東京五輪2020組織委員会会長に橋本聖子氏が就任
投稿日 : 2021年03月01日
注目すべき海外メディアの日本報道
(2月18日~19日)
東京五輪2020組織委員会会長に橋本聖子氏が就任
2月18日、東京五輪・パラリンピック大会組織委員会は、会長を辞任した森喜朗氏の後任として、五輪相を務めてきた橋本聖子氏を新会長に任命した。日本の男女平等問題にまで及んだ今回の騒動の結果として、開催まで5カ月に迫る中、課題も山積する厳しい状況下での初の女性会長の就任は、英米主要メディアの注目を集めた。
【英国】
18日付The Times紙は、「元スピードスケート選手 橋本聖子氏、東京五輪を主導」(Richard Lloyd Parry東京支局長)で、東京2020組織委員会は、性差別スキャンダルからの信頼回復と、オリンピックを中止したがっている日本国民の支持を得るための苦肉の策で、新しい会長に女性政治家で元アスリートの橋本氏を任命したと伝えた。橋本氏は日本でも数少ない年長の女性国会議員の一人で、東京オリンピック・パラリンピック担当、女性活躍担当大臣を務めているが、大臣職を辞することになる、と報じている。
同日付Financial Times紙も、「性差別騒動の後、女性オリンピック選手が東京五輪の舵を取る」(Robin Harding東京支局長)を掲載。女性オリンピック選手の選任には冷めていく国民の熱意を再燃させる意図がある一方、現役閣僚の登用は菅首相の開催に向けた決意を示唆しているとしつつ、橋本氏は危機的な東京2020と観客の入場を許可するのか、切迫した重要な決断を引き継ぐと報じた。また、橋本氏が退く五輪担当相には丸川珠代氏が就任し、東京大会は女性主導で進んでいくと伝えると共に、橋本氏の就任挨拶から「男女平等問題については早急に枠組みを構築し、月末までに結果を示したい」との発言を引用しつつも、橋本氏は党内保守派でかつての森氏率いる派閥のメンバーである、と結んでいる。
同日付The Guardian紙は、「東京五輪新会長、コロナを巡る国民の大きな不安についての認識を示す」(Justin McCurry東京特派員)で、橋本新会長はコロナ対応を最重要課題だと述べ、安心・安全な大会の開催を誓ったと報じると共に、就任を歓迎する大坂なおみ選手やバッハIOC会長のコメントを紹介。一方で、2014年ソチ大会における同氏のセクハラ疑惑報道に言及し、加えて、国民の80%が大会の延期または中止を望み、島根県知事が聖火リレーの中止検討を表明、日本企業の約2/3が現在の形での開催に反対するなど、国内の五輪開催反対の感情が高まっている様子も伝えている。
【米国】
The Washington Post紙は18日付「性差別発言の前会長退任後、女性オリンピック選手が東京大会の会長に就任」(Simon Denyer東京支局長)と題する記事で、橋本新会長が選出されるまでの経緯について、選考委員会が設置されて5つの基準が提示された後、即座に橋本氏が最有力候補に浮上したが、当初は後ろ向きの姿勢であったとしつつ、派閥が支配する与党内では森前会長と同じ派閥に属しており、橋本氏の選出は事を荒立てるようなものではないと説明。また、同氏は森発言騒動下で一線を画するための「駒」として使われ、意に沿わず大臣辞任に追い込まれたのであり、「これが本当に女性活躍なのか」とする、日本のスポーツライターのSNS投稿も紹介しつつ、報じた。
The New York Times紙は、同日付で「会長の性差別発言の後、東京五輪が象徴的な方向転換」(Motoko Ritch東京支局長)を掲載。橋本氏の選出は組織委員会における明白な世代とジェンダーの交代であるとしつつ、同氏がこれまで育休の取得や性暴力被害者の支援、選択的夫婦別姓の提唱などに携わるなどの実績を紹介し、同氏を男性中心社会における「開拓者」だとして、橋本氏の就任を評価。最後に、日本では常に中高年男性が重要な決定権を持つ役割に就いているが、橋本氏の就任が男女平等に向けた一歩になる、との日本の女性の声を紹介している。
The Wall Street Journal紙は、19日付「東京五輪、開催わずか数カ月前に新会長を任命」(Peter Landers東京支局長)で、ほとんど全ての大企業の経営責任者が男性である日本において、橋本氏は主要組織のトップに立つ数少ない女性であるが、7年前の冬季五輪での同氏の男性選手へのセクハラ問題により、同氏の会長任命は議論を呼んでいると報じる一方で、「組織委員会の女性比率を40%にするために迅速に行動する」「セクハラ行為を反省し自らの振舞を正したことを、組織委員会の主導力を通して示したい」とする橋本氏の姿勢を伝えている。
新会長就任については、18日付BBC電子版「東京2020 東京オリンピック・パラリンピック担当大臣 橋本聖子氏を大会組織員会会長に任命」、 19日付CNN電子版「女性差別への反発を受け、7度オリンピックに出場した橋本聖子氏が東京2020組織委員会会長に就任」(Emiko Jozuka記者他)でも報じられた。