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過疎自治体で「議会」消滅の危機 | 公益財団法人フォーリン・プレスセンター(FPCJ)

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過疎自治体で「議会」消滅の危機

投稿日 : 2017年07月06日

日本の主要な全国紙5紙(朝日、産経、日経、毎日、読売)から、同じテーマについて論じた社説を選び、その論調を分かりやすく比較しながら紹介します。

 

朝日新聞: 過疎地の自治 向上目指し広く議論を

産経新聞: 消える村議会 これがリアルな人口減だ

日本経済新聞(日経):人口減が問う地方議会の姿

毎日新聞: 小規模町村の住民総会 検討に値する選択肢だ

読売新聞: 村議会廃止論議 住民総会で代替は可能なのか        (50音順)

 

日本の過疎自治体で、議会制度が危機に見舞われている。四国・高知県の山間部に位置する大川村で、過疎化と高齢化から、2年後の村議選への立候補者が不足し、定員を下回ることが懸念されているのだ。そこで大川村は、村議会に代わる「町村総会」の設置の検討を始めた。

 

人口激減時代に入った今、議員のなり手不足は過疎地の町村に共通する課題で、今後、大川村に留まらず、同様の事態が全国に広がる可能性がある。

 

全国紙5紙は、「地方消滅」危機の前兆である大川村の「町村総会」設置問題を社説で順次取りあげた。全体的な論調は、緊急事態といえる「町村総会」の検討について理解は示しながらも、その課題や問題点を挙げ、政府と自治体が一体となり過疎地域の地方議会制度の在り方を検討するように求めた。

 

■ 「町村総会」の実現、ハードル高い

 

読売は、特例法成立について、「丁寧に手順を踏んだ結果、陛下のお気持ちに対する国民の共感が法制化の理由に据えられた」として、終身在位の原則を維持しながら特例として退位を認めたことを「現実的な着地点だった」と評価した。また、退位実現の理由の一つに、皇太子が国事代行などをしっかり務め「十分に実績を重ねられている」ことを敢えて強調した。

 

産経は、「陛下を敬愛する国民が、譲位をかなえてさしあげたいと願い、それが政府や国会を後押しした」として、陛下の〝望まれた譲位〟が実現することを「喜びたい」と歓迎した。また、天皇が退位後「上皇」になられることに関して、古代のような天皇と上皇といった『二重権威』による争いはあり得ないとして、「上皇としての活動を妨げるようなことがあってはならない」と強調した。一方で、特例法整備過程で「首相官邸と宮内庁の間の意思疎通が十分なのか、疑問を感じる場面もあった」と指摘し、今後このようなことが繰り返されないように注文を付けた。

 

朝日(6月13日付)は、地方自治法が「町村に限り、議会を置かずに有権者が議案を直接審議する総会を設けること」を認めていることから、大川村の「町村総会」設置の検討について「十分理解できる」と理解を示した。しかし、2015年の統一地方選挙で2割以上の町村議選が無投票となった現実を踏まえ、「なり手不足は過疎地の共通する課題だ」と指摘し、町村総会の設置検討が「窮余の一策」であるならば「議会を総会に代えても地域の衰退は止まるまい」と論じた。

 

その上で、朝日は「実際問題として、町村総会の実現へのハードルは高い」と主張した。 その理由について、①「町村総会」は有権者の半数以上が一堂に会することを前提としているが、大川村のような広大な山間地では事実上困難である②予算や条例を決める議会の役目を総会が果たせるかどうか疑問がある③町村議員の平均報酬が月額21万円と低く議員のなり手がいない、ことを挙げた。

 

読売(5月31日付)も、「地方の衰退が深刻化する中で、議会が果たすべき役割は大きい。廃止しか選択肢はないのか、慎重に判断したい」と論じた。議会に代わる「町村総会」の設置は、「議会の廃止は、首長と議会の二元代表制という地方自治の原則が崩れることを意味する」というのが理由だ。

 

産経(5月14日付)は、大川村の危機について「単に地方の議会制のあり方にとどまらない。過疎化と高齢化が進む人口減社会の弊害が、地方自治をリアルに破壊しようとする姿である」と事態の深刻さを指摘した。特に、「人口1000人未満の自治体は30近くに及ぶ」実態を挙げ、「全国の自治体のほぼ半数が、将来的な消滅の危機を指摘されている」と強調した。その一方で、産経は、町村総会の設置については「自治体が具体的な運営方法などを定める条例を制定しなければならない」とするとともに、「より大きな問題は、仮に村総会が動き出したとしても、大川村が抱える課題が直ちに解決するわけではないことである」として、行政サービスの提供など住民の暮らしを守り続けられるかどうかが大きな課題となると論じた。

 

日経(5月27日付)も、町村総会の成立要件や総会が決める案件の範囲など詰めなければならない課題が多いと指摘した。しかし、直接民主制への移行ともいえ、戦後の短期間、東京都宇津木村(現在の八丈町の一部)に設置された事例を挙げ、大川村について「町村総会ならば住民の意見を直接、行政に反映しやすくなるだろう。議員がいなくなるのでその分、経費も削減できる」と理解を示した。

 

毎日(5月21日付)も、その実現について「ハードルが高い」とし、総会への出席者の確保や総会の運営方法、議論するテーマの範囲の決め方などの課題があると指摘した。ただ毎日は、町村総会について「直接民主制的な手法で議会の機能を代替させようという議論だ。実現には多くの課題があるが、検討に値しよう」と他紙よりは前向きに評価した。その上で、情報技術(IT)の活用で総会に出られなくても議論に参加できるようにすることや、公正な運営ルールの作成で課題はある程度解決できるとして、「実現困難と決めてかかるべきではあるまい」と論じた。

 

■ 高市総務相発言、論調分かれる

 

高市早苗総務相が、町村総会設置について「著しく人口の少ない町村で一つの選択肢となり得る」と発言したことについては、各紙の論調が割れた。朝日は、政府が総会設置の検討を後押しすべき問題との認識に立って、「国としても、町村総会の実現に道を開く制度設計を進めてもらいたい」と主張した。

 

これに対し産経は、「自治体から相談があれば総務省として助言するという。とはいえ、いざ村総会を実際に運営するとなれば、簡単にはいかないことが予想される」と懐疑的に受け止め、読売も「一足飛びに町村総会を設置することには、疑問を拭えない」と注文を付けた。人口減少時代にあって、過疎化する地方自治体が抱える問題は深刻であり、朝日が指摘するように「国も地方も有効策を考えるときだ」という認識は変わらない。

 

 

※このページは、公益財団法人フォーリン・プレスセンターが独自に作成しており、政府やその他の団体の見解を示すものではありません。

 

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