実施日 : 2019年10月10日
案内:豊島区プレスツアー
投稿日 : 2019年09月20日
<テーマ>「消滅可能性都市」からの脱却:豊島区の挑戦
日本全体で進行する人口減少と高齢化は、これまで一極集中で地方から若者を集め日本経済を牽引してきた東京にとっても切実な問題となりつつある。都の推計によれば、東京の人口は東京オリンピック後の2025年をピークに減少に転じる見込みだ。
東京23区の西北部に位置する豊島区。中心地である池袋は、新宿、渋谷と並ぶ、東京を代表する繁華街だ。区の人口は緩やかに増加を続けており、2018年には40年ぶりに29万人を突破。人口密度は全国一の高さだ。
その豊島区が2014年、民間研究機関の「日本創成会議」のレポートで、東京23区で唯一、「消滅可能性都市」と指摘された。同レポートは、2040年までの30年間に20~39歳の女性が半減し、急激な人口減少が避けられず、将来的に消滅する恐れがある自治体を「消滅可能性都市」と定義し、全国の896市区町村をリストアップした。リストに「過疎」に悩む地方の自治体が並ぶ中、多くの若者で賑わう池袋を有する豊島区までがそこに含まれていたことは、全国に衝撃を与えた。
それ以来、豊島区は「女性にやさしいまちづくり」という街の将来像を明確に掲げ、子育て支援策の充実や、安全・安心なまちづくりなどにより、若い女性や子育て世代が住んでみたい、住み続けたいまちをつくることを徹底的に進めてきた。イメージを刷新して「選ばれるまち」となるため、「国際アート・カルチャー都市」という将来像も打ち出し、池袋駅周辺は2020年に向けた大規模な再開発により新しい芸術・文化の発信拠点に生まれ変わろうとしている。2017年には民間調査で「共働き子育てしやすい街」の全国総合1位ともなり、豊島区は今や、都市部の人口減少対策のモデルとして注目を集める。
「消滅可能性都市」の衝撃の宣告から5年。本プレスツアーでは、大都市東京に迫る人口減少の危機にいち早く挑んできた豊島区の取り組みを取材する。
【取材内容】
1.高野 之夫 区長インタビュー
「消滅可能性都市」の指摘を受けてすぐ、豊島区は緊急対策本部を設置し、対策の検討をはじめた。区では当事者の声を聴くため、20~30歳代の女性を中心とした「としまF1会議」や「としま100人女子会」などを立ち上げ、そこで挙がった声を施策に反映させていった。さらに、一連の施策を強力に推進するため、「女性にやさしいまちづくり担当課」を新設。課長は民間から公募で起用した。
高野 之夫(たかの ゆきお)区長は、「消滅可能性都市」の指摘は「ショックだった」というが、区民の危機感を味方につけることで矢継ぎ早に対策を進め、街を大きく変えてきた。「国際アート・カルチャー都市」構想もその一つで、「女性にやさしいまちづくり」にもアートの要素を活用している。
オリエンテーションでは、「消滅可能性都市」との指摘を受けた豊島区の人口動態の特徴や、区の一連の取り組みとその成果について説明を受ける。区長インタビューでは、高野区長が先頭に立って進めてきた女性にやさしいまちづくり、文化によるまちづくりについて話を聞く。
写真提供:豊島区
2. グローバルキッズ東池袋園
~高層の区庁舎ビルなどあらゆるところに保育園を増設し待機児童ゼロを実現~
子育て世代が住みやすい、長く定着してもらえる街になるために豊島区が全力で進めたのが、待機児童対策だ。スーパーの中やマンションの一角など、使える場所はどこでも使い、とにかく保育園を徹底的に増やしてきた。その結果、「消滅可能性都市」の指摘を受けた2014年度には240人いた待機児童は徐々に減少し、その間の保育需要の伸びにもかかわらず、2017年度、2018年度は2年連続で待機児童ゼロを実現した。
地上49階建ての区庁舎ビルに2017年4月にオープンした「グローバルキッズ東池袋園」も待機児童解消のために新設された保育所の一つだ。定員は、0~5才児までの60人。庁舎と同一建物内の認可保育所の開設は、全国でも初だ。専用の園庭はないが、近隣の「南池袋公園」(後述)や庁舎ビル10階の屋上庭園が、園児たちの散歩コースとなっている。
区の待機児童対策について説明を受けた後、「グローバルキッズ東池袋園」における保育の現状を視察する。また、南池袋公園への園児の散歩に同行し、公園を園庭がわりに子どもたちが遊ぶ様子を視察する。
写真提供:グローバルキッズ東池袋園
3. 南池袋公園
~公園が変わればまちが変わる~
豊島区は「公園が街を変える」をコンセプトに、公園の整備に力を入れている。池袋駅の周辺では2020年に向けて、合計面積約30,000平方メートルとなる4つの公園の再整備が進んでおり、その一つが池袋駅から徒歩約5分の「南池袋公園」だ。繁華街の一角にあり周囲をビルに囲まれた同公園は、かつては鬱蒼とした木々に覆われ、ホームレスが集まる場所として知られ、区民が利用したいと思う場所ではなかったが、2016年4月、美しい緑の芝生が広がる現在の姿へとリニューアルされた。公園内にはおしゃれなカフェ・レストランもオープンし、かつての暗く近寄りがたいイメージは一掃され、今では若い女性や親子連れを含め、区内外から老若男女が集う。公園周辺にも賑わいが波及しており、まち全体が大きく変わりつつある。
新設された保育園の多くが専用の園庭を持たないなか、南池袋公園に限らず区内の約160の公園は園庭の役割を果たしており、保育園の子どもたちが次々に散歩に訪れる。
ニューヨークのセントラルパークにも例えられる南池袋公園を訪れ、公園から街を変える豊島区の取り組みについて説明を聞く。
写真提供:豊島区
4. 南長崎公園「アートトイレ」
~女性や子どもの目線で公衆トイレを明るく清潔に改修~
豊島区は、「としまF1会議」などの場で女性たちから、公園のトイレが古い・汚い・怖い、子連れで安心して使えるトイレがほしいといった声が聞かれたことをきっかけに、公衆トイレの改善にも力を入れる。トイレが変われば公園が子どもや女性が集まる場になり、まちの価値を高めると考え、2017年度から3年計画で、区内133カ所の公園・公衆トイレのうち85か所を全面的に改修する「としまパブリックトイレプロジェクト」を進めている。
清潔で明るく親しみやすいトイレにするため、一部には若手アーティストや地域の子どもたちなどとコラボを行い、壁面や内壁にラッピングなどを施す「アートトイレ」がある。その一つ、住宅街にある「南長崎公園」のアートトイレは、町内在住のイラストレーターの井上(いのうえ)ヤスミチさんにより、外壁にぐるりと一周、まちの日常の風景が色鮮やかに描かれた。
「南長崎公園」のアートトイレを訪れ、トイレの整備による女性にやさしいまちづくりについて区から説明を受けるとともに、制作を手掛けた井上さんから壁画に込めた思いを聞く。
5. 地下歩道「ウイロード」改修事業
~「暗い・汚い・怖い」地下道を誰もが安心して通行できるアート空間に再生~
池袋駅北口側にある東口と西口を結ぶ公共地下歩道、ウイロード。1925年に建設された全長77メートルの通路は1日3万人以上が利用するが、老朽化が進み、「暗い、汚い、怖い」というマイナスイメージから女性には敬遠されていた。
現在、豊島区ではウイロードを、女性を含めて誰でも安心して通行できる空間に再生する改修工事を進めており、ここでも「アート」が活用されている。内装デザインを担うのは、美術作家の植田志保(うえだ・しほ)氏だ。植田氏は約1年間かけて区民から聞き取ったウイロードへの想いを、天井や壁面に色で表現しており、完成は2019年11月の予定だ。
最終段階を迎えた壁面描画制作の様子を視察するとともに、植田氏から話を聞く。
写真提供:豊島区
6. シーナと一平
~築45年の空き家を再生したカフェ&ゲストハウスが「持続可能なまち」の拠点に~
豊島区の空き家率は15.8%と23区のうち最も高い。区では、子どもがあふれる子育てが楽しいまちの創出に空き家や空き地を活用しようと、「リノベーションまちづくり」を積極的に進めてきた。その一環として開催してきたのが、「リノベーションスクール」だ。区内の実際の空き物件を対象に、建築家、デザイナー、会社員、主婦など様々な立場の参加者がチームとなり具体的なリノベーションの事業プランを作成するものだ。(「リノベーションまちづくり事業」は2014年度から2016年度にかけて実施していたもの)
その事業化案件第一号が、椎名町に2016年3月にオープンした「シーナと一平」だ。昔ながらの商店街にある長く空き家だった築45年の元とんかつ屋が、リノベーションによりおしゃれなコミュニティカフェ&旅館に生まれ変わった。1階は、シェア・ミシンやシェア・キッチンのあるコミュニティカフェ。「ものづくり」を通じて子育て世代と子育て先輩世代が交流する場であるとともに、子育てをしている人たちの姿を商店街のカフェで「見える化」することで、若い世代にこのまちで子育てができることを伝え、彼らの流出を防ぐのがねらいだ。2階は5室からなるゲストハウス。椎名町のまち全体を一つの宿に見立てているのが特長で、風呂は街の銭湯で、食事は街の飲食店でしてもらう仕組みだ。下町の風情を残す町で「東京の日常が味わえる」と外国人観光客に人気だ。空き家のリノベーションが多世代の交流、地元の人と訪日客との交流の拠点となり、街に活気をもたらしている。
「シーナと一平」を運営する(株)シーナタウンの日神山晃一(ひかみやま こういち)代表から、持続可能なまちをつくる「シーナと一平」のプロジェクトについて話を聞く。
7. 椎名町こども食堂
~地域の子どもを、地域で見守り育てる~
子どもの貧困や孤食が社会問題となる中で、子どもが一人でも行ける無料または低額の食堂、「子ども食堂」が全国的な広がりを見せている。
現在、豊島区には13カ所の「子ども食堂」がある。その一つが、「NPO法人 豊島子どもWAKUWAKUネットワーク」(理事長:栗林知絵子さん)が運営する「椎名町こども食堂」だ。地域のボランティアが集まり、月2回、栄養満点の温かい夕食を提供している。高校生までの子どもは無料で、大人は300円。困窮した家庭にかぎらず、地域のすべての子どもやその保護者を受け入れており、利用者は毎回80~100名にのぼる。40席は18時の開店と同時に満席となるほどだ。ワイワイがやがやみんなでご飯をたべて子どもたちが笑顔になるだけでなく、日頃忙しい母親が一食分だけでもゆっくりすごす場ともなっており、地域の子育て世代を広く支えている。
「豊島子どもWAKUWAKUネットワーク」は、日本における「子ども食堂」運営の草分け的な存在の一つ。区内では「椎名町こども食堂」を含む4カ所の「こども食堂」を運営している。そのきっかけは、理事長の栗林さんが「プレーパーク」という子どもたちの遊び場の運営に携わるなかで、食事をしていない子、車の中で寝泊まりしている子などに出会ったことだった。
「椎名町こども食堂」を訪れ、子どもを地域で見守り育てる「子ども食堂」の取り組みについてNPO法人の天野敬子(あまの・けいこ)事務局長から話を聞くとともに、こども食堂の様子を視察する。
写真提供:豊島子どもWAKUWAKUネットワーク
8. Hareza(ハレザ)池袋
~2020年に向けて文化の発信拠点へと変貌を遂げる池袋~
豊島区の中心地である池袋のまちは、2020年に向けてかつてない変貌を遂げようとしている。庁舎跡地には、「国際アート・カルチャー都市」のシンボルとなる「Hareza(ハレザ)池袋」が2020年7月にグランドオープンする。ホールや映画館、ライブ会場など計8つの劇場を備えた複合商業施設だ。1300席の客席を有し歌舞伎、ミュージカルなどを公演する「東京建物Brillia HALL」と「としま区民センター」は、2019年11月に先行オープンする。また、2020年春までには池袋東西エリアに南池袋公園を含む4つの公園がオープンすることになり、そこを真っ赤な電気バスIKEBUS(イケバス)が回遊する。
「Hareza(ハレザ)池袋」を視察するとともに、ダイナミックに変わる池袋の再開発について説明を受ける。また、11月から運行予定のIKEBUS(イケバス)に試乗する。
写真提供:豊島区
【実施要領】
1.スケジュール
※日程は調整中のものであり、予告なく変更になる可能性があります。
<10月10日(木)>
8:30 豊島区役所集合
8:45-9:30 オリエンテーション
9:30-10:45 グローバルキッズ東池袋園
10:45-11:15 南池袋公園
11:30-12:00 ウイロード
12:25-12:55 アートトイレ(南長崎公園)
13:10-13:50 昼食
13:50-14:50 シーナと一平
15:15-16:00 Hareza(ハレザ)池袋
16:30-17:20 区長インタビュー
17:40-19:00 椎名町こども食堂
19:00 椎名町駅解散
2. 参加資格:外務省発行外国記者登録証保持者
3.2,000円(豊島区内移動費、昼食費を含む)
*お支払い方法、キャンセル料等については参加者に通知します。
*集合解散場所までの往復交通費は自己負担ください。
4.募集人数:10名(各社ペン1名、カメラ1名、TVは1社2名まで)
※申し込み人数が10名を超えた場合は、国別の参加者数に上限を設定することがあります。
5.FPCJ担当:取材協力課 菅原、大西(Tel: 03-3501-3405、E-mail: ma@fpcjpn.or.jp)
6.備考:
(1)本プレスツアーは豊島区が主催し、公益財団法人フォーリン・プレスセンター(FPCJ)が企画・運営を担当しています。
(2)本ツアーの内容は、予告なく変更になる可能性があります。
(3)参加者には経費の一部を負担していただいていますが、営利を目的とした事業ではありません。
(4)主催者とFPCJは、ツアー中に生じるいかなる不都合、トラブル、事故等に対して一切責任を負いません。
(5)写真・TV撮影に関しては、担当者の指示に従ってください。