社説読みくらべ

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アジアインフラ投資銀行(AIIB)

投稿日 : 2015年04月10日

Vol.1   2015年4月10日

 中国主導で創設されるアジアインフラ投資銀行(AIIB)に欧州の主要国を含む約50か国が参加を表明し、年内の発足に向けて組織の枠組み作りが本格化することになった。アジアの経済発展を支えてきたアジア開発銀行(ADB)を主導する日本と米国は、最後まで慎重姿勢を崩さず、創設メンバーとしての参加を見送った。というのも、AIIBは中国が最大の出資国となり、本部は北京に置かれることから、透明で公正な運営が確保されないかもしれないとの懸念があったからだ。

 

この一連の動きを全国紙のうち4紙が社説で論評している。読売新聞(3月26日付)が「中国が過度の支配力を持ち、中国企業の受注を融資条件とするなど、自国に有利な運営が行われる疑念が拭えない」として政府の対応を評価する一方、毎日新聞(4月1日付)や日本経済新聞(3月20日付)はAIIBの創設に積極的に関与し、内部から建設的な提案をするべきとの立場を取っている。朝日新聞(4月1日付)は、日中政府間関係の脆弱さがAIIBに関する情報収集にマイナスに働いた可能性を指摘しつつも、今後、新銀行への出資も検討すべきだとしている。

 

「参加見送り」に分かれる論評

 

先月末の創設メンバーへの加入申請締め切り直前に、先進7か国(G7)の英独仏伊を始め、多数の国が相次いで参加を表明した。この点に関して、毎日を除く3紙は、「欧州各国には、AIIBを通じて中国との関係を強化し、成長するアジアでの投資機会を増やしたい思惑がある」(読売)と分析している。

 

これに加え、読売は「(欧州各国は)日米に比べて安全保障面で中国と利害がぶつかることが少なく、参加のハードルが高くない事情もあるのだろう」と指摘している。日本が創設メンバーに加わらなかったことについては、「統治体制や運営に関する懸念が解消されない限り、日本が出資国に名を連ねるのは難しかろう」と、政府の対応を肯定した。中国が意のままに拠出金を分配し、アジアでの影響力強化につなげるのではないかとの懸念があるからだ。

 

毎日は、政府が参加を全面否定していない点を指摘し、「それなら、組織の枠組み作りから関与し、自国の提案が反映されるよう、内から発言する作戦のほうが賢明だったのではないだろうか」と疑問を投げかけた。創設メンバーとして、組織体制や議決権の分配方法など重要事項にかかわる協定の策定に加わり、「価値観を共有する国々と連帯し、主張すべきを主張した後、受け入れない内容となれば、国会が承認拒否すればよい」との観点からだ。

 

日経は、安全保障上の警戒感から日米が参加を見送る中、英独仏伊がAIIB構想の支持に回ったことで「先進国の日米欧と中国が対峙するという構図は完全に崩れた」と分析した。流れが変わった以上、日本は現実路線を取り、「AIIBの否定や対立ではなく、むしろ積極的に関与し、関係国の立場から建設的に注文を出していく道があるはずだ」と、新銀行への参加を促している。

 

朝日は、政府が参加見送りの決断をする前に、中国との意見交換が十分に行われたかという点について疑問を呈した。情報収集の不備を窺わせる一例として、麻生財務相が3月31日の国会答弁で、融資基準などについての質問に、中国から「返事は来ていない」と語ったことを挙げた。「日本がAIIBに参加するにしても、見送るにしても、政府はその判断の根拠を説明する必要がある。そのためにも、中国への関与は、希薄であってはならない」と強調している。

 

今後の対応

 

主要国で当初から参加しないのは日本と米国になったが、日本の今後の対応について、各紙はADBとAIIBの協調の必要性などを挙げている。アジアが「毎年少なくとも90兆円のインフラ投資が必要」(毎日)という成長地域だからだ。

 

毎日は、「変化するアジアで日本はどのような地位を目指すのか、中国が影響力を増大させている現実とどう向き合っていくのか」など根本的な問題について、考えていくべきだと提案している。また、新銀行設立がADBの在り方を総点検する機会になっているとし、「ADBかAIIBかの選択でも、ADB対AIIBという対決でもなく、双方の貢献が求められる」と訴えた。

 

日本は、今後このように中国やインドが主催する構想に向き合わざるを得ない場面が増えるとし、慎重に対応するばかりでは「戦略にならない」と、毎日の社説は結んでいる。

 

朝日も、「日本は長年、米国とともに歩むことで(国際金融で)一定の地位を保ってきてはいる」が、中国の台頭で戦後の国際金融の秩序が大きく変わろうとしている今、日本が「どういう立ち位置をとるのか」が問われている、と指摘している。

 

朝日はまた、融資対象の事業が環境破壊や人権侵害を招かないかなどをAIIBが審査するかどうかを注視する必要があるとし、その上で、運営が公正で、その透明性が確保されるのなら、日本がAIIBに出資するのも「選択肢の一つ」だとしている。また、日本が最大出資国になっているADBが、協調融資などでAIIBと連携をとることも「検討に値する」と述べている。

 

日経は、「中国の独走を防ぐためには、まず公平で透明な統治の機構を設計することこそが肝要である」とし、欧州各国など創設メンバーが内部から透明性の担保を働きかけることに期待感を示した。AIIBが中立性の高い「多国籍機関」になるのなら、「日本が資金を拠出して構想に参加する選択肢も排除すべきではない」と、政府を促した。

 

「非参加国の企業が入札に加われないなど、不利な条件を恐れる日本企業も多い。AIIBを健全に育てるためにも、日米中心のアジア開発銀行(ADB)は資金力を増やし、競争と協調の両面で関与を深めるべきだ」と、日経は結んでいる。

 

読売は、「世界経済の基盤である国際金融秩序が、AIIBによって揺さぶられる事態は好ましくない」として、AIIBに「国際機関にふさわしい運営の透明性や公正性を確保する」ように求めた。米国はAIIBを世銀やADBとの共同事業に取り込むことを通じて、審査や融資の適正化を迫る道を模索しており、「日本も米国と協調し、AIIBが国際ルールに基づいて運営されるよう働きかけねばならない」と指摘している。

 

 

※このページは、公益財団法人フォーリン・プレスセンターが独自に作成しており、政府やその他の団体の見解を示すものではありません。

 

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