日露首脳会談、北方領土での共同協力事業で合意
投稿日 : 2016年12月22日
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(12月15日~17日)
2016年12月22日
日露首脳会談、北方領土での共同協力事業で合意
(写真:ロイター/アフロ)
安倍首相とロシアのプーチン大統領は、12月15日に首相の地元・山口県長門市の温泉旅館「大谷山荘」で、16日は首相官邸で会談し、終了後に共同記者会見を行った。プーチン大統領の訪日は、2009年5月以来約7年半ぶりで、両首脳の会談は16回目。両首脳は共同記者会見で、日露間の平和条約締結に向け、北方四島での「共同経済活動」に関する協議を開始することで合意したと発表。「特別な制度」の下で実施し、日露双方の北方領土への主権の主張に影響しないとした。
さらに、日露両政府や民間企業は合計82件の成果文書を取り交わし、「8項目の経済協力プラン」に沿って、医療や先端技術、エネルギーなど幅広い分野で民間同士の提携などを進めると合意。日本側の経済協力の総額は3000億円となる見込み。
15日付AP通信(米国)は山口真理記者/エミリー・ワン記者が長門発で「プーチン大統領と安倍首相、日露領土問題について会談」を掲載。両首脳は3時間に及んだ会談の大半を、領土問題および平和条約の締結にむけた議論に費やしたと安倍首相が述べたが、大きな進展の可能性は低いとの見方を伝えた。16日付では山口真理記者が「日本とロシアは経済協力で合意、領土問題は行き詰まり」を掲載し、日露両政府が北方四島における共同経済活動で合意したことを伝え、平和条約締結に向けた領土問題の解決には程遠い小さな一歩であると述べるとしつつ、「両国民の間には戦争をめぐり異なる思いもあるが、ウィンウィンの関係というからには両方の国民にとって良い結果になるという希望はある」というNHKのインタビューを受けた元島民の声も紹介した。15日付ロイター通信(米国)の竹中清記者/Katya Colukova記者が「安倍首相とプーチン大統領、安全保障交渉の再開に合意、シリアについて協議」を掲載。二国間会談終了後に野上官房副長官が「両首脳はシリアについても協議し、安倍首相はシリアでの人道状況の悪化に対する懸念をプーチン大統領に伝え、同大統領はシリア問題解決のため他国と協力することを提案した」と述べたと伝えた。15日付ウォール・ストリート・ジャーナル紙(米国)はAlastair Gale記者/大辺暢記者が長門発で「プーチン大統領、領土問題をめぐる日本の期待を牽制」を掲載。プーチン大統領は日本との領土問題に関する協議でほとんど譲歩しなかったとし、大統領の目標は貧しいロシア極東地域への経済支援を日本から獲得することであるとのアナリストの見方を伝えた。16日付ワシントン・ポスト紙(米国)はアナ・ファイフィールド東京支局長が「日露両政府が10億ドル規模の投資ファンド設立で合意」を掲載。日露共同でエネルギーとインフラ整備計画を今後5年間行うことを両国首脳が発表したと伝えた。日露関係は日本の重要な同盟国である米国とロシアの関係悪化により制約を受けていたが、プーチン大統領を支持するトランプ次期米大統領の登場で、日露関係の改善も期待されていると報じた。17-18日付フィナンシャル・タイムズ紙アジア版(英国)のロビン・ハーディング東京支局長/Kathrin Hilleモスクワ支局長は「日露がクリル諸島(ママ)をめぐる交渉に合意する中、安倍首相は反発を受ける危険」を掲載。北方四島での共同経済活動のための「特別な制度」に関する交渉開始が合意された日露首脳会談は、プーチン大統領にとっては成果があり、安倍首相を落胆させるものだったと報じた。またプーチン大統領が「70年以上にわたり我々は領土問題を議論している。一夜で解決できると考えるのは認識が甘いだろう」と述べたと伝えた。
17日付中央日報日本語版(韓国)は、「安倍首相、ロシアに3000億円経済協力も領土問題進展なし」を掲載。安倍首相は領土問題には言及できなかったが、プーチン大統領は3000億円にのぼる経済協力の約束を引き出すなど実益を握ったと報じた。また中断している外交・防衛(2プラス2)会談など安保対話の再開についても協議したと伝えた。19日付新華通信社日本語版(中国)は沈紅輝/厳蕾記者の「日露首脳が再び会合、領土問題は依然難解」(編集:呉寒氷)を掲載。会談で双方は「北方四島における共同経済活動に関する協力に合意したが、係争中の島嶼の帰属問題では依然として進展は見られなかった」と報じた。
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