新選擇 台灣直航岩手:看見傳統文化與創新的共生
(大谷翔平の故郷への旅!台湾から岩手への直行便が日本の新たな旅の選択肢に。伝統文化と革新の共生を目撃せよ)

Vietnam Television(ベトナム)

10月7日付:
Sắt truyền thống nhật bản vươn tầm thế giới
(日本の伝統的な鉄が世界に広がる)

SBS(韓国)

10月16日付:
고령화에 위기 맞은 일본 전통공예, 최신 기술로 대응
(高齢化の危機に瀕した日本の伝統工芸、最新技術で対応)

France24(フランス) ※スペイン語放送

10月20日付:
Iwate, la reconstrucción silenciosa del norte de Japón
(岩手県、北日本の静かな復興)