実施日 : 2014年02月27日 - 28日
案内:震災3年・岩手県沿岸部プレスツアー
投稿日 : 2014年02月10日
~津波被災地の現在。暮らしと産業の復興状況~
大槌・釜石・陸前高田
2011年3月11日に発生した東日本大震災から3年が経とうとしている。
震災で全壊・半壊した建物は合わせて約40万に上り、多くの人が家を失った。住まいを再建する人がいる一方で、今も全国で27万4千人もの人々が避難生活を送っている。
FPCJでは、2011年から毎年、被災地へのプレスツアーを実施してきた。2012年の宮城県、2013年の福島県に続き、今年は津波で甚大な被害を受けた岩手県の沿岸部を訪れ、人々の暮らしの現状や、水産業・農業を始めとした産業の復興状況を探る。
本プレスツアーでは、達増・岩手県知事に復興の進捗状況や今後の計画などについて聞く。また、仮設住宅を訪問してそこに暮らす人々にも話を聞く。津波で工場を流された水産加工会社や、地域に雇用を生もうと奮闘するキノコ生産者、店舗を失った事業者たちによる仮設の商店街も取材する。さらに、人口の約8%もの住民が犠牲となった大槌町にある高校を訪ね、生徒達の話を聞く。
がれき処理や嵩上げ工事が進むなか、震災の記憶を伝えるために震災で破壊された建物を保存する動きもある。本プレスツアーでは陸前高田の「震災遺構」や追悼施設を視察すると共に、各地で進む大規模な土地の嵩上げ工事も見ることができる。
【取材内容】
~「安全」の確保、「暮らし」の再建、「なりわい」の再生を目指して~
http://www.pref.iwate.jp/governor/index.html
岩手県の震災による死者数は4,672人、行方不明者数は1,142人に上り、25,023棟もの家屋が倒壊した。多くの人が家を失い、2013年12月時点で、応急仮設住宅14,809戸に34,044人が暮らしている。津波が去った後に残された推計525万トンもの県内のがれきについては、2013年10月末時点で82.7%が処理されており、3月末までには全てのがれきの処理が完了する見込みだ。
達増知事は、県の復興計画のなかで、目指す姿を「いのちを守り、海と大地と共に生きる、ふるさと岩手・三陸の創造」とし、復興に向けた3つの原則として、「安全」の確保、「暮らし」の再建、「なりわい」の再生、を掲げている。計画期間は8年間。最初の3年間である「第1期 基盤復興期間」が2013年度で終わり、2014年度(2014年4月1日)からの3年間は「本格復興期間」と位置付けられている。
◆本プレスツアーでは、達増知事との会見を行い、復興の進捗状況、県の取組みや将来へのビジョンなどについて聞く。
2.岩手県立 大槌高校の生徒たちへの取材
~米国を訪問し、現地の高校生に被災地の現状を伝えた若者たち~ (大槌町)
http://www2.iwate-ed.jp/oht-h/
http://www.mofa.go.jp/mofaj/saigai/kizuna_project.html
http://sv2.jice.org/kizuna/what/about/
http://www.geocities.jp/peacefulworld10000/
震災による津波の高さが最高22.2メートルにまで達し、人口が集中する市街地が壊滅的な被害を受けた大槌町。死者と行方不明者を合わせた数は人口の約8%の1,235名に及んだ。町役場も津波が襲い、当時の大槌町長を始めとした40名の職員が犠牲になった。今も町民の約3分の1が仮設住宅で暮らしている。
町の高台にあった大槌高校は津波を免れ、震災直後の約5か月間は避難所となり、多い時には1,000名近い町民が生活していた。同校には、今も仮設住宅から通学している生徒も多くいる。その大槌高校の生徒達が、震災から2年を迎えた2013年3月、日本の外務省による交流事業「キズナ強化プロジェクト」により米国を訪問した。19名の生徒が、シアトルとサンフランシスコで、震災後の現状や故郷への想いを現地の高校生を相手に英語で伝えたのだ。
また、同校には、自ら考えたまちづくりの戦略案を町役場幹部に提案したグループもある。町としても若者の意見を今後の施策に反映させたいとしている。
さらに、同校の兼沢茜さん(17歳)は、「高校生平和大使」(主催:市民団体「高校生平和大使派遣委員会」)に任命され、2013年8月半ばにスイス・ジュネーブの国連欧州本部を訪問。全国の高校生が集めた核兵器廃絶を求める署名を届けると共に、核廃絶と被災地の現状を訴えた。
◆本プレスツアーでは、大槌高校を訪問し、米国で町の現状を伝えた高校生グループ、町にまちづくりの戦略を提案した高校生グループ、「高校生平和大使」を務めた兼沢茜さんにそれぞれ話を聞く。
3.仮設住宅「平田第6仮設団地」の住民の方々
~震災から3年の避難生活。住民と支援者によるコミュニティ作り~ (釜石市)
http://heitaparktown.sakura.ne.jp/
平田第6仮設団地は、県内でも有数の大規模な仮設団地で、221戸もの住宅に約430名もの人々が暮している。敷地には「一般ゾーン」に加え、子供がいる世帯向けの「子育てゾーン」、高齢者向けの「ケアゾーン」がある。「ケアゾーン」の住宅には、敷地内にあるサポートセンターに繋がるモニター回線が設置されており、サポートセンターのスタッフは、高齢者の家を定期的に訪ねて様子を見て回り、食事の配布なども行っている。診療所を併設したサポートセンターのスペースは、仮設住宅で暮らす高齢者たちのサロンの役割も果たしており、血圧を計ったり、お茶を飲んだりといった集いの場になっている。さらにここは、仮設住宅に住む高齢者のケアだけではなく、地域のデイサービス(介護保険サービス)事業所にもなっており、仮設団地の外から通ってくる高齢者もいる。
住民による自治会、釜石市の委託を受けたサポートセンター、NPO、大学関係者などで構成される「平田公園仮設団地まちづくり協議会」が、ひとつの「町」としてのコミュニティ作りを目指している。敷地内には24時間放送のコミュニティテレビ局もある。
敷地内で暮らす80歳の高橋フジさん(80歳)は、一時は釜石市外に避難していたが、「やっぱり自分のふるさの釜石が一番。先のことを考えると不安になるけど、サポートセンターで友達に毎日会えるのが楽しみ」と話す。
◆本プレスツアーでは、「平田第6仮設団地」を訪ね、森谷勲 自治会長(72歳)をはじめとする住民の方々に、震災から3年の現状と、今後に向けた想いなどについて聞く。さらに、敷地内のサポートセンターの様子を視察する。
4.小野食品株式会社 開発・営業部チームリーダー 村上 和浩さん
~高付加価値の商品開発で業績を回復した水産加工業者~ (釜石市 )
黒潮による豊かな漁場として知られてきた岩手県沿岸部。津波により県内の水産加工施設の大半が流失または損壊した。釜石市・大槌町の沿岸部で水産加工品の製造販売業を営んでいた小野食品も大きな被害を受けた。工場は半壊し、前月に完成したばかりのコールセンターも流された。社員総出で急ピッチで工場を修復し、震災から3ヵ月後には操業再開にこぎつけたが、売上の大部分を占めていた飲食チェーン向けなどの業務用の販路は、既に別の業者に取って代わられていた。そこで、同社では、震災前から力を入れ始めていた一般消費者向けの直販に一層エネルギーを注いだ。「出荷できるまで待つと言ってくれるお客さんもいた」という。コールセンターで顧客の声を丁寧に拾い上げ、煮魚や焼き魚などの商品開発に反映する地道な作業を続けた。小分けで冷凍され、温めればすぐに食べられるという手軽さと消費者の声を活かしたメニュー開発により、徐々にリピーターを増やしていき、現在は震災前を超えるところまで業績が回復している。
◆本プレスツアーでは、村上さんに震災当時の状況や、復興の道のり、今後への展望や課題について聞く。さらに商品開発の様子も視察する。
5.きのこのSATO株式会社 社長 佐藤 博文さん(53歳)
~地元に雇用を生み出したいと奮闘するキノコ生産者~ (陸前高田市)
http://www.kinoko-no-sato.com/index.html
津波により、18棟あったきのこ栽培施設のうち8棟が流出し、会社事務所も失うという大きな被害を受けたきのこのSATO株式会社。社長の佐藤博文さんは、自宅も津波で流さながらも、がれきで埋め尽くされた故郷を立て直したいと奮起。施設園芸のキノコ栽培であれば海水を被ってしまった土地も有効利用できると、稲田だった周辺の土地を借りていった。とにかく雇用を生みたいとの想いから、現在ではハウスを震災前よりも多い27棟に増やし、従業員も震災前の15名から45名にまで増やした。補助金制度を利用しながらも経営は決して楽ではないが、「小さな町で事業をする人間として雇用を生むことは重要な目標。被災して店を失った商店主なども沢山いる。1人でも2人でも雇用を増やしたい」と佐藤社長は語る。2015年までに50棟のハウスを完成させ、100名の雇用を生むことを目標に掲げている。海から吹く潮風によりシイタケが独特の旨味を蓄えると言われ、その味も評判だ。
◆本プレスツアーでは、きのこ栽培の様子を視察すると共に、佐藤社長を取材。震災当時の状況や復興の道のり、今後への展望や課題について聞く。
~地元の人々の生活を支える商店主たち~ (大槌町)
http://tohoku-monogatari.org/p/fukko04.html
元は被災した大槌北小学校の校庭だった場所に設けられたプレハブの仮設商店街。震災で店舗を失った人々が商いを続けている。飲食店、鮮魚店、美容室、銀行など人々の暮らしに欠かせない店舗が約40集まっている。仮設住宅で暮らす地元の人々のみならず、復興の工事で滞在している人々にとっても憩いの場となっている。
◆本プレスツアーでは、仮設の商店街を訪問。商店街の会長 山崎 繁さん(66歳)から話を聞き、店舗を視察する。
7.かまいしキッチンカープロジェクト
「かまいしキッチンカープロジェクト」は、被災した飲食店の事業主に、移動販売が可能なキッチン付き自動車を貸し出して再出発を支えることを目的にスタートした公益財団法人釜石・大槌地域産業育成センターによる事業。そこから巣立って実店舗を構えた人々が出てくるなか、新たに商売を始めるきっかけとしてキッチンカーを借りる20代~30代の地元の若者も増えてきた。都会からUターンして故郷に帰ってきた30代や、震災で家を失った20歳の若者など様々だ。
◆本プレスツアーでは、キッチンカーが集まる広場を訪問。各店舗の若い経営者から話を聞くと共に、夕食として彼らが作る料理を食す。
~震災の記憶を次世代に引き継ぐ~ (陸前高田市)
陸前高田のインフォメーションセンター(道の駅)であった「タピック45」。津波が屋上にまで迫ったこの施設は、「震災遺構」として敢えてがれきと共に残されている。被災した建物の保存については各地で様々な議論があるが、陸前高田市では市長が早い段階で「(1)これから生きる人々の生活の妨げにならない」、「(2)その場所で死者が出ていない」といった保存する建物に関する指針を打ち出した。
また、「タピック45」に隣接した場所に追悼施設も造られた。震災後、旧市役所や体育館など被災した公共施設は市民が犠牲者を慰霊する場としての役割も果たしてきたが、これらの解体が進むなかで、人々が追悼の意をささげる場所として設置されたのだ。外壁には被災したマツ材が使われ、内部には被災する前と後の写真が展示されている。同市ではこの追悼施設、「タピック45」、「奇跡の一本松」(※9.参照)を含めたエリアを震災メモリアルゾーンとして保存する予定だ。
◆本プレスツアーでは、「タピック45」および追悼施設を視察。遺構として保存する意義について陸前高田市関係者より聞く。
9.奇跡の一本松
~世界各国からの寄付が支えた復興のシンボル~ (陸前高田市)
http://www.city.rikuzentakata.iwate.jp/kategorie/fukkou/ipponmatu/ipponmatu.html
太平洋に面して広がっていた陸前高田の松原には、350年に渡る植林により、7万本もの松の木が茂っていた。日本百景の一つとして知られていたこの松林を津波が直撃、壊滅した。そのなかでたった一本、立ったままの状態で残っている松が発見され、復興への希望を象徴するものとして「奇跡の一本松」と呼ばれるようになった。津波を耐えた一本松だったが、海水によるダメージにより震災から約1年後に枯死と判断された。市では、復興のシンボルとして親しまれた一本松をモニュメントとして残すことを決定。防腐処理や補強を施し、複製した枝葉を付けて再び元の場所に立てた。この作業には多額の費用がかかることから保存の是非を巡っては賛否両論もあったが、日本全国のみならず世界からの寄付によって修復費用1億5000万円の全額が賄われた。
◆本プレスツアーでは、保存するにあたっての議論や寄付の状況などについて陸前高田市関係者より聞きながら、「奇跡の一本松」を視察する。
また、周辺で進む大規模な土地の嵩上げ工事の様子も見る。
【 実施要領 】
1.日程案:2014年2月27日(木)~28日(金)
<1日目: 2月27日(木)(盛岡市、大槌町、釜石市)>
7:30 東京発(新幹線/所要時間:2時間27分)
9:59 盛岡着
10:30-11:30 岩手県 達増知事との会見
(盛岡~大槌間 借り上げバス移動所要時間、途中昼食含む:計3時間30分)
15:00-16:30 大槌高校
16:30-17:30 復興きらり商店街
18:00 ホテルにチェックイン
18:45-20:15 「かまいしキッチンカープロジェクト」取材および夕食
20:20 ホテル泊
<2日目:2月28日(金)(釜石市、陸前高田市)>
8:00 ホテル発
8:30-10:00 小野食品(水産加工会社)
10:30-12:00 平田仮設団地
12:30-13:15 昼食
14:00-15:15 きのこのSATO(きのこ生産者)
15:30-16:30 旧タピック45(震災遺構/追悼施設)
奇跡の一本松
(陸前高田市関係者)
16:30-18:10 バス移動:陸前高田~一ノ関駅(所要時間:1時間40分)
18:40 一ノ関発(新幹線/所要時間2時間15分)
21:12 東京着
2.参加資格: 外務省発行外国記者登録証保持者
3.参加費用: 1人13,000円(全行程交通費、宿泊費、食費を含む)
*お支払い方法、キャンセル料等は、後日参加者にご連絡します。
4.募集人数: 15名(各社ペン1名、カメラ1名、TVは1社2名まで)。
*申し込み人数が15名を超えた場合は、国別の参加者数に上限を設定することがあります。
5. FPCJ担当:吉田 知加(TEL: 03-3501-3405)
6.備考:
(1) 写真・TV撮影に関しては担当者の指示に従ってください。
(2) FPCJはツアー中に生じるいかなる不都合、トラブル、事故等に対して、一切責任を負いません。