実施日 : 2011年10月13日
報告(プレス・ブリーフィング):中国経済と日本(2011年10月13日)
投稿日 : 2013年08月21日
公益財団法人国際通貨研究所の行天豊雄理事長をお招きし、「中国経済と日本」のテーマでお話しいただきました。参加者は、外国プレス21名を含む計39名でした。
冒頭、行天理事長は、「世界金融危機を契機に、中国は国際的存在感を急上昇させ、米国による単一覇権への挑戦者としての地位を確立した」と述べました。
その上で、国際金融の分野における中国の今後の政策について、「米国による一極支配体制を認めないとの基本的態度ながらも、当面の具体的対応については徹底した現実主義をとるであろう」との見方を示しました。同国の当面の国際金融政策の二本柱としては、①ドル基軸体制の戦略的な活用(中国は同体制がまだ数十年は続くと想定し、輸出競争力維持のために人民元相場のコントロールを継続)、②人民元の国際通貨化(但し、その実現には、経常取引の人民元化や人民元建債券の発行の促進、完全変動相場制の導入、資本取引の自由化を含めた完全交換性の樹立、人民元市場の育成が必要)を挙げました。
また、行天理事長は、「中国全体の発展・改革が今迄通り進めば、10年後の人民元の役割は重要なものになる」と述べた一方、特にリーマンショック後の大規模な投資により、中国では公的部門の復活・拡大など、「改革の逆戻り」とも言うべき新たな課題が生まれたと指摘。政治的・社会的改革への要求が高まっているにも関わらず、自由選挙、司法の独立、思想・表現の自由などへの具体的工程表が全く示されていない現状にも触れた上で、「中国では、大きな可能性と大きなリスクをかかえた高速の自転車運転が続いている」と述べました。
最後に、日中関係について、行天理事長は「日本にとっては、中国は最も重要な経済交流の相手であり、中国がどういう発展をしていくか、人民元が国際通貨としてどう発展していくかはとても重要な問題である」、「アジアで1位、2位の経済力を有する国が友好的な関係を保つことは、アジアにとっても、世界にとっても大切」とした上で、中国がアジアにおいて安心と信頼の念を勝ち取れる国になることに期待を表明しました。
質疑応答では、インドのルピーが国際通貨になる可能性、アメリカ上院での「対中制裁法案」可決、G20での国際金融体制の変換に関する議論、日本政府が円相場に関連してとるべき態度等に話題が及びました。
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