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東日本大震災から6年 | 公益財団法人フォーリン・プレスセンター(FPCJ)

社説読みくらべ

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東日本大震災から6年

投稿日 : 2017年03月16日

朝日:「分断の系譜」を超えて

産経:今ある痛みを共にしたい 実情に合った支援が必要だ

日経:険しさ直視し震災復興たゆまずに

毎日:福島の声をどう聴くか

読売:きめ細かな復興支援が大切だ 街の再生計画に工夫を凝らしたい       (50音順)

 

 

Japan commemorate the 6th anniversary of Great Tohoku Earthquake

 写真:Abaca/アフロ

 

東日本大震災の発生から3月11日で6年を迎えた。1万8千人を超える死者、行方不明者を出し、さらに大津波の発生と共に東京電力福島第一原子力発電所の深刻な事故をもたらした大震災について、全国紙5紙はすべて拡大版の社説を掲げ、今なお重くのしかかる復興の困難さと被災者の心のケアやいじめ問題など様々な課題について論評した。

 

■ 復興支援の課題

 

読売は、5年間の集中復興支援について、復興住宅「83%」、高台などへの集団移転「70%」の完成率などを挙げ、被災地の「暮らしの基盤再生は、ようやくヤマ場を越したと言えよう」と一定の評価をしたその一方で「コミュニティーの構築が、必ずしも順調には進んでいない」と指摘。被災住民が地元へ戻らない、戻れないという“流失”問題がその一つであり、「規模が小さくなった街で、いかに魅力を高めるか」が課題であるとして、住宅再建優先で遅れる市街地再開発について「にぎわいの創出は、街を魅力的にする重要な要素だ」と訴えた。また、ピーク時に約12万人だった仮設プレハブ住宅入居者は約3万5千人に減少したが、満5年を経過しても不自由な仮住まいを強いられている現状についても、「復興の進捗度に応じたきめ細かな支援を実施すべき段階に入った」と強調した。

 

日経も、被災地再建後のコミュニティー再生の重要さと難しさを指摘した。福島県では今なお8万人近くが県内外に避難しているが、原発周辺の5市町村の避難指示が解除されにもかかわらず、一部地域を除き「帰還率は1~2割に低迷している」と指摘した。また、津波被害の宮城、岩手両県でも復旧が終了したにもかかわらず「空き地や空き家が目立ち始め、ここでも『戻らない被災者』が問題になっている」と強調した。その上で、同紙は「新たに整備した土地や公営住宅を使って、街のにぎわいを取り戻したい」と提案。特に、政府に対しては「持続可能な地域として再生できるように事業を再点検し、無駄のないよう予算を使ってほしい」として、2016年度から5年間で確保されている6兆5千億円の復興予算の効率的な執行を求めた。

 

■ 避難“いじめ”と“こころ”の支援

 

毎日は、福島原発事故のために横浜へ自主避難した中学生がいじめにあい、150万円ものお金をせびり取られた事件について、「原子力災害により、古里を追われたうえに、いわれのない差別やいじめといった二重の被害を受ける。それは理不尽というほかない」と深刻に受け止め、福島県から全国へ避難している児童・生徒が2016年5月時点で約7800人に上ることから「表面化していないいじめがある可能性がある」と懸念を表明した。また、同紙は、福島からの自主避難者に対する住宅の無償提供(対象2万6千人)が打ち切られることについても、避難者の生活実態に即した対応が不可欠であり、「避難先によって避難者間に大きな差がつくことになる。国が調整に乗り出すべきではないか」と主張した。

 

産経は、被災者の心の傷が「年月とともに見えにくくなった」として、「震災が人々になお精神的な影響を与えていることに、敏感でいたい」と強調した。具体的には、①福島県の被災者に対する平成27年度の「心の調査」では、一般人約2600人のうち100人以上が震災による心的外傷(トラウマ)反応を見せた、②宮城県の健康調査(27年度)でも、プレハブ仮設の18歳以上の7.5%が強い心理的苦痛を感じた、③東北3県の自殺者が多いとして、制度や専門家など方法だけでない心のケアの必要性を訴えると共に、孤立し、健康を損ないかねない被災者を救うには、社会が彼らを見守り関心を持ち続けることだと呼びかけた。

 

■「分断」への懸念

 

朝日は、被災地・福島で拡大している深刻な問題は、「県内と県外、避難者とその他の県民、避難者同士という重層的な『分断』である」と強調した。沿岸部の3万2千人への非難指示が解除されるが放射能汚染への懸念などから帰りたくても帰れない、一方で自主避難者への住宅無償支援が打ち切られストレスが高まる事態の中で、「避難者間の立場や判断の差が再び表面化」するとともに、賠償額の違いなどから避難民同士がいがみ合う事態になりかねないと懸念する。

 

同紙は、こうした「分断」は熊本県水俣市の“水俣病”や沖縄県の米軍基地をめぐる住民や県民間の「分断」の歴史と系譜を同じくすると論じる。その上で、分断の克服のためには、水俣市が約20年前に提唱した「もやい直し」に学ぶべきだとする。船と船をつなぐ綱のように「人のきずなを結び直す」とともに、意見の違いを認めた上で対話し続けることだと論じている。さらに、同紙は復興問題をめぐる「地元不在の一面的な議論」が、多くの人々の被災地に対する関心を遠ざけ、「全国で共用すべき問題が、特定の地域に押しつけられたままになる」と強調した。

 

 

※このページは、公益財団法人フォーリン・プレスセンターが独自に作成しており、政府やその他の団体の見解を示すものではありません。

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