注目すべき海外メディアの日本報道(2013年11月29日)
投稿日 : 2013年11月29日
注目すべき海外メディアの日本報道
(11月15日~11月25日)
2013年11月29日
1. 中国の防空識別圏設定に注目集まる
中国国防省は23日、尖閣諸島(沖縄県石垣市)上空を含む空域に、戦闘機の緊急発進(スクランブル)を行うかどうかの基準となる「防空識別圏(ADIZ)」を設定したと発表した。日本の防空識別圏と重なり、「不測の事態を招きかねない」と日米両政府は強い懸念を表明している。
24日付ウォール・ストリート・ジャーナル紙(米国)電子版は、林由佳記者らによる記事で、中国のADIZが日本や米国による軍事行動を抑制することはないだろうが、中国が域内に入った両国の航空機にどう対応するかが大きな問題だとのアナリストの声を伝え、偶発的なトラブルへの懸念を報道。同日付ワシントン・ポスト紙(米国)は、チコ・ハーラン東アジア総局長による記事で、フィリピンやベトナムなどと係争中の地域がある南シナ海は新たなADIZに含まれていないと報じたうえで、「必要な準備を終えた適切な時期に」追加の空域を設定するとの中国外務省の声を伝えた。25日付ニューヨーク・タイムズ紙(米国)は、マーティン・ファクラー東京支局長による記事で、米国と日本は、中国が軍事行動を行おうとしているのかナショナリストの感情をなだめるための政治的なジェスチャーなのか見極めようとしているようだと指摘。一方で日本が、何らかの対抗措置をとるのかも含めどう中国に対応するのかも不透明だと論じた。同日付フィナンシャル・タイムズ紙(英国)は「太平洋上の無責任なゲーム:中国は係争中の島々を巡り圧力を強めるのをやめるべきだ」で、島々についての主張は何であれ、中国の行動はばかげていると評し、それほど国際法が味方してくれると確信しているのであれば国際仲裁の場に移せばよいと批判。同日付デイリー・テレグラフ紙(英国)は、中国は最近領土に関する主張をより積極的に展開しており、東シナ海の小さな問題が米国やより広い国際社会を巻き込んだ大きな衝突にすぐに発展してしまうのではないかとの恐れがあるとした。
2. COP19で日本が示した新たな削減目標を各国メディアが報道
国連気候変動枠組み条約第19回締約国会議(COP19)が11月11~23日、ポーランドで開かれた。石原伸晃環境相は20日の演説で、2020年までに国内の温室効果ガス排出量を2005年比で3.8%削減する新たな目標を各国に表明。大幅な後退と批判も受けた。
15日付ウォール・ストリート・ジャーナル紙(米国)電子版は、東京発のMari Iwata記者による記事で、ほとんどの原子力発電所が停止しており、高騰する化石燃料の輸入がますます避けがたくなっているなか、日本政府は温室効果ガス削減目標を前政権の誓約から著しく低く設定したと報道。同日付フィナンシャル・タイムズ紙(英国)電子版は、ジョナサン・ソブル東京支局長らによる記事で、20年近く前に京都で会議を主催し、京都議定書など地球温暖化を食い止める取組の重要な起草国だった日本の全くの反転だと評した。同日付ロイター通信電子版は、東京/ワルシャワ発の「日本の新たなCO2削減目標は気候変動会議を失望させた」で中国の交渉官やEUの落胆を伝え、科学者たちが警鐘を鳴らす干ばつや洪水などのリスク上昇にもかかわらず、主要国は一切野心的な目標を提示しようとはせず、日本の決定がさらに悲観の色を加えたと指摘。16日付ニューヨーク・タイムズ紙(米国)は、田淵広子記者らによる東京発の記事で、日本の動きは、多くの専門家が主張する、世界の削減目標を達成するための原子力が果たすべき重大な役割を示していると論じた。
20日付同紙(米国)は、コラム「気候変動に対する不可避であろう答え」で、日本の方針転換は、いかに温室効果ガスの蓄積を遅らせるかとの議論において現実性をチェックする機会になったと論評。化石燃料より早く、安く、原子力なしでも十分に供給できる方法はあるかとの問いに、風力や太陽エネルギー、張力を活用するすべての楽観主義について否定的だとした。21日付ウォール・ストリート・ジャーナル紙(米国)は、エネルギーコストの高い日本で、厳しい排出制限と経済成長の復活は両立しないと指摘。日本政府が4年前に大幅な削減を約束した際にはすでに世界で最もエネルギー効率の高い国の1つであったのであり、不確実な地球温暖化の予測と経済の現実とのバランスをスマートにとっていく国になるだろうと論じた。
<関連リンク>
外務省「世界が報じた日本(海外主要メディアの日本関連報道)」