プレスツアー(案内)

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実施日 : 2023年02月14日 - 15日

福島プレスツアー

投稿日 : 2023年01月20日

福島プレスツアー

<実施日: 2023年2月14日(火)~15日(水)/ 主催: 環境省>

 


【取材テーマ】

①大熊町、未来に向けた新たなまちづくり

②「脱炭素×復興まちづくり」、浪江町の挑戦

 

 

東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所の事故の発生から、今年3月で12年目を迎える。原発事故によって大きな被害を受けた福島の被災地では、除染の完了した地域から避難指示が順次解除され、それぞれの市町村が未来に向けて、一歩ずつ着実に復興の歩みを続けている。

 

福島第一原発が立地する大熊町は、事故後、町の全域に避難指示が出され、全町民約1万1千人が避難を余儀なくされた。2019年4月と2022年6月に一部で避難指示が解除され、震災前は農地だった場所が新たな拠点として整備され、役場新庁舎や公営住宅、商業施設などが新設された。人の営みが再開した町では、ふるさとの復興を願い帰還した住民や新たな移住者らが、一度は住民がゼロになった町にふたたび賑わいを取り戻そうと、新たなまちづくりに取り組んでいる。

 

大熊町の北にあり、原発から役場まで約8キロの浪江町は、震災後、町全域が避難区域となり、2017年3月に、役場周辺など人口の8割が住んでいた区域で避難指示が解除された。復興の歩みを始めた浪江町が復興の旗印として掲げたのが、「水素のまち」だ。町内に開所した世界最大級の水素製造能力を有する「福島水素エネルギー研究フィールド」を核にして、関連産業や人を町に呼び込んでおり、原子力エネルギーで被害を受けた町は、水素という新しいエネルギーで復興を目指す。町では、原発事故による耕作放棄地で栽培したコメなどを原料に、脱炭素社会を支える植物性プラスチックを製造する工場も稼働した。

 

本ツアーでは、全町避難を経験しゼロからのまちづくりを進める大熊町の復興の現状や、「脱炭素」の先進的な取組により復興の加速化を目指す浪江町を取材し、震災発生からまもなく12年を迎える原発事故の被災地の「今」を知る。

 

 

【取材概要】

1.大熊町、未来に向けた新たなまちづくり

 

東京電力福島第一原子力発電所が立地している大熊町は、原発事故発生直後、町の全域に避難指示が出され、全町民約11,505人が町外に避難、行政機能も町外に移転した。震災前まで町民の約96%が居住していた地域が「帰還困難区域」に指定された。しかし、全町避難から8年が経過した2019年4月に町内の一部で避難指示が解除され、翌5月には、避難指示が解除された大川原(おおがわら)地区内に新たに建設された町役場庁舎で業務が再開した。「人が立ち入れなかった町」では新しいまちづくりが進められ、少しずつ町民の帰還が始まっている。2022年6月には、帰還困難区域のうち、震災前まで町の中心部だった区域でも、避難指示が解除された。

 

(1)大川原地区~住民の帰還とふるさとの再生

町は、震災前まで農村地帯だった大川原地区を町全体の復興加速の拠点として定め、役場新庁舎や災害公営住宅、商業施設、交流施設を建設するなど、新たなまちづくりを進めてきた。現在、役場近くでは、幼保・小中学校が一体となった0歳から15歳までの子どもたちが学ぶ町立の教育施設学び舎(や)ゆめの森の新校舎の建設工事が進んでいる。2023年夏から、現在避難先の福島県会津若松市の仮校舎で学んでいる子どもなど20人程が、入園・入学を予定している。12年ぶりとなる大熊町での教育の再開が、子育て世帯の帰還や新たな住民の呼び込みにつながることが期待されている。

 

2021年4月に開所した商業施設おおくまーとには、飲食店や雑貨店、美容室、コンビニなど9店舗が入居している。その一つ「軽食・喫茶レインボー」は、原発事故前までは福島第一原発からわずか4キロの町の中心部にあり、30年以上にわたり地元で親しまれていた。店主の武内 一司(たけうち かずし)さん(70)は、事故後は避難先の会津若松市内で「レインボー」を再開していたが、大熊町の避難指示の一部解除と商業施設の建設計画を知ると、「町が賑わいを取り戻す力になりたい」と、町に再び店を構えることを決意した。  

 

町役場の若手職員有志で構成する「大熊町ふるさと未来会議」のメンバーは、毎月一度、手書きの情報紙大川原LIFE(ライフ)を作成し、町外に避難している町民に届けている。避難先にいる町民が町内の生活を想像できるよう、町のちょっとした出来事や、季節を感じる町内の様子など、メディアや広報誌では伝えられない地域のリアルな日常を伝えている。

 

<主な取材先>

・吉田 淳町長インタビュー

・大熊町若手職員有志「大熊町ふるさと未来会議」メンバー

・軽食・喫茶レインボー

・災害公営住宅

・教育施設「学び舎 ゆめの森」建設現場

 

 

 

(2)中間貯蔵施設

大熊町と双葉町にまたがる中間貯蔵施設は、除染で取り除いた土壌や放射性物質に汚染された廃棄物を、最終処分するまでの間、安全に管理・保管するために整備された。大熊町・双葉町にまたがる約16平方キロメートルの広大な施設には、2015年から福島県内の除染作業で出た土や汚染された廃棄物が運び込まれ、帰還困難区域の分を除き、2022年3月末までに搬入がおおむね完了した。運び込まれた土などの総量は、約1,338万立方メートル(2022年12月末時点)に達する。除去土壌などは中間貯蔵施設で一時保管した後、搬入開始30年後(2045年)までに福島県外で最終処分することが法律で定められている。

 

環境省担当者から説明を受けた後、「受入・分別施設」、「土壌貯蔵施設」などを視察し、大熊町の復興を前に進めるために避けて通れない「中間貯蔵施設」について、取材する。

 

 

【写真提供(左):環境省】

 

 

2.「脱炭素×復興まちづくり」、浪江町の挑戦

 

震災当時21,434人が暮らしていた浪江町は、一時は町内全域に避難指示が出されるなど、原子力災害により大きな困難に見舞われた。2017年3月に町中心部で避難指示が解除され、人が住めるようになり、現在は町内で1,932人(22年10月末時点)が暮らす。

 

浪江町では、「脱炭素」と「復興」を掛け合わせ、その両者を同時に推進する先進的な取組が始まっている。カーボンニュートラル社会への移行が世界的な課題となるなか、原子力というエネルギーで被害を受けた町が、再生可能エネルギーや脱炭素の先進地として生まれ変わろうとしている。

 

(1)水素のまちづくり

~浪江産の水素で「水素社会」の先駆けの地へ~

2050年カーボンニュートラルの実現に向け、環境にやさしい次世代エネルギーとして水素が注目されるなか、2020年3月、浪江町に、世界最大級の再エネ由来の水素製造実証施設福島水素エネルギー研究フィールド(FH2R)が開所した。約18万平方メートルの敷地内に設置された約68,000枚の太陽光パネルで発電した電力で水を電気分解し、水素を製造する。1日あたりの水素製造量は、一般家庭約150世帯の1カ月分の消費電力に相当し、世界最大級の規模を誇る。FH2Rで作られた水素は、東京2020オリンピック・パラリンピックで、聖火リレーのトーチの燃料などにも使われた。

 

浪江町が復興の柱として期待を寄せるのが、浪江産の水素だ。町内で水素エネルギーの利用を推進するとともに、水素タウン構想を掲げ、町全体で水素関連のさまざまな実証プロジェクトを積極的に受け入れている。地元産の水素を活用し、世界に先駆けて「水素社会」の実現に取り組むことで、町に企業や若い世代を呼び込むとともに、原発事故のイメージを払拭するねらいだ。

 

2022年4月からは、町内での水素サプライチェーンの構築に向けた実証が始まった。FH2Rから町内の水素需要拠点に水素を運び、電力や給湯、燃料電池自動車(FCV)の燃料として利用する。水素需要拠点は、温浴施設いこいの村なみえ、介護施設「ふれあいセンターなみえ」、復興事業現場事務所、浪江町役場(公用車用簡易型水素ステーション)の4カ所。「いこいの村なみえ」では、水素由来の電気を使って湯を沸かしており、大浴場の名称はその名も「水素の湯」だ。このほか町内では、地上高約5mに敷設した柱上パイプラインで水素を送る実証事業や、FH2R由来の水素も活用し消費電力のすべてを再エネで賄う「RE100産業団地」の造成も計画されている。

 

町内では、FH2Rで製造された水素をトラックのタンクに貯蔵しFCVに提供する移動式水素ステーション「ナミエナジー(2022年5月)や、定置式水素ステーション(同12月)も供用を開始しており、「水素の地産地消」が進んでいる。

 

<主な取材先>

・福島水素エネルギー研究フィールド(FH2R)

・いこいの村なみえ

・移動式水素ステーション「ナミエナジー」

 

 

   

 

(2)バイオマスレジン福島 浪江工場

~コメ原料のプラスチックで、「脱炭素」と「被災地の農業再生」の両立をめざす~

浪江町の北産業団地で2022年11月、バイオマスレジン福島(本社:浪江町)の「ライスレジン」製造工場が稼働開始した。「ライスレジン」は、食用に適さない古米、米菓メーカーなどで発生する破砕米など、飼料としても処理されず、廃棄されてしまうコメを原料とするバイオマスプラスチック。通常のプラスチック原料になる石油系樹脂にコメを混ぜて加熱、加工して製造する。石油由来のプラスチックと同等の強度を持ち様々な形に加工が可能で、自治体のごみ袋やスプーン、子ども用のおもちゃなど、幅広い製品に使用されている。最大70%までコメを混ぜることができ、石油資源の使用や、CO₂の排出を抑えることができる。

 

浪江工場では、原料の一部に、原発事故により耕作放棄された浪江町や隣接する飯館村の農地で、バイオマスレジン福島の関連会社が地元の生産組合と栽培している、「ライスレジン」用のコメも利用している。今後生産を拡大し、将来的には年間3,000トンの「ライスレジン」の生産を見込んでおり、それには年間1,500トン以上のコメが必要となる。同社では地元からの原料の調達を増やすことを目指しており、被災地の農家の安定した収入の確保や農地の保全、将来的な食用米の作付け再開につながることも期待されている。さらに、この技術が同じコメ文化があるアジア圏へ広がっていくことが期待できる。

 

バイオマスレジン福島の今津健充(いまづ たけみつ)社長から、「ライスレジン」の特徴や被災地の休耕田を活用した原料の調達、地元での雇用創出などについて説明を受けた後、「ライスレジン」の製造工程を視察する。

 

   

 

【実施要領】

 

1.日程

2023年2月14日(火)~15日(水)

 

2.スケジュール

 

【2月14日(火)】

07:12-08:30       東京駅-郡山駅(やまびこ123号)

10:45-12:15       大熊町大川原地区

12:15-13:00       昼食

13:30-15:15       中間貯蔵施設

16:15-17:00       大熊町長インタビュー

17:15-18:00       環境省ブリーフィング

18:00-18:40       軽食・喫茶レインボー

19:15                宿舎着

 

【2月15日(水)】

08:45              宿舎発

09:00-10:15      バイオマスレジン福島 浪江工場

10:30-12:00      福島水素エネルギー研究フィールド(FH2R)

                       移動式水素ステーション「ナミエナジー」

12:20-13:30      福島いこいの村なみえ(昼食含む)

14:00-15:15      調整中

15:30-16:10      大熊町職員との懇談

19:31-20:48      郡山駅-東京駅(やまびこ156号)

 

3.参加資格

外務省発行外国記者登録証保持者

 

4.参加費用

13,000円

(全行程交通費、宿泊費(1泊2食)、昼食(2日目)を含む)

 

5.募集人数

10名(各社ペン1名、カメラ1名、TVは1社2名まで)

※定員を超えた場合は主催者側で調整することがあります。

 

6.FPCJ担当

取材協力課 渡邉・菅原

(Tel: 03-3501-3405、E-mail: ma@fpcjpn.or.jp

 

7.新型コロナウイルス感染症に関する対応について

参加者は、本ツアー開始前の検温、ツアー中のマスクの着用、手洗い・アルコール消毒など、主催者の指示に従ってください。また、次の事項に該当する場合はご参加いただけません。

(1)本ツアー参加前に検温を実施し、37.5度以上の発熱が確認された場合

(2)本ツアー実施日直前7日間以内に、発熱や咳、喉の痛みなど風邪の症状、嗅覚や味覚の異常、倦怠感や息苦しさ、体が重く感じる、疲れやすい等体調に異変を感じたことがある場合

(3)本ツアー実施日直前7日間以内に、新型コロナウイルス感染症陽性と診断された方と濃厚接触がある場合

(4)同居家族や身近な知人に感染が疑われる方がいる場合

(5)本ツアー実施日直前7日間以内に政府から入国制限、入国後の観察期間を必要とされている国、地域等への渡航歴または当該在住者との濃厚接触がある場合

 

8.備考

(1)本ツアーは環境省が主催し、公益財団法人フォーリン・プレスセンター(FPCJ)が運営を担当しています。

(2)本ツアーの内容は、予告なく変更になる可能性があります。

(3)参加者には経費の一部を負担していただいていますが、営利を目的とした事業ではありません。

(4)本ツアー中に発生した事故や怪我・病気、トラブル等について、環境省及びFPCJは一切の責任を負いかねます。参加者は個人の判断・責任において、必要に応じ旅行傷害保険等に加入して下さい。

(5)写真・TV撮影に関しては、担当者の指示に従ってください。

(6)ツアーの様子を記録した動画・写真・記事を、環境省やFPCJのホームページやSNS等に掲載することがありますので、予めご了承ください。

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