実施日 : 2019年12月05日 - 06日
宮崎県プレスツアー~日本の神話を語り継ぐ「夜神楽」と地域資源で未来をつくる人々~
投稿日 : 2019年11月15日
I. 高千穂:日本を代表する渓谷美に彩られた神話のふるさとで見る「夜神楽」
II. 世界も視野にコミュニティビジネスで地域内経済循環を実現する
III. 君が代に歌われる「さざれ石」群が残る神話の聖地
九州の南東部に位置する宮崎県は、神話発祥の地と呼ばれる。1200年以上前に編纂された日本最古の歴史書「古事記」や「日本書紀」には、宮崎を舞台とした日本を誕生させた神々や天皇、神話についての物語が多く記されている。
中でも県の最北端にある高千穂は、急峻な山々に囲まれた厳しい自然環境の中にある。先人達は森羅万象に宿る八百万の神々を敬い、自然とともに歩む独自の暮らしが営まれてきた。「高千穂の夜神楽」は、その神々に奉納する800年以上に亘り継承されてきた神事であると共に、人々の心の拠り所として、地域の結束を高める重要な役割を果たしており、国の重要無形民俗文化財にも指定されている。ツアーでは、少子高齢化など、地方が抱える課題に直面しながらも、伝統と技術を後世に繋げようと取り組む人々に注目する。
また、宮崎県北部には、地域の特産品を活かしたビジネスを展開し、地域内への経済循環を生むことにより地域課題解決へ挑戦する人々がいる。世界農業遺産に認定された山間地の農業を現代に受け継ぎ、棚田やお茶など地域特有の資源を活用しつつ、若者や移住者の力を生かして、生産を伸ばす取り組みを取材する。また、特産品の利活用だけでなく、地元企業の金属加工技術も醸造工程に取り入れた。クラフトビールの生産で世界を目指すメーカーなど、新しいアイディアや技術を融合させ、先人より受け継がれてきた産業を後世に残し、発展させようと取り組む現場を取材する。
I. 高千穂:日本を代表する渓谷美に彩られた神話のふるさとで見る「夜神楽」
1. 日本を代表する渓谷美
<高千穂峡>
日本有数の渓谷美で知られる、高千穂峡。今から約27万年前から4度にわたる阿蘇の火山活動により噴出した火砕流が、冷却され固まり、長い年月の間に浸食されてできた柱状節理の峡谷だ。国の名勝・天然記念物に指定され、真名井の滝は「日本の滝百選」の一つとして数えられる。独特の自然美と、渓谷に眠る神話、そして神秘的な光景は、国内外から訪れる多くの観光客を魅了している。
★町と観光協会の案内と共に渓谷沿いを歩く。
2. 「高千穂の夜神楽」に登場する神話の舞台
<天岩戸神社/天安河原>
天岩戸神社は、古事記などに記され、「夜神楽」の代表的な物語でもある「天岩戸神話」を伝える神社で、太陽神・天照大御神(あまてらすおおみかみ)が隠れこもったとされる洞窟・天岩戸を祀っている。川の対岸にある西本宮より拝観することができる天岩戸は、御神体であるため撮影は許されていない。
天安河原は、隠れこもった天照大御神に困り果てた八百万の神々が集まり、話し合ったとされる場所だ。洞窟の暗闇にたたずむ鳥居や、訪れた人々の願いが込められた一面に敷き詰められた「石積み」など、まるで神話の世界に入り込んだかのような神秘的な世界が広がる。
なお、「天岩戸神話」はツアー当日鑑賞する「夜神楽」で披露される。
★宮司より、天岩戸神話と神社の結びつきについて話を伺い、天安河原にて撮影を行う。御神体である天岩戸は撮影不可。
(写真提供:高千穂町)
3. 「神楽面」とその技術を永久に受け継ぐ
<天岩戸木彫>
夜神楽で使われる「神楽面」を町内で唯一、生業として代々作り続けているのが伝統工芸士・工藤浩章さんと息子の省悟さんである。20種類の道具を使い分け、分厚い木材から丸2日かけてお面を彫り上げる。神楽用の面は非常にデリケートで加工が難しい桐材で作られるが、約500年以上前の面が未だ現役で使われており、永久に使い継がれていくとされる。近年国内向けの需要は減少しているが、外国への贈答品として人気がある。
父親の浩章さんは、結婚を機に自動車メカニックの仕事を辞め、職人の道へと入った。仏像づくりの修行を経て33年前から神楽面を作り続けている。神楽の舞手としても伝統を継承しており、舞手の立場に立ったお面づくりに取り組む。
★浩章さんより、神楽面や道具についての説明を受けると共に、彫りの作業を取材する。
4. 「高千穂の夜神楽」:800年に亘り守り続ける神々の舞
<夜神楽>
「高千穂の夜神楽」は国の重要無形民俗文化財に指定されており、毎年11月~翌年2月の期間、高千穂町の各地区にて一晩かけて奉納する神事である。各地区で代々受け継がれる「神楽」は、地域コミュニティの結束を維持するために重要な役割を果たす。舞手の技芸向上と後継者育成にも力を入れており、約800年続くと言われる伝統芸能を守り伝えている。
岩戸地区では、「五カ村 村おこしグループ」が中心となり、「夜神楽」の伝承を続けている。かつては集落内の各家庭が持ち回りで夜神楽を開いてきたが、負担の軽減と伝統継承の拠点をつくる目的で、自らの手で古民家を移築し「神楽の館」として整備した。押し寄せる少子高齢化の波に対抗すべく、持続可能な形へと変化しつつも、地区の誇りである「舞い」は何百年と、人から人へ受け継がれている。
★「五カ村 村おこしグループ」代表から、夜神楽の伝承や舞について説明を受けた後、高千穂の郷土料理と共に夜神楽を取材する。天岩戸神社と天安河原を舞台として描かれる「天岩戸神話」が披露される予定である。
II.世界も視野にコミュニティビジネスで地域内経済循環を実現する
1. 日本古来の製茶技術「釜炒り茶」を受け継ぎ、地域の未来を担うお茶づくり
<(株)宮﨑茶房>
高千穂・五ヶ瀬地方は、15世紀頃に中国から伝来した伝統的な「釜炒り茶」の日本一の生産地だ。かつては全国各地で生産されていたが、機械化や大量生産の流れで、蒸気で蒸す「煎茶」が主流となった。500度に熱された釜で、手間をかけ熟練の技でつくる「釜炒り茶」の生産量は、日本茶全体の1%にも満たない。その9割近くがこの地域で生産されている。
宮﨑茶房では、冷涼な気候を生かし、代々無農薬で栽培を行っており、「釜炒り茶」を含め約100種類のお茶を生産している。オーガニックに関心の高いドイツを始めフランス、スイス等欧米の他、アジアにも輸出している。スタッフは20~40歳代が中心で、繁忙期のアルバイトとして働いた若者が、そのまま町に定住し、結婚するケースもある。高齢化により引退した集落の農家から農地を引き継ぎ、生産量は毎年増えている。
★世界を視野に外から人を呼び込み、新しい息を吹き込むことで、伝統を守るお茶づくりについて、社長の宮﨑亮さんより話を伺う。また釜炒りの実演とテイスティングを行う。
2. 限界集落の課題に向き合い棚田を復活させ、「未来のムラづくり」へ挑戦
<(株)高千穂ムラたび>
約100名の住民のうち60歳以上が8割を超える高千穂町秋元地区で、甘酒等の製造・販売、民宿と食堂の経営を行う。社員13名のうち9名は40歳以下で、移住者と若者を中心に年商1億円を目指し「未来のムラづくり」の実現に向けて取り組む。雇用を創出し、地域内での経済循環が起きる仕組みは、少子高齢化や人口減少の課題を抱える日本各地において農村ビジネスのモデルとなっている。
現在、「どぶろく隊隊長」として酒造り現場の指揮を執るのが、同社社長の娘婿で移住者でもある佐伯勝彦さん。地区と国内外とのネットワーク形成を担い、事業拡大に貢献している。佐伯さんに誘われ、入社する人も少なくない。
国内の乳酸菌飲料の中で、最も多いとされる1mlあたり1兆個の乳酸菌を含む甘酒「ちほまろ」は、健康意識の高い消費者に好評で、高級スーパーや自然食品店で販売されている。中国、香港、台湾、シンガポール、英国への輸出も行っており、2018年の売上は8500万円で、目標に掲げる年商1億円に迫る勢いだ。限界集落発の農村ビジネスは、世界を見据え拡大を続けている。
★若者や移住者を中心に取り組む、甘酒等の製造販売や、外国人旅行者の利用も多い民宿運営事業などを通した、持続可能なムラづくりの挑戦を取材する。
3. 地域の農産物と技術で世界に通用する100%宮崎県産のクラフトビールづくり
<宮崎ひでじビール(株)>
クラフトビール会社として、年間約200キロリットルという九州一の出荷量を誇る。麦やホップの生産から地域特有の農産物の活用、酵母の自家培養、そして地元企業の金属加工技術を活かした醸造タンクを使い、100%宮崎県産ビールの生産を目指し、地域に利益が還元される仕組みをつくる。特に世界トップクラスの金属加工技術を誇る延岡市の企業が溶接し磨き上げた世界でただ一つの「オール延岡産タンク」は、内部の凹凸がなくなりバランスの良い発酵を生み、品質の向上につながっている。
「地産外消」を目指し、アメリカをはじめとした海外への輸出にも取り組む。これまで英国で年に1度開催されるビールの世界的コンペティション「World Beer Awards」など、国内外のクラフトビールコンテストにおいて、数々の賞を受賞する。
現在は、温暖な宮崎県では不可能と言われてきたホップの栽培に取り組んでおり、100%宮崎産ビールの実現に向けて挑戦を続ける。
★クラフトビールで地元企業、農業の可能性を広げる「地産外消」の仕組みづくりを、取材する。
III. 君が代に謳われる「さざれ石」群が残る神話の聖地
1. 大御神社(おおみじんじゃ)
太平洋を臨む柱状節理の岩場に建つ大御神社は、天照大御神(あまてらすおおみかみ)を祀る。天照大御神の孫・瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)がこの地に立ち寄った際、天照大御神を祀り、平安を祈念したと伝えられている。
境内に残るのは、日本最大級の「さざれ石」群。「君が代」にも謳われる「さざれ石」は、太古の昔、河口付近に堆積した石が粘土や砂などと交じり合い、数千万年の年月と共に固まり岩石となったもの。海外出身選手が半数以上を占めるラグビーW杯日本代表も事前合宿の最終日に、試合前に歌う「君が代」の歌詞の意味を学び、結束を高めようと訪れた。
★宮司の説明を受けつつ視察、撮影する。
実施要領
1. 日程:
2019年12月5日(木)~12月6日(金)(1泊2日)
<1日目:12/5(木)>
8:20 羽田空港 発
10:15 熊本空港 着
12:20~13:00 昼食(高千穂町内)
13:10~14:10 高千穂峡(日本が誇る渓谷美)
14:30~16:00 天岩戸神社、天安河原(神話の舞台)
16:10~17:00 天岩戸木彫(神楽面の工房)
17:30~19:30 夜神楽 ※夕食含む
20:00 ホテル着
宿泊
<2日目:12/6(金)>
8:00 ホテル発
8:30~9:45 宮﨑茶房(伝統的なお茶造り)
11:15~12:15 高千穂ムラたび(甘酒で地域活性)
12:25~13:05 昼食
14:35~15:35 宮崎ひでじビール(クラフトビールづくり)
16:20~17:20 大御神社(さざれ石)
19:15 宮崎空港着
20:10 宮崎空港 発
21:45 羽田空港 着
2.参加資格: 外務省発行外国記者登録証保持者
3.参加費用: 1人15,000円(全行程交通費、宿泊費、食費を含む)
*お支払い方法、キャンセル料等は、後日参加者にご連絡します。
4.募集人数: 10名(各社ペン1名、カメラ1名、TVは1社2名まで)。
*申し込み人数が10名を超えた場合は、国別の参加者数に上限を設定することがあります。
5.FPCJ担当:大宮、吉田(TEL: 03-3501-5251、Email: sc@fpcjpn.or.jp)
6.備考:
(1)本プレスツアーは宮崎県が主催し、公益財団法人フォーリン・プレスセンター(FPCJ)が企画・運営を担当しています。
(2)本ツアーの内容は、予告なく変更になる可能性があります。
(3)参加者には経費の一部を負担していただいていますが、営利を目的とした事業ではありません。
(4)主催者とFPCJは、ツアー中に生じるいかなる不都合、トラブル、事故等に対して一切責任を負いません。
(5)写真・TV撮影に関しては、担当者の指示に従ってください。