プレスツアー(報告)

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報告:大分県プレスツアー

投稿日 : 2025年03月07日

大分県の歴史・文化や、人口減少・高齢化に向けた取り組みなどを海外へ広く発信することを目的に、大分県が主催し、在日外国メディアを対象としたプレスツアーが実施されました(企画・運営:フォーリン・プレスセンター)。

 

以下をテーマにしたこのプレスツアーには、中国、シンガポール、ベトナム、カタールなどのメディア6社から計9名の記者が参加しました。

 

-「自然と共生する大分 ~気候変動の影響/自然災害に強いまちづくり~」

-「守るべき大分の歴史 ~少子高齢化時代における伝統や歴史的街並みの継承/空き家活用による地域再生~」

 

  • 本ツアーは大分県が主催し、フォーリン・プレスセンターが企画・運営しました。
  • 取材先の詳細については、こちらのプレスツアー案内をご覧ください。

 


【1日目】


1.中津干潟/NPO法人水辺に遊ぶ会(中津市)

中津干潟は、カブトガニやアオギスをはじめとする希少な生物が数多く生息していますが、近年、周辺の海水温が上昇し、南方系の生物の増加や、ノリやカキの不作など、気候変動の影響と見られる事態が発生しています。

 

記者一行は、地域の市民がつくるNPO法人水辺に遊ぶ会の足利慶聖理事長と山守巧事務局長にインタビューし、中津干潟に起きている変化や、干潟の調査や観察会の開催などの同法人の活動について聞き、干潟を撮影しました。

記者たちからは、「温暖化によって、生息する生物に具体的にどのような影響が出ているか」などの質問が挙がりました。

 

 

  

2.久恒山林株式会社(中津市)

 安価な輸入木材に押されて国内の林業が衰退し、間伐などの山林管理がなされないことで雨による土壌流出や山崩れのリスクが増しており、全国的な課題になっています。こうした課題に対応しようと、久恒山林株式会社では、間伐材を原料にアロマオイルを製造・販売することで新たな収入源を生み出し、林業をより収益性の高い、持続可能な産業にすることを目指しています。

 

記者たちは、久恒山林の社長である久恒雄一郎さんにインタビューし、日本の林業が直面する課題や、アロマオイル製造に踏み出した背景にある「適切に森を手入れしながら中間収入を得ることで林業をよりサステナブルな産業にし、田舎に収入や魅力的な仕事を増やしていきたい」との思いを聞きました。

その後、記者たちは、国の有形文化財に指定されている築100年の社屋でアロマオイルが製造されている様子を視察・撮影しました。

記者からは、「最近、英語圏でも日本の森林浴という考え方への関心が高まっている」とのコメントが聞かれました。

 

 

 

3.北原人形芝居(中津市)

北原人形芝居は、中津市北原地区で鎌倉時代から続く伝統芸能で、大分県の無形民俗文化財に指定されています。少子化による影響で、伝統芸能の継承が全国的な課題となるなか、北原人形芝居保存会では、地域の高齢者が、地元の小学校の人形劇クラブに所属する児童たちに人形芝居を指導し、その未来の担い手を育てています。

 

記者一行は、北原人形芝居保存会の顧問を務める澤村大助さんから北原人形芝居の歴史や保存会の活動について話を聞き、児童らが北原人形芝居を練習する様子を視察・撮影しました。

記者から活動に参加したきっかけについて聞かれた児童からは、「地元の芸能を先輩たちから引き継ぎたいと思った」との声が聞かれました。

 

 

 

2日目】

4.天ヶ瀬温泉(日田市)

1300年の歴史を誇り、玖珠川に沿って旅館や商店が建ち並ぶ風景で知られる天ヶ瀬温泉は、20207月の豪雨災害による玖珠川の氾濫で甚大な被害を受けました。14軒中8軒の旅館に浸水や土砂流入の被害がありましたが、歩行者用の吊り橋に次いで、自動車用の橋が20247月に復旧したことで、今後観光客の回復が期待されています。

 

天ケ瀬温泉を訪れた記者一行は、日田市天瀬振興局の担当者から、豪雨被害と復興計画について聞いたほか、地元の若手有志グループ「天ヶ瀬温泉未来創造プロジェクト」代表の近藤真平さんの案内で、温泉街を視察・撮影しました。

記者からの「天ケ瀬温泉の最大の魅力は?」との質問に、近藤さんは、豪雨災害後に住民自らが考えて決めた天ケ瀬温泉のキャッチコピーが「それでも川が好き」だと語り、天ケ瀬温泉の最大のアピールポイントはやはり川であると答えました。記者たちは、再建された吊り橋や、約2メートルもの浸水被害を受けながらも店舗を再開させた和菓子店などを熱心に撮影していました。また、温泉街の風景をバックに立ちレポをする記者の姿も見られました。

 

 

 

5.山香文庫(杵築市)

「山香文庫」は、移住者である牧野史和さんが、15年間空き家になっていた古民家で始めた民泊施設で、5000冊以上の本に囲まれながら農村の暮らしを体験できるのが特徴です。同じく移住者の鯨井結理さんとともに、地元産の食材を使った食事を提供するなど、ゲストに山香町の暮らしや食の魅力を伝えています。

 

記者たちは、2人にインタビューし、古民家で民泊を始めた経緯や、目指すビジョンについて聞きました。記者たちからは「ここにいるとゆっくりした気持ちになるが、お客さんの感想は?」との質問が挙がりました。記者たちは、あちらこちらに本が置かれ、縁側から暖かな光が差し込む築150年の古民家の様子をさまざまな角度から撮影していました。

 

 

 

6.杵築城下町(杵築市)

杵築城下町は、城を中心に高台に江戸時代から残る武家屋敷が立ち並ぶ、歴史的価値の高いエリアです。近年は、建物の所有者の高齢化などに伴い、老朽化した建物の修復が進まず、景観の保存が困難に直面しています。そこで杵築市は、歴史的建造物の保存や修理に補助金を提供するなど、貴重な街並みを未来に引き継ぐための取り組みを進めています。

 

記者一行は、ボランティアガイドの案内のもと、杵築城下町の街並みや、大分県の有形文化財に指定された武家屋敷「大原邸」を視察・撮影しました。

記者から活動を始めたきっかけについて聞かれたボランティアガイドは、「杵築市の外から移住してきて、地域の歴史を学ぶうちに、この貴重な遺産のすばらしさを多くの人に伝えたいと思うようになってガイドを始めた」と語りました。

 

 

 

7.柳家とその周辺の事業者・地域の人々(杵築市)

杵築城下町にある「柳家」は、明治時代から150年にわたって料亭や食堂として地域の人々に親しまれてきました。経営者夫婦が高齢になり、廃業と建物の解体が検討されたものの、「地域のシンボルである柳家をなくしたくない」と考えた娘の小倉倫子さんが、2020年にこの場所をキッチン付きのシェアスペースとしてリニューアルオープンさせました。現在は、将来起業を目指す人が期間限定でレストランやショップを営業したり、地域の人々が集会のためにレンタルするなど、幅広く活用されています。

 

記者たちは、小倉さんにインタビューし、活動の概要や活動の目的について聞きました。その後、記者たちは、小倉氏さんの活動に触発された92歳の女性が62歳の娘とともに開業した近隣のジェラート店や、柳屋での販売をきっかけに空き家を利用して開業した花屋を取材しました。

 

 

  

 8.中野酒造(杵築市)

杵築城下町に唯一残る酒蔵である中野酒造は、海外への販路を積極的に拡大し、イギリスやブラジルなど15ヵ国に日本酒を輸出しています。また、食品ロス削減を意識し、米を削る割合を減らしても味わいのある日本酒を作るために試行錯誤を続け、米を30%しか削らない「ちえびじん 純米酒」を生み出しました。

 

記者一行は、6代目の経営者である中野淳之さんから、同社の酒造りについて聞くとともに、酒蔵を視察・撮影しました。記者からは「蔵の中で流れている音楽はなにか?」「女性も酒造りに関わっているか」との質問があり、中野さんは「お酒が美味しくなると言われているので、モーツアルトの音楽を流している」「昔は男性だけが男性が飲むための酒を造っていた。でも今の時代は、国内の飲酒人口は減少傾向にあるなか、日本酒を好む女性は増えていて、当社の酒造りに女性も活躍している」と答えました。また、中野さんからは「日本酒がユネスコ無形文化遺産に登録されたことで、海外へのアピールに弾みがつく」との期待の声も聞かれました。「ちえびじん」を試飲した記者たちからは「美味しい」「飲みやすい」との声が上がりました。

 

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