プレスツアー(報告)

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実施日 : 2024年02月27日 - 28日

報告:福島プレスツアー

投稿日 : 2024年03月26日

東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所の事故から、今年3月で13年を迎えました。本プレスツアーでは、避難指示の解除によって再出発を切った地域を訪れ、雇用創出や地域再建に寄与する企業や、地元の伝統産業を守るために奮闘する住民を取材しました。また、県外から移住した2人の起業家のもとを訪ね、コミュニティづくりや地域産業の活性化に取り組む様子を取材しました。

 

プレスツアーには、フランス、スイス、カタール、米国、シンガポールのメディアから、計6名の記者が参加しました。

 

※本ツアーは環境省が主催し、フォーリン・プレスセンターが企画・運営しました。

※取材先の詳細については、こちらのプレスツアー案内をご覧ください。

 


 

【1日目】

<大堀相馬焼の窯元 陶吉郎窯(浪江町大堀地区)>

プレスツアー一行は、300年以上の歴史を持つ伝統工芸品「大堀相馬焼」の産地であり、20233月に約12年ぶりに避難指示が解除された浪江町大堀地区を訪問。震災前に20軒以上の窯元が活動していたエリアを視察した後、避難指示の解除を受けて大堀地区での制作活動を再開した唯一の窯元、「陶吉郎窯」を取材しました。記者たちは、陶吉郎窯の近藤学さんから 「青ひび」と呼ばれる地模様や「二重焼き」などの大堀相馬焼の特徴や、大堀地区に工房を再建し活動を再開しようと決めた理由について説明を受けたほか、職人がろくろを使って器や急須を制作する様子を撮影しました。

 

記者たちは、伝統の復活と継承に挑む近藤さんの話に熱心に耳を傾け、大堀相馬焼の後継者育成に関する取組や、原発事故に対する受け止めなどについて質問しました。


<中間貯蔵施設>

記者たちは、福島県内の除染作業で出た除去土壌などを、搬入開始30年以内に福島県外で最終処分するまでの間、安全かつ集中的に管理・保管するために整備された「中間貯蔵施設」を訪問しました。環境省の担当者から、中間貯蔵施設工事情報センターにおいて、施設概要やツアーで視察する場所について説明を受けた記者たちは、バスで中間貯蔵施設の構内に移動。大きな不燃物や、可燃物(例:草木)等を取り除いた後の土壌を貯蔵する「土壌貯蔵施設」を視察したほか、敷地内にある特別養護老人ホーム「サンライトおおくま」に併設された仮設展望台から約2km先の福島第一原子力発電所を望みました。また、除去土壌を道路の盛土として再生利用する実証事業の現場を車中から見学しました。

 

記者からは、施設構内の放射線量のモニタリング方法や、再生利用する除去土壌の放射能濃度を8,000Bq/㎏以下とする根拠などに関する質問がありました。



<haccoba 浪江醸造所(浪江町)/小高駅舎醸造所&パブリックマーケット(南相馬市)>

県外からの移住者が起業を通じて被災地の復興や地域課題の解決に取り組む様子を取材するため、東京から南相馬市に移住した佐藤太亮さんが手掛けるクラフトサケの醸造所「haccoba」を訪問しました。浪江町の醸造所では、佐藤さんから、福島県で酒造りを始めた経緯などについて説明を受けたほか、南相馬産の米を使った醸造の様子を撮影しました。その後、JR小高駅の駅舎を利用した醸造所兼店舗「小高駅舎醸造所&パブリックマーケット」へ移動して醸造設備や交流スペース、地元の特産品を集めた物販エリアを視察し、希望する記者はクラフトサケの試飲を行いました。

 

記者は佐藤さんに、被災地での酒造りを通じて実現したいことや、風評をなくすために必要なこと、起業する際に受けた自治体からの支援などについて質問しました。



【2日目】

 <環境省ブリーフィング>

環境省の担当者から、避難指示の解除に向けた除染、除去土壌の再生利用、県外最終処分に向けた取組などについて説明を受けました。

 

記者からは、20453月までに完了することになっている除去土壌等の県外最終処分が実現する見通しや、計画の合理性などについての質問がありました。



<浅野撚糸株式会社 フタバスーパーゼロミル(双葉町)>

2022年8月に帰還困難区域の一部区域(特定復興再生拠点区域)で避難指示が解除された双葉町を訪れ、雇用や住民の交流を生み出す場となることが期待されている撚糸工場「フタバスーパーゼロミル」を取材しました。工場を運営する浅野撚糸株式会社の浅野雅巳社長から、事業概要や、岐阜県に本社を置く同社が双葉町に進出した理由などについて説明を受けた後、水に溶ける糸を使った吸水性に優れた撚糸「スーパーゼロ」の生産ラインを視察しました。また、福島県いわき市から双葉町に引っ越し、フタバスーパーゼロミルで働く2名の若手従業員から話を聞きました。

 

記者は、浅野社長に「スーパーゼロ」の海外輸出戦略や、双葉町の復興に対する思いなどについて質問したほか、若手従業員に入社を決意した理由や、原発の近くで暮らし、働くことへの受け止めなどについて尋ねました。



<アンスリウム農園 smile farm(川俣町)>

震災後、復興を後押しする新たな産業としてアンスリウムの生産を始め、今では年間30万本以上を出荷する国内最大のアンスリウムの産地となっている川俣町を訪れ、埼玉から移住した谷口豪樹さんが同町山木屋地区で運営するアンスリウム農園「smile farm」を取材しました。記者は谷口さんから、川俣町でアンスリウム栽培を始めた経緯や、土の代わりに古着由来のポリエステルを使う栽培方法などについて説明を受けた後、農園内を視察し、色とりどりの花を咲かせるアンスリウムを熱心に撮影しました。また、谷口さんが観光農園として運営するイチゴ農園も視察し、イチゴの試食を行いました。

 

記者は、県外から移住した谷口さんが感じる川俣町の魅力や、smile farmの今後の展望、谷口さんが経験した原発事故の風評被害などについて質問しました。

 



◆本プレスツアーに関連する報道の一部をご紹介します(タイトルはFPCJ仮訳)


Swiss Public Radio and TV(スイス)

2024年3月11日「In Fukushima wird noch immer aufgeräumt」

(福島では、まだ除染が続いている)

 

La Croix(フランス)

2024年3月11日「À Fukushima, le défi de la décontamination des terres irradiées」

(放射能に汚染された土地の除染という、福島が直面する困難な課題)

 

聯合早報(シンガポール)

2024年3月11日「福核灾13 外来力量新生

(福島原発事故から13年、外部の力がイノベーションを起こす)


Radio France(フランス)

2024年3月11日「Fukushima, quel retour à la normale ?」

(福島はいつ正常に戻るのか?)

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