違法献金疑惑をめぐり、甘利経済再生担当大臣が辞任
投稿日 : 2016年02月04日
注目すべき海外メディアの日本報道
(1月28日~1月29日)
2016年2月3日
違法献金疑惑をめぐり、甘利経済再生担当大臣が辞任
甘利明経済再生担当大臣は1月28日午後に内閣府で記者会見し、週刊誌に報じられた金銭授受疑惑をめぐり地元事務所の対応について責任を取るとして辞任を表明した。甘利氏は、建設会社からの現金は政治献金として適切に処理したとして違法行為を否定した。昨年10月に大筋合意した環太平洋経済連携協定(TPP)の交渉を担い、アベノミクスの中心的存在でもあった甘利氏の辞任に対し、三村明夫日本商工会議所会頭が「経済界にとって損失だ」と述べるなど、今後の経済政策に対して不安視する声があがっている。甘利氏の後任として同日、石原伸晃元自民党幹事長が経済再生担当大臣に就任した。(写真:ロイター/アフロ)
CNN(米国)やBBC(英国)をはじめTPP参加国などの各国メディアは甘利氏辞任を速報で伝えた。1月28日付ニューヨーク・タイムズ紙電子版(米国)の井上真己子記者/上乃久子記者は「甘利経済再生相がスキャンダルの渦中で辞任」との見出しで、第二次安倍内閣発足後に辞任した4人の閣僚の中で最も影響力があった甘利氏の辞任は、デフレ脱却と経済再生を目指すアベノミクスを進める安倍首相にとって「驚きであるとともに屈辱的な後退」であると伝えた。28日付AP通信(米国)は、エレン・カーテンバック記者が「日本の消費物価指数、経済の帝王の辞任により消費支出伸び悩み」を掲載し、安倍政権が推す経済再生にとってさらなる打撃であり、また主導的交渉者の辞任によりTPPの批准のペースダウンは避けられないと報じた。28日付ロイター通信(米国)の舩越みなみ記者は「日本の財務相:甘利氏辞任も経済運営に影響せず』」との見出しで、最新の経済指標は低調だったが景気減速とは思わないとの麻生大臣の見方を伝えた。28日付フィナンシャル・タイムズ紙電子版(英国)のロビン・ハーディング東京支局長が「甘利経済再生相が辞任」との見出しで、安倍首相にとって最も深刻な政治スキャンダルであると報じ、甘利氏なくしては、財務省は景気刺激策よりも財政赤字削減のための増税を推し進めるかもしれないと分析している。29日付ワシントン・ポスト紙(米国)のアナ・ファイフィールド東京支局長は「TPPの鍵である日本の政府高官が辞任する」と題し、甘利氏の辞任は安倍首相への打撃のみならず、国会のTPP承認を遅らせることになるかもしれないと報じた。29日付ル・フィガロ紙(仏)のレジス・アルノー記者は「甘利経済相、現金授受問題で引責辞任」との見出しで、甘利氏の後任は親仏家で甘利氏ほど大物でない石原伸晃氏が決まり、新大臣は財務官僚の方針に従うとみられると報じた。
アジアでは、29日付新華通信社英語電子版(中国)は「スキャンダルに見舞われた大臣辞任後、安倍首相は野党陣営から批判を浴びる」を掲載、甘利大臣の辞任は、重要法案審議を前にした安倍首相と与党自民党にハンマーの一打撃を与えたと述べ、甘利氏および首相の任命責任を問う野党により国会審議が先送りされていると報じた。29日付中央日報日本語電子版(韓国)は「アベノミクス陣頭指揮の甘利氏が退陣」との見出しで、甘利氏の不名誉な退陣で安倍政権は大きな打撃を受けることになったと報じ、 後任として任命した石原伸晃氏を「『元祖極右』石原慎太郎元都知事の息子」と紹介した。2月1日付朝鮮日報日本語電子版(韓国)の金秀恵東京支局長は、「辞任した甘利TPP担当大臣『署名式は出たかった』」の見出しで、辞任に至るまでの経緯を詳細に説明し、週刊誌報道に対する甘利氏の反論は「形勢を逆転できるディテールではなかった」と述べた。また、TPP署名式については「身の処し方を誤り、彼が自ら行けなくしてしまったのだ」と述べた。
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外務省「世界が報じた日本(海外主要メディアの日本関連報道)」