実施日 : 2018年12月03日 - 04日
案内:箱根八里プレスツアー
投稿日 : 2018年11月16日
豊かな自然と温泉、東京から約1時間半で行けるアクセスの良さから、箱根は国内外から年間約2000万人が訪れる日本有数の観光地です。
江戸時代を通じ、江戸と京都を結ぶ東海道は、旅客の往来、物資の輸送において日本で最も重要な幹線道路でした。その随一の難所と言われたのが、「箱根八里」。東京側の小田原宿から標高846mの箱根峠を越えて三島宿に至る、全長八里(今の里程で言うと約32km)の険しい坂道です。そこには、繁華な往来を支えるために当時の日本で随一の壮大な石畳が敷かれ、沿道には宿場町や茶屋、関所や並木など、さまざまな往来文化が発達しました。
箱根の旧街道には石畳や杉並木、箱根関所など江戸時代の面影を伝える史跡が今なお残っており、近年は街道歩きを楽しむ国内外の観光客も増えています。また、小田原の提灯やかまぼこ、箱根寄木細工など全国に知られる地場産品は、もとは箱根八里を歩く旅人の携行品や土産物として発達したものです。明治時代の鉄道開通により街道の往来が次第に減り、旅人相手の仕事が立ち行かなくなった当時の集落が、農地の開墾により現在ではブランド野菜の産地となってもいます。
江戸庶民の湯治場から国際的観光地へと変貌を遂げた箱根の歴史は、明治維新以降150年の日本の近代化の縮図です。「箱根八里」の日本遺産認定を記念する本ツアーでは、江戸時代の往来の様子を伝える箱根八里の史跡を専門家の案内で視察するとともに、近代になり箱根が温泉観光地に生まれ変わっていく時期に建てられた現役の木造高層旅館、400年前から変わらないもてなしの心で国内外からの観光客を迎える峠の茶屋や伝統の匠の技を現代に伝える職人、街道文化の再興を通じた町の賑わい再生の取り組みなどを取材し、箱根八里の魅力の深奥を探ります。
【取材内容】
1. 旧東海道、箱根八里に関するブリーフィング
江戸時代の大動脈、東海道は全長約492キロに53の宿場(53次)が置かれました。道中には名所旧跡が多く、歌川広重の「東海道五十三次」に代表される浮世絵や和歌の題材にもしばしば取り上げられています。今も街道沿いには浮世絵に描かれた風景や当時の歴史をとどめる街並みが残り、最近は江戸・日本橋から京都まで歩くツアーも人気を博しています。
その一部、小田原宿から箱根宿までの四里と箱根宿から三島宿までの四里を合わせた八里の区間が、箱根八里です。箱根峠を境に小田原、箱根側の「東坂」と三島側の「西坂」に分かれており、険しい山道は東海道随一の難所と言われました。現在も江戸時代の旅を追体験できる城下町や宿場町、石畳、並木、茶屋、関所のすべてが日本で唯一残っています。
ツアーの冒頭に、非営利活動法人全国街道交流会議の田中孝治理事から、江戸時代における旧東海道の役割や、昨今の街道歩きブームについて話を聞く。続いて、箱根八里の日本遺産登録で中心的な役割を果たした三島市郷土文化財室の辻真人主任学芸員から、箱根八里の歴史とその現在の姿について説明を受ける。
【写真提供(右):全国街道交流会議】
2.小田原宿
江戸時代の小田原は、城下町であるとともに東海道屈指の宿場町として発展しました。90軒前後の旅籠が軒を連ね、旅の携行品や土産物を売る店が発達し、小田原宿の名物として全国に知られるようになりました。
その一つが、現在全国に名を馳せる小田原かまぼこです。保存性のよさから箱根を越える旅人や湯治客に珍重され全国にその名が知られるようになりました。現在、旧街道筋にはその老舗12軒の本店が軒を連ね、「小田原かまぼこ通り」として親しまれています。かまぼこの消費量が減少し商環境が厳しいなか、老舗店の若手経営者らが2014年に「小田原かまぼこ通り活性化協議会」を結成。江戸から明治期の漁師町の景観の再現など、賑わいの再生に取り組んでいます。
小田原城の天守から城郭都市・小田原の構造を概観する。続いて田代守孝会長から小田原かまぼこの成り立ちや小田原かまぼこ通り活性化協議会の取り組みについて聞き、正月向けのかまぼこ製造が最盛期を迎えたかまぼこ通りを視察する。
【写真提供(左):全国街道交流会議】
3.箱根温泉の歴史と大規模木造宿泊施設群
箱根温泉の歴史は古く、特に湯本温泉は奈良時代の開湯と伝えられ、江戸時代には箱根七湯と呼ばれる七カ所の温泉場が湯治客らによって賑わいを見せていました。近代になると、七湯のほかにも新しい温泉場が開発され、それら温泉場を結ぶ交通網も整備されました。
その中で多くの旅館主が名棟梁を招き、その技を競うように全国の銘材を使った建物を建てました。その名残りが、2017年12月に日本イコモス国内委員会から「日本の20世紀遺産20選」に認定された「箱根の大規模木造宿泊施設群」です。それら国内でも数少ない木造による高層建築は、今日でも現役で使われているものが多くあります。
萬翠楼 福住(ばんすいろうふくずみ)は、1625年創業の老舗旅館です。1879年に完成した建物は、基本は和風建築でありながら、文明開化に伴って持ち込まれた西洋建築の意匠を一部取り入れた現存する希少な擬洋風建築であり、2002年に現役旅館として初めて国の重要文化財建造物に指定されました。環翠楼(かんすいろう)も約400年の歴史を持つ老舗旅館。約100年前の4階建ての木造高層建築は当時の建築技術の高さを示しており、国の有形登録文化財に指定されています。客室や廊下の装飾は和風ですが、館内には日本で最初期に輸入されたタイル、ステンドグラスなどが使用しています。
ツアーでは、箱根の歴史の第一人者である鈴木康弘・箱根町立郷土資料館館長から江戸の住人たちの湯治場であった箱根の温泉の成り立ちについて説明を受けるとともに、箱根温泉の歴史や江戸時代の湯治の姿を伝える貴重な絵巻(七湯の枝折)など、通常は非公開の資料や場所を見学する。また、箱根が近代化を進める中で建てられた萬翠楼 福住と環翠楼の歴史的建造物を視察し、湯治場だった箱根が温泉観光地へと発展した歴史を体験する。
【写真提供: 元湯 環翠楼】
4.箱根寄木細工
箱根寄木細工は、箱根山の多種多様な樹木の自然の色や材質の違いを活かして精緻な幾何学模様をデザインする木工芸品です。その独特な技術・技法は江戸時代末期に、箱根畑宿集落の石川仁兵衛により創作されました。江戸時代の畑宿は箱根越えの中間地点として旅人たちが多く往来しており、寄木細工は旅人を運ぶ「駕籠(かご)かき」の副業として盛んになり、温泉場や街道の茶屋で売られたことで全国に広まったといわれています。江戸時代末期から明治にかけて日本が開国すると、寄木細工は海外へも輸出されました。
現在注目されているのが、寄木細工の美しさに魅せられてこの世界に飛び込んだ若手作家6人が2005年に立ち上げたグループ「雑木囃子(ぞうきばやし)」です。江戸時代から受け継がれてきた職人達の匠の技と伝統を継承しながら、互いに切磋琢磨し、若い感性で、現在のライフスタイルに合った新しい寄木細工づくりに取り組んでいます。
箱根寄木細工を考案した石川仁兵衛の子孫にあたる石川一郎氏(伝統工芸士)から箱根寄木細工の歴史と技法について説明を受けるとともに、実演を視察する。また、「雑木囃子」のメンバーとして寄木細工の世界に新風を吹き込む清水勇太さんと石川裕貴さんから、寄木細工職人を志した理由や現在の取り組みについて聞く。
【写真提供(左):全国街道交流会議】
5.箱根甘酒茶屋
箱根八里の急坂には、往来する人馬が一服できる茶屋が多くありました。小田原から箱根への長くつらい上り坂で現在も営業を続ける箱根甘酒茶屋(はこねあまさけちゃや)は、今から400年ほど前の江戸初期の創業。明治以降、幹線道路が整備され旧街道の往来が減り、周囲に数軒あった同業の茶屋は経営難から峠を離れましたが、甘酒茶屋だけは、客が10日に1人というような苦しい時期を乗り越え、唯一残りました。囲炉裏端では、江戸時代から変わらぬ製法で作られた名物の甘酒を味わうことができます。
現在、第13代当主として茶屋を運営しているのが山本聡さん(51)。京都の高級料亭で料理人として過ごしたのち、30代で家業の茶屋に戻りました。「街道歩きのお客さんが、箱根の苦しい坂で飲んだ甘酒が忘れられないと言ってくれる。頼りにされるとこちらの都合で店を休む訳にはいかない」と語る山本さん。一年中休むことなく夜明け前から仕込みを行い、早朝から店を開け旅人を迎えています。
観光ガイドブックにも取り上げられ今や海外からの観光客も多く立ち寄る甘酒茶屋。山本さんから、400年にわたり旅人を癒してきた甘酒茶屋の歴史と、伝統ある茶屋を守り続ける思いについて聞く。
6.箱根旧街道石畳、一里塚、杉並木、箱根関所
ぬかるみ道になりやすく往来に困難を極めた箱根八里の峠道には、当初滑り止めのために竹が敷かれていましたが、ひんぱんに取り換える必要が生じたことから、幕府は1680年に当時の日本で随一の規模となる石敷きの道に改修しました。また、当初から街道筋には旅人の旅程の目印となるように1里(約4キロ)ごとに一里塚と呼ばれる土を盛り上げた塚が設けられていたほか、旅人を夏の日差しや冬の風雪から守るため、あわせて道幅を固定するために杉や松の並木が作られました。現在も箱根八里の旧街道には苔むした石畳道や一里塚、樹齢最高350年、400本以上の杉並木などが残り、江戸時代の面影を伝えています。
また、箱根には街道の往来を監視するための関所も置かれました。徳川幕府は全国53カ所余りに関所を設けが、その中でも江戸防衛のために作られた箱根は規模が最も大きいものでした。箱根の関所が芦ノ湖のほとり、山と湖に挟まれた現在の場所に置かれてから、2019年でちょうど400年。2007年に江戸時代の関所の姿が復元され、当時の様子を知ることができます。
箱根の歴史に詳しい箱根関所の大和田公一所長の説明を受けながら、畑宿集落の一里塚、苔むした石畳道、杉並木など旧街道に残る史跡を視察し、当時の旅人たちがどのようにして箱根を越えたのか、取材する。箱根関跡では、徳川幕府による江戸防衛や大名統括のための箱根の関所の役割について話を聞くとともに、復元された関所内を視察する。
【写真提供(左上):全国街道交流会議】
7.五カ新田集落
箱根峠から三島宿へ下る「西坂」には、「五ヶ新田」と総称される5つの集落があります。徳川幕府が箱根山越えのルートを整備する際、街道の往来を援助するために新たに作られた集落で、、江戸時代には旅人相手の茶店・旅籠・運送業で栄えました。明治以降、東海道線(鉄道)の開通により旅人の往来が減っていったことから、生活の糧を得るため人々は山を開墾し、集落は純農村へと変貌しました。
そのときに開墾された畑が現在、「箱根西麓三島野菜」と呼ばれるブランド野菜の産地になっています。富士の火山灰と赤土の恵みによる味と品質の高さから首都圏へ多く出荷されており、なかでもジャガイモ(メークイン)は各地の青果市場で全国一の価格で取り引きされています。また、11月下旬から12月上旬にかけて、収穫しただいこんを漬物用に日干しで乾燥させる光景は、三島の冬の風物詩となっています。
五カ新田の集落の一つを訪れ、箱根八里の歴史と共に歩んだ集落の歴史について説明を受けるとともに、箱根西麓三島野菜の生産農家である宮澤竜司さんに話を聞く。また、だいこんの天日干し作業を視察する。
【写真提供:JA三島函南】
8. 三島スカイウォーク
三島スカイウォークは、2015年12月にオープンした全長400mの日本一長い歩行者専用吊橋です。江戸時代に多くの旅人が往来した箱根西坂(三島~箱根)に賑わいを取り戻そうと、地元三島の(株)フジコーが総事業費約40億円をかけて街道沿いに建設した、三島の新たなランドマークです。橋の上からは富士山や駿河湾、伊豆の山並みなどを一望でき、開業から3年弱で来場者数は300万人を突破しました。
箱根西麓地区の新たな観光スポットとなっている吊橋から、富士山や駿河湾のパノラマを眺望する。
9. 三嶋大社
東海道五十三次の宿場町のひとつ三島宿の名前の由来ともなっている三嶋大社。東海道に面し、江戸時代には東西を往来する参勤交代の諸大名や旅人が参拝し、険しい箱根越えの前には安全を祈願し、箱根越えの後にはお礼参りをしました。江戸時代の浮世絵師・歌川広重の「東海道五十三次」では三島宿の場面として、早朝の朝霧の中、箱根宿を目指して出発する旅人の背景に、三嶋大社門前の鳥居が描かれています。
神職から三嶋大社の歴史について説明を受けるとともに、本殿で神官による正式参拝を体験する。
【写真提供(右):全国街道交流会議】
【実施要領】
1. 日程:2018年12月3日(月)~4日(火)(1泊2日)
2. スケジュール:
※日程は調整中のものであり、予告なく変更になる可能性があります。
<12月3日(月)>
7:56-8:30 東京駅~小田原駅(こだま637号)
8:50-9:40 小田原城
10:00-10:50 旧東海道、箱根八里ブリーフィング
10:50-11:30 小田原かまぼこ通り
12:00-12:30 昼食
12:40-13:50 箱根温泉の歴史ブリーフィング、萬翠楼福住視察、奈良時代の源泉見学
14:10-15:00 環翠楼視察
15:20-16:30 箱根寄木細工取材
16:50 宿舎着
17:30- レセプション(小田原市長インタビュー)
<12月4日(火)>
8:30 宿舎発
9:00-9:40 畑宿一里塚、旧東海道石畳
9:50-10:50 箱根甘酒茶屋
11:00-11:20 箱根杉並木
11:25-12:25 箱根関跡
12:40-13:10 昼食
13:30-14:40 五ヶ新田集落
14:50-15:50 三島スカイウォーク
16:15-17:15 三嶋大社
17:56-18:40 三島駅~東京駅(ひかり474号)
3. 参加資格:外務省発行外国記者登録証保持者
4. 参加費用:10,000円
(全行程交通費、宿泊費(朝食込み)、昼食(1日目、2日目)、夕食(1日目)を含む)
※申し込み後に参加をキャンセルされる場合、理由の如何を問わず、以下のキャンセル料をお支払いいただきます。
・11月30日(金)15:00までのキャンセル 5,000円
・それ以降のキャンセル 10,000円(参加費用全額)
5. 募集人数:10名(各社ペン1名、カメラ1名、TVは1社2名まで)
※申し込み人数が10名を超えた場合は、国別の参加者数に上限を設定することがあります。
6. FPCJ担当:取材協力課 菅原順也
(Tel: 03-3501-3405、E-mail: ma@fpcjpn.or.jp)
7. 備考:
(1)本プレスツアーは「箱根八里街道観光推進協議会」が主催し、特定非営利活動法人 全国街道交流会議、公益財団法人フォーリン・プレスセンター(FPCJ)が企画・運営を担当しています。
(2)本ツアーの内容は、予告なく変更になる可能性があります。
(3)参加者には経費の一部を負担していただいていますが、営利を目的とした事業ではありません。
(4)箱根八里街道観光推進協議会、特定非営利活動法人 全国街道交流会議、及びFPCJはツアー中に生じるいかなる不都合、トラブル、事故等に対して一切責任を負いません。
(5)写真・TV撮影に関しては、担当者の指示に従ってください。
(6)本ツアーは、報道を目的とした取材機会の提供を目的としているため、参加者には、本国での報道後、FPCJを通じ箱根八里街道観光推進協議会に、記事、映像、音声(ラジオの場合)のコピーの提出をお願いしています。また、報道が英語・日本語以外の場合は、内容を把握するため英語または日本語の概要の提出も併せてお願いしています。参加申込者は、これらに同意いただいたものとみなします。