台湾の企業がシャープ買収に向けてリード/日銀がマイナス金利を導入
投稿日 : 2016年02月15日
注目すべき海外メディアの日本報道
(1月29日~2月15日)
2016年2月15日
■ 台湾の企業がシャープ買収に向けてリード
2月初旬、日本の大手電機機器メーカー・シャープは台湾の鴻海精密工業(フォックスコン)の傘下に入る交渉が進んでいることを明らかにした。シャープはこの数年にわたって経営不振が続いていることから、今後の本格的な再建に向けての支援を日本の政府系ファンドの産業革新機構とフォックスコンが名乗りを上げていた。産業革新機構が買収する方向で話が進んでいると思われていたが、シャープの高橋興三社長とフォックスコンの郭台銘会長の会談が大阪本社で行われ、2月末に両社が契約を締結する模様であるとした。
この日本の大手企業の買収に、各国メディアが注目している。ウォール・ストリートジャーナル紙電子版(米国)は、望月崇、エリック・ファナー両記者が「フォックスコン、55億ドルでシャープを買収へ」を4日付で掲載。「シャープは関連会社の堺ディスプレイプロダクトを通じ、すでにフォックスコンと信頼関係を構築している」(高橋社長)、「フォックスコンはシャープ社員のリストラは考えていない」(郭会長)など、両社のトップのコメントを引用しながら、今回の買収のインパクトについて伝えた。フィナンシャル・タイムズ紙電子版(英国)は4日付で稲垣加奈記者が「鴻海がシャープの買収レースで優位に」を掲載し、この買収が実現すれば、1999年にフランスの自動車メーカー、ルノーが日産株の37パーセントを54億ドルで購入して以来、最大規模の買収になるといったインパクトを伝えた。ニューヨーク・タイムズ紙電子版(米国)は、ジョナサン・ソーブル記者らが4日付で「産業の移行で、シャープが買収先として海外の企業を視野に」を掲載。シャープがこの5年ほど、安さで勝負する韓国や中国の競合に押されて経営不振にあったこと、これまで海外企業による日本企業の買収は、経営陣や政府の反対により実現しなかったが、今回の買収は日本企業にとって重要な試みとなるだろうと伝えた。ロイター通信(米国)は山﨑牧子記者が「フォックスコンがシャープ買収でほぼ合意と発表」を5日付で掲載。フォックスコンは、シャープを約6,590億円という買収額を提示したとし、両社の交渉はほぼ同意に向かっていると伝えるとともに、高額の買収はフォックスコンの経営の重荷にもなり得るという有識者のコメントも紹介した。
■ 日銀がマイナス金利を導入
日本銀行は金融緩和政策の一環として、1月末にマイナス金利を導入すると発表した。これを避けるために、民間銀行が日銀ではなく企業や個人への融資を増やすようになることで、日本経済の活性化をねらっていくものだ。
日本経済界の新たな動きについて、各国メディアも関心を寄せている。ウォール・ストリートジャーナル紙電子版(米国)は1月29日付で、中道敬記者らが「日銀、マイナス金利を導入」を掲載。この予期せぬ動きは、日本をデフレへと傾かせる恐れのある世界的な逆風と戦うという日銀の決意の表れであると伝えた。フィナンシャル・タイムズ紙電子版は、3日付で日本銀行の黒田東彦総裁の記者会見の写真とともに、ロビン・ハーディング東京支局長による「黒田総裁、“日本の金融緩和に限界なし”」を掲載。黒田総裁が記者会見において、「金融緩和の余地はまだあり、インフレ率2パーセントの目標を諦めず、新たな手法を生み出していく」と述べたことなどを報じた。
マイナス金利導入後に円相場が急騰したことを受けて、朝鮮日報日本語電子版(韓国)は2月15日付で「日銀・黒田総裁に次の一手はあるか」を掲載。黒田総裁はマイナス金利の“実験”は日本の市場に混乱を招いたが、ヨーロッパでは成功していることから悲観していないこと、日銀は景気回復に向けて、マイナス金利よりさらに強力な“バズーカ砲”を放つ可能性が高いと報じた。
写真:Natsuki Sakai/アフロ
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