東日本大震災から5年②
投稿日 : 2016年03月16日
注目すべき海外メディアの日本報道
(3月11日~3月13日)
2016年3月16日
東日本大震災から5年②
未曽有の災害と言われた東日本大震災の発生から5年が経過した3月11日、日本各地で哀悼の意が表された。同日午後に東京の国立劇場で開かれた政府主催の「東日本大震災五周年追悼式」を各国のメディアが速報する一方で、停滞する復興や被災者・遺族の苦しみや不安を伝える報道も目立った。
(写真:AP/アフロ)
米国では、AP通信は山口真理記者/エミリー・ワン記者の「津波から5年を迎える日本の涙と祈り」を陸前高田市発で掲載。天皇陛下が式典で述べられたお言葉を紹介するとともに、陸前高田市の寺では震災の死者・行方不明者1,700人の追弔法要が行われたことを伝え、「復興しつつあると思うが心に残った傷は永遠に癒えないかもしれない」という住職の言葉を紹介した。ロイター通信のエレン・リーズ記者/ヒュン・オ記者による「心が粉々に砕けて―日本の津波から5年」では、被害が大きかった沿岸部では津波によってえぐり取られた建物の前や海岸で遺族が花や線香をたむけ祈る様子とともに、「何をしたらよいのかわからず、またわかろうとすらしていない人の数が増えているような気がする。皆心が粉々に砕けてしまった」との陸前高田市の元漁師の言葉を取り上げた。USA TODAY紙電子版はカーク‧スピッツァー記者の「追悼式典と黙祷が知らせる5年目の津波」を掲載し、「日本は今後も世界に向け東日本大震災の教訓と被災地の復興の様子を伝え続ける」との安倍首相の式辞を紹介し、またこの震災までは日本ではエネルギーの30%を原子力に頼っていたが、この震災を機に原子力発電所が停止し、日本のエネルギー政策が転換をせまられたと報じた。ワシントン・ポスト紙電子版はアナ・フィフィールド東京支局長が「壊滅的な津波から5年、日本は黙とうを捧げる」を掲載。日本のメディアの報道は涙を誘うものであったとし、NHKが放送した大槌市にある「風の電話」や、津波被害地域に暮らす子供たちを取材した朝日新聞の記事など国内メディアも震災関連を特集したと報じた。ニューヨーク・タイムズ紙はジョナサン・ソーブル記者による「福島は汚染水と戦い続ける」の中で、福島第一原子力発電所の完全な汚染には政府によると最低40年を要する事や、同原発で働く除染作業員の中には解雇や配置転換を恐れ、被ばく線量を少なく報告していた作業員もいたと報じた。
英国では、ガーディアン紙電子版のジャスティン・マッカリー記者が「津波と原発事故から5年目を迎える日本」を掲載。追悼式典や福島で祈りをささげる被災者などの様子を伝えるとともに、福島第一原発事故により、東京で生活する避難者らの窮状が忘れられる不安を述べた式典参加者の声を紹介した。12-13日付フィナンシャル・タイムズ紙のロビン・ハーディング東京支局長/稲垣佳奈記者が「福島の生存者らは荒廃した生活に順応する」を掲載。原発事故当時、原発付近に住んでおり現在は県外に暮らす避難民らを取材、いまだに補償を受け取っておらず、受け取ってもきっと満たされないであろうと、自治体や政府の責任や賠償に不満を述べつつも、新しい場所で新しい事業を営む人々を紹介した。
そのほか、13日付新華通信社日本語電子版(中国)の謝絶記者が「東日本大震災から5周年、進まぬ振興」との見出しで、被災3県では公営賃貸住宅の建設の遅れなどにより1月末時点でまだ約5万9千人がプレハブ仮設住宅に住んでいると報じた。
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外務省「世界が報じた日本(海外主要メディアの日本関連報道)」