東京オリンピック開催一年前 / 日本のサステナビリティへの取り組み
投稿日 : 2020年08月03日
注目すべき海外メディアの日本報道
(7月23日~7月25日)
東京オリンピック開催一年前 / 日本のサステナビリティへの取り組み
新型コロナウイルスの世界的感染拡大により延期となり、2021年7月23日に開会が予定されている東京オリンピック開催の可能性について、日本の世論調査の結果に触れつつ、各国主要メディアが報じている。
24日付The Economist紙(英国)「来年オリンピックが開催できると思っている者は日本にはほとんどいない」、及びThe Times紙(英国)「日本人は東京オリンピックが必ず開催されると信じていない」(Richard Lloyd Parry東京支局長)は、共同通信社が今年7月19日に実施した最新の国内世論調査で、来年開催を望む:24%、2年延期求む:36%、撤退すべき:5倍増の34%となった、と報じた。この結果を踏まえ、The Times紙は、日本はウイルスの抑え込みに成功したが、安全で病気の心配がない大会の唯一の保証である安全なワクチンが来年の夏までに全世界に提供できる見込みなどとてもない、と伝えている。
23日付朝鮮日報(韓国)「東京五輪1年延期したものの…「今の状況が続けば来年も難しい」(イ・テドン東京特派員)では、IOC・日本政府・東京都は何とかして来年の五輪を行うというのが公式の立場であり、IOCバッハ会長は「観客縮小案」に言及し、IOCや組織委員会は「無観衆五輪」は計画外とするが、森喜朗組織委員会会長はTVインタビューで、「今のような状態が続いたらできない」と述べたと報じた。他方、25日付「池江璃花子『一年後の今日、希望の炎が輝いていてほしい』」(イ・ハウォン東京特派員)は、日本社会に希望を与える「池江シンドローム」を巻き起こしてきた白血病と闘う競泳会のスターは、開催一年前イベントで、新型コロナ収束と東京五輪開催を望みながら「逆境から這い上がるには希望の力が必要」とはっきりと言ったと報じた。
その他、東亜日報(韓国)、CNN電子版(米国)、BBC電子版(英国)も報じている。
Financial Times紙(英国)は23日付で「日本とサステナビリティ」と題する特集記事を掲載、リサイクルや水素自動車など日本の取組の成果と共に、石炭による火力発電など解決すべき課題について報じている。また、CNN電子版(米国)は、早くから他の地域に先駆けて、ごみゼロを目指すまちとして取り組んできた徳島県上勝町について紹介している。
●FT特集「日本とサステナビリティ」
「東京オリンピックはサステナビリティで金メダルを勝ち取るか」(Leo Lewis東京特派員)は、東京2020大会は、アスリートたちに授与される5,000のメダルを生産するのに十分な金属をハイテクゴミから回収することに初めて成功。新国立競技場は省エネ技術で建設され、再生可能エネルギーを動力源とし、輸送には水素燃料自動車が使用される見込みだ。更に大会期間中には、観客に使い捨てプラスチック容器の消費削減が奨励されるなど、同大会はサステナビリティによく取り組んでいるものの、専門家は課題もあると指摘していると報じている。
「日本はプラスチック問題に直面している」(Kana Inagaki東京特派員)は、コロナウイルス感染防止のための使い捨て容器の急増が世界的な課題となる中、年間約300億枚のレジ袋を使用している日本において7月1日からの有料化はわずかに象徴的ではあるが、国民の意識を高めるための最初の目に見えるステップであると共に、政府は全てのプラスチック包装が5年後までに確実に再利用、リサイクル、または堆肥化することを明言。プラスチック廃棄物の処分25%削減を目指し、2030年までに家庭ゴミおよび産業廃棄物のリサイクル率60%を目指していると報じている。
「石炭は日本のエネルギーミックスの支配力を維持する」(Robin Harding東京支局長)は、昨年12月マドリッドでのCOP25では、日本の石炭火力発電への依存が大きな批判を浴びたが、小泉大臣の努力により、開発途上国の石炭火力発電所に対し今後新たな融資をしない、国内の旧型で非効率的な石炭火力発電所を段階的に廃止するなどの方針が示されたものの、電力供給の32%を石炭火力発電が占めている日本が石炭から撤退することは容易ではないと、伝えている。
上記記事に加え、「小泉進次郎:有害物質についてのジレンマを抱える、人気上昇の星」(Robin Harding東京支局長)、「国連の持続可能な開発目標が日本の基準を設定」(Kana Inagaki東京特派員)、「コロナウイルスが日本のオフィスに変化を促す」(Leo Lewis東京特派員)も掲載されている。
●CNN電子版(米国)「廃棄物のない日本の町」は、国全体のリサイクル率は約20%であるのに対し、徳島県上勝町は80%を超えており、2020年までに完全に廃棄物を出さないことを目標にゼロ・ウェイスト宣言を発表。45にも及ぶリサイクルの分別を徹底したことが上勝町の成功のカギであると伝えつつ、「最初は面倒だったが、物を大事にする気持ちが生まれた」など、町民の意識の変化についても触れている。