実施日 : 2025年01月29日 - 30日
報告:福島イノベーション・コースト構想プレスツアー
投稿日 : 2025年02月25日
東日本大震災発生から14年目を目前に控えるなか、公益財団法人福島イノベーション・コースト構想推進機構が主催し、在日外国メディアを対象としたプレスツアーが実施されました(企画・運営:フォーリン・プレスセンター)。
参加した外国メディアの記者たちは、福島県沿岸部(浜通り地域)を訪れ、福島イノベーション・コースト構想推進機構関係者から事業概要について聞いたほか、「福島イノベーション・コースト構想」のもとで研究開発を行う企業や、福島第一原子力発電所の廃炉に向けた人材育成に力を入れる地元の高専を取材しました。
今回のプレスツアーには、フランス、スイス、カタール、ベトナム、ブラジル、米国/サウジアラビア、日本の8カ国から計9社10名の記者が参加しました。
- 本プレスツアーは(公財)福島イノベーション・コースト構想推進機構が主催し、(公財)フォーリン・プレスセンターが企画・運営しました。
- 取材先の詳細については、こちらのプレスツアー案内をご覧ください。
【1日目:1月29日(水)】
< 公益財団法人福島イノベーション・コースト構想推進機構による概要説明/ロボットテストフィールド(南相馬市) >
記者一行は、福島ロボットテストフィールドを訪れ、公益財団法人福島イノベーション・コースト構想推進機構交流促進部副部長の門脇渉氏から、福島イノベーション・コースト構想の概要や目的など全体的な説明を聞きました。充実した研究環境の整備や、起業支援の体制が進められており、雇用の創出や人材育成に寄与している点についての紹介がありました。
記者たちからは、福島イノベーション・コースト構想における補助金の資金源、海外の関係者によるロボットテストフィールドの利用実績、ロボットテストフィールドにおける研究の中で他では見られないような興味深いものは何か、ロボットテストフィールドの存在は地域の活性化に寄与しているか、といった質問が挙がりました。その後、屋上からロボットテストフィールドの全体を視察しました。
< Zip Infrastructure株式会社(南相馬市) >
記者たちは、世界の都市部で深刻化する渋滞問題の解決を目指すべく自走式ロープウェイ「Zippar」を開発している、Zip Infrastructure株式会社を訪れ、同社COOのレボンキン・マリオ・イアン・カロス・フェリド氏から「Zippar」の概要や特徴、今後の国内・海外での実用化の見通しについて説明を受けました。
工場では、記者たちは開発中の「Zippar」の実機を外観のみならず内部にも立ち入り、熱心に撮影を行っていました。記者たちは、研究開発の地に福島を選んだ理由、住宅街での運用も想定した住民のプライバシーへの配慮に対する考え方、事故等のリスクへの対策について質問しました。
< 會澤高圧コンクリート株式会社(浪江町) >
記者一行は、會澤高圧コンクリート株式会社が浪江町で運営する福島RDMセンターを訪れました。
まず、同社の執行役員の大橋未来氏から福島RDMセンターの設立の目的と活用状況や、脱炭素の推進を掲げる同社が世界で初めて量産化に成功した自己治癒コンクリートBasiliskの概要等について説明を受けました。
次に、記者たちは、コンクリート生産棟に移動し、福島RDMセンターの工場長である東大智氏から説明を受けながらコンクリート製品の製造現場を視察し、熱心に撮影しました。
その後、研究開発棟で同社が活用している3Dコンクリートプリンターを視察したほか、福島RDMセンターの技術主席である劉宏涛氏から、自己治癒コンクリートBasiliskのバクテリアの反応を活用した自己治癒の仕組みの詳細や、開発中の蓄熱・蓄電コンクリートについて解説を受けました。
記者たちは、自己治癒コンクリートが修復できるヒビ割れの大きさ等自己治癒コンクリートについて聞きました。また、北海道に本社を構える同社が福島に研究開発拠点を設置した理由や、海外大学や他国との連携の状況、3Dプリンターにより成型したコンクリートの耐震性等について、多くの質問が挙がりました。
< AstroX株式会社(南相馬市) >
1日目最後の取材先として、記者一行は、気球を用いて成層圏までロケットを運び、そこから空中発射する「ロックーン方式」でのロケット発射技術を開発している、AstroX株式会社を訪問しました。
最初に、同社のBusiness Development Managerである大谷和彦氏から、ロックーン方式の概要や、開発状況について概要説明を受けました。
その後、ロケットのレプリカと姿勢制御装置を視察し、CEOの小田翔武氏にオンラインでのインタビューを行いました。記者は、宇宙ゴミへの対策、企業規模を拡大する上での採用の状況、ロックーン方式を採用した理由、若者の宇宙産業に対する関心度合いなどについて質問しました。
【2日目:1月30日(木)】
< 株式会社菊池製作所 南相馬工場(南相馬市) >
記者一行は、株式会社菊池製作所南相馬工場を訪問しました。菊池製作所は、事業の一環でスタートアップ企業等への支援を行っており、今回のツアーでは同社の支援企業のひとつである株式会社イノフィスを取材しました。イノフィスは、大学発のスタートアップで人工筋肉の技術を応用し、作業者を補助する機器である「マッスルスーツ」を開発・販売しています。
冒頭、菊池製作所の取締役であり、イノフィスの代表取締役社長でもある乙川直隆氏から、株式会社菊池製作所の概要と南相馬工場設立の経緯、菊池製作所とイノフィスの関係性やマッスルスーツの仕組み、活用事例等について説明を受けました。その後記者たちは、マッスルスーツを装着し、その効果を実際に体感しました。
続いて、記者たちは工場長の佐藤誠一氏の案内を受けながら、様々なスタートアップ企業が入居し研究開発・製造等を行っている同工場内で、農業用ドローンや、配膳ロボット、マッスルスーツの耐久試験の様子などを視察しました。
記者たちからは、マッスルスーツの販売台数や、製造業や介護など各分野ごとの売り上げの割合、自衛隊や米軍での具体的な導入事例、海外での導入・活用の状況について質問がありました。
< 株式会社KiMiDoRi(川内村) >
続いて一行は、川内村にある株式会社KiMiDoRiを訪問しました。同社は屋内の完全密閉空間での水耕栽培システムによって、新鮮で洗わずに食べられる葉物野菜を生産しています。
記者たちは、同社の代表取締役兼川内村の副村長の遠藤清輝氏から同社の設立経緯、施設と製品の特徴についての概要説明を受けた後、同社の生産開発部長の兼子まや氏の説明を受けながら窓越しで植物工場の内部を視察しました。
その後、記者たちは工場で栽培された新鮮な生のリーフレタスや、バジルを加工して作られたバジルペーストを試食しました。記者は、同施設で生産するリーフレタスと一般的なレタスの風味の違いについて質問したほか、植物工場での葉物野菜以外の栽培の可否、露地栽培と比較しての生産性の違い、主な出荷先等について質問が挙がりました。
< 福島工業高等専門学校(いわき市) >
今回のプレスツアーの最後の取材先として、いわき市にある福島工業高等専門学校を訪問しました。同校は、原子力災害を経験した福島県に所在する学校として、原子力分野の人材育成に注力しています。その取り組みの一つとして、学生たちが廃炉ロボットの研究開発を行っており、毎年「廃炉創造ロボコン」に参加しています。
記者たちは、冒頭、同校の鈴木茂和教授から原子力関連人材の育成の取組やカリキュラムに関する説明を受けました。続いて、福島廃炉研究会の学生たちから、昨年開催された「廃炉創造ロボコン」のために開発したロボット特徴などの説明を受け、そのデモンストレーションを視察しました。
その後、普段学生たちがロボットの研究開発を行っている研究室を訪れ、今後の進路や廃炉ロボットの開発に挑戦するようになったきっかけなどについて、話を聞きました。
記者たちは、学生たちの開発するロボットの現場での実用化の可能性や、ロボットを開発するにあたってどうやって着想を得たのか、学生たちの廃炉に対する見解、現在福島第一原発で行われている廃炉作業に対する考えなどについて質問しました。
◆本プレスツアーに関連する報道の一部をご紹介します(タイトルはFPCJ仮訳)
Vietnam Television(ベトナム)
3月10日付 「Thiết bị trợ lực giá rẻ dành cho người lao động tại Nhật Bản」
(日本の労働者向けの安価なパワーアシスト装置)
Ouest France(フランス)
2月18日付 「Au Japon, l’innovation pour oublier la catastrophe de Fukushima」
(福島の災害を忘れるためのイノベーション)
レコールテレビ(ブラジル)
2月15日付 「Fukushima: JR mostra como a tecnologia ajudou a recuperar região após acidente nuclear」
(福島発レポート:技術による原発事故後の地域復興の様子を紹介)
Arab News Japan(サウジアラビア)
1月30日付 「Area devastated by Fukushima earthquake re-emerges as tech development center」
(福島地震で被災した地域が、 技術開発拠点として再興)