北九州市 北橋健治市長 (2014年11月)
投稿日 : 2014年11月26日
明治日本の産業革命を担った工業都市としての歴史を持ち、環境都市としてのノウハウを世界に発信する都市間国際交流に積極的に取り組んでいる北九州市の北橋健治市長にお話を伺いました。
~環境を絆とするアジアのネットワークを構築~
北橋市長(左)と赤阪FPCJ理事長
‐北九州市の海外発信はどのように行われてきましたか。
北九州市は地理的にアジアにとても近いということに加えて、自治体としては極めて早い段階から公害克服のノウハウを海外の都市に伝える努力をしています。
アジア都市との交流の原点は、北九州国際技術協力協会(KITA)という組織の事業にあります。水や廃棄物など生活インフラをよくしたいという課題に直面するそれぞれの都市にとって、非常に厳しい公害を克服した北九州市は成功モデルになると自負しています。これまでKITAでは150か国から7,453人の研修員を受け入れ、北九州市からも官民の専門家が海外に出かけて行きました。環境を絆とするアジアのネットワークが北九州市の大きな特徴となっていますが、こうして築いたネットワークを通じMICEや観光など様々なビジターをお招きする事業に力を入れています。
北九州市職員による現地での技術指導
(インドネシア スラバヤ市)
‐公害克服の技術と経験を生かして環境分野での国際協力を進められていますね。OECDのミラノ会議というのが6年前に開かれたのですが、テーマは環境問題、持続可能な社会づくりでした。その際政府から助言があり、日本の自治体として初めてパネリストとして登壇させていただきました。
それから、中国のPM2.5による健康被害に対する市民の不安が近年非常に高まっていますが、日本と中国の関係は今微妙な状況にあります。しかし市民の健康不安のことを考えると、北九州の技術を中国のほうに伝達できないかとずっと模索し続けてきました。このたび日中政府の話し合いの結果、北九州市は、上海、天津、武漢、唐山という四つの都市に対して大気汚染の分野で技術協力をすることが決定しました。これを成功させて国境を越えた環境問題にしっかりと貢献したいと考えています。
~地域の宝を世界遺産に~
‐「明治日本の産業革命遺産 九州・山口と関連地域」が来年の世界文化遺産登録に向けてユネスコへ推薦されました。進捗状況についてお聞かせください。
6年ほど前に九州・山口等の産業遺産がユネスコの暫定リストに掲載されたという知らせが届きました。そこから、ぜひ登録に向けて頑張ろうと関係自治体と一緒にやってきたのですが、大きな難問に直面しました。それは稼働中の資産が八幡にあるということです。日本では文化庁が資産保存のために非常に厳格な規制を設けていますので、企業は生産活動が制約されることを懸念していました。そこで私どもは政府に、規制緩和の一環として、資産を保護することについて民間企業の立場とも両立するような新しい保存の在り方を検討してほしいと要望してきました。その後、政府が資産保存の新方式を閣議決定いたしました。こうした経緯を経て明治日本の産業遺産群は日本政府としてユネスコに推薦され、現在、審査が進められており、来年、ユネスコで結論が出されるという状況です。北九州市としましては、地域の宝であるこの資産をしっかりと守っていきたい。そのためには国と関係自治体との連携をさらに密にして、世界遺産登録に向けて全力で取り組みたいと思っています。
~平和と繁栄の礎をアジアで築く~
北九州市職員による現地での技術指導
(カンボジア プノンペン市)
北九州市といえば工業都市、というイメージを抱いていらっしゃる方が多いと思いますが、自然が大変豊かなところです。関門海峡のタコや、合馬(おうま)のたけのこなど美味しい食べ物がたくさんあります。それから合計特殊出生率が政令指定都市で1番高く、24時間体制の小児医療体制が整っていることから、あるNPOが実施した子育て環境のランキング調査ではこちらも3年連続政令指定都市1位をいただいております。
そして何よりも人情あふれる市民の性格も魅力の一つでしょうね。昨年2月に市制50周年記念マラソンを行った際、寒さにもかかわらず4700人ものボランティアの方々が集まってくださいました。加えて約28万人もの市民が沿道からエールを送り、水だけでなくたくさんの食べ物を差し入れてくださっていた。こういう風に皆がひとつの方向に向かって熱く燃え上がる、九州人堅気のいいところがある町です。
これからはエコの技術を世界に輸出するトップランナーとなることが大きな目標になっています。EUのように平和と繁栄の礎をアジアでぜひ近い将来つくれればと思っていますが、そのためにアジアの都市が一番求めているのは生活インフラ、環境の問題です。精一杯汗をかいて信頼関係を強め、問題解決に向けて貢献し、北九州の役割を果たしたい。それが今後の看板都市イメージ、そして新しいシビックプライドになるように頑張っています。
※写真は北九州市よりご提供いただきました。