プレスツアー(案内)

一覧に戻る

実施日 : 2010年11月04日 - 05日

案内: 山口プレスツアー (2010年11月4~5日)

投稿日 : 2013年08月22日

~明治維新発祥の地にみる、新時代を築く原動力: 幕末に自力の近代化に挑戦した「志」が今に活きる~

 

NHK大河ドラマ「龍馬伝」の人気で幕末維新の時代が再び注目されている。失われた10年から続く閉塞感漂う日本は変革できるのか、状況を重ねてみる視聴者も多いのだろう。主人公坂本龍馬は当時、幕府打倒を掲げて明治維新を主導した長州(現在の山口県)と薩摩(現在の鹿児島県)を結びつけた人物として有名だが、一方で同時期に活躍した長州藩の若き改革者たちの話も興味深い。幕末に日本の将来を想いイギリスに密航留学した5人:伊藤博文(初代内閣総理大臣)、井上馨(初代外相)、井上勝(初の鉄道敷設)、遠藤謹助(独自の造幣を推進)、山尾庸三(造船と障害者教育に尽力)。当時イギリスの新聞に「長州ファイブ」(写真)と呼ばれた彼らは新しい国づくりの方策を学び帰国した。明治政府から始まる政治家の系譜は山口県に脈々と受け継がれており、菅直人現首相をはじめ同県出身の総理大臣は9名を数え全国最多だ。そして長州ファイブが挑んだ国づくりは「山口のものづくり」となって今に活きている。

 

本ツアーでは、明治維新胎動の地である萩市を訪ね、萩の近代化産業遺産の世界遺産登録を目指す取り組みから、幕末の萩藩(長州藩)が試行錯誤しながら自力で産業の近代化に挑戦した様子を検証する。更に、環境、エネルギー、高齢化など世界の課題解決を視野に、山口から世界へとフィールドを広げ活躍する中小企業も取材する。

 

<山口県ウェブサイト>

 

 

取材内容

 

1.(株)山下工業所(下松市)
~「夢の超特急」から「次世代の超音速旅客機」へ−ハンマー1本の職人技は時代を超え、時代を変える~

<同社ウェブサイト>

瀬戸内海国立公園を臨む山口県東部の工業都市・下松にある従業員35名の板金加工会社。アジアで初めてのオリンピックが東京で開催された1964年、当時「夢の超特急」と呼ばれた新幹線が10月1日に開業、東京駅を出発した一番列車0系「ひかり1号」の先頭車両は、創業者の山下清登現相談役(72歳)率いる同社の熟練職人がハンマー1本で仕上げたものだった。以来、ほとんどの新幹線の製造にかかわり、日立製作所笠戸事業所への納入分は330両以上、現在東海道・山陽新幹線の主力である700系やリニアモーターカーの実験車両、更には台湾や中国の新幹線も手掛ける。同社は今年初め、このハンマー1本で優美な三次元曲面を造形する「打ち出し板金技術」を駆使して、木製と遜色ない音が出るアルミ製のチェロやマグネシウム合金製のバイオリンをも生み出した。現在、「次世代超音速旅客機」の開発計画にも参画しており、(独)宇宙航空研究開発機構(JAXA)と同研究機の主翼部を製造するための金型を開発した。「職人技を次世代に継承するためにも異分野に挑む」と二代目の山下竜登社長(45歳)が同社の指揮を執る。

 

2.長州産業(株)(山陽小野田市)
~21世紀の技術維新を目指し、半導体、太陽光発電分野に注力する研究開発型メーカー~

同社ウェブサイト

今年創業30年を迎えた同社は住宅関連機器の製造販売からスタート。製品第一号の太陽熱温水器を皮切りに、家庭用風呂釜、給湯機、ソーラーシステム等の商品を次々と発表しつつ、設立5年目には大手半導体製造装置メーカーとの業務提携が成立したことで新たにハイテク分野へも進出。当時の従業員の中から精鋭6名(平成の「長州シックス」?)を大手メーカーに派遣し、最先端技術の習得を図った。独創的な技術(商品)開発を強みとする同社のハイテク機器はアセアン諸国や中国、台湾、韓国で活躍。「低炭素社会」の実現を目指し、太陽光発電システムについては国内の住宅設置用パネルの生産販売を拡充する一方、次世代薄型表示装置として最も期待が寄せられる有機ELディスプレイの大型化へ向けた基盤技術を共同で開発する国家プロジェクト「グリーンITプロジェクト」に参画。半導体製造装置の設計、製造を通じて「真空機器」の分野では業界屈指の技術を誇ると共に、液晶パネル製造装置の製造にも豊富なノウハウを有する。

 

3.TAKE Create Hagi(株)(萩市)
img4cb6d653b10cc~地球にやさしい未来の素材「竹」の潜在能力を北欧デザインが引き出す~

<同社ウェブサイト>

「良質な萩の竹(モウソウ竹)」を活用し、デザイン性に優れた独自の竹製高級家具を開発、2006年の設立から3年で「元気なものづくり中小企業300社」に選定された。山口県は全国で4番目の規模を誇る竹林面積を有し、なかでも萩市周辺は2250ヘクタールの良質な竹林があり、古くから竹の産地として知られている。冬には雪が降り積もる萩の気候の中で育った竹は固く粘りがあることで昔から高級和すだれや札幌、函館のササラ電車に使用されるなど高く評価されてきた。竹はタケノコから2〜3ヶ月で一人前の大きさとなって葉を茂らせ光合成を開始し、木材に匹敵する量のCO2を吸収する、まさに地球にやさしい持続可能な素材だ。同社はそのような竹の潜在能力に着目、更に弾力性や耐久性といった特徴から曲線を可能にする技術を開発し、「竹害」といわれて厄介者扱いされていた竹をフィンランドの若いデザイナーとのコラボレーションにより革新的でユーモラスな家具「magaru」として甦らせた。

 

 

4.萩博物館企画展「萩の近代化産業遺産~世界遺産をめざして」

<同館ウェブサイト>

萩市には、幕末、萩藩(長州藩)が大砲や軍艦などの近代化にとりくんだ遺跡が点在する。なかでも萩反射炉などは、「九州・山口の近代化産業遺産群」の構成資産として世界遺産候補となっており、各方面から注目を集めている。萩藩が大砲や軍艦の近代化に挑戦したのは、19世紀なかばの世界動向に寄るところが大きい。萩藩の首脳部は、アヘン戦争で中国がイギリスに大敗したという情報を得たことにより、欧米列強の圧倒的な軍事力に危機感を抱き、海の守り(海防)を強化する必要に迫られた。その一方で萩藩は、大砲や軍艦といった軍事関連分野だけでなく、医学・ガラス・写真・蒸気機関など近代的な諸科学の振興にも取り組んだ。しかし「鎖国」という条件下で、欧米人に頼ることなく自力で近代化を図ることは、想像以上の困難を伴うものであった。本展覧会では、幕末の萩藩が試行錯誤(トライアル&エラー)しながら、自力で産業の近代化に挑戦した様子を紹介する。萩博物館は2004年に萩開府400年を記念して開館。「自然」「城下町」「明治維新」をテーマに貴重な資料を展示し、以下「萩まちじゅう博物館」の中核(コア)として存在する。

 

 

5.萩市内視察と野村市長によるブリーフィング:「まちじゅう博物館と世界遺産候補」

<萩市ウェブサイト>

<まちじゅう博物館ウェブサイト>

img4cb6e45ade81e萩市は、毛利藩政期260年間に形成された城下町のたたずまいや町割りなどが今なお残り、江戸時代の古絵図がそのまま使える日本で唯一のまち。萩の町に今なお残る城跡や武家屋敷、町屋、維新の志士の旧宅、寺院等は、それぞれが日本を代表する貴重な文化財であり、城下町全体が「面」として残っている。その傍らで近世そのままの空間が市民によって住みこなされ、至るところに息づいている。このように、まちじゅうにある都市遺産を「まちじゅう博物館」としてとらえ、萩にしかない宝物を次世代に伝えていく取り組みを市民と共に進めているのが萩の町だ。今回は、堀内伝統的建造物群保存地区、萩城跡、萩城下町、大照院(写真右)に加えて以下の世界遺産候補を視察した後、野村興兒市長からブリーフィングを受ける。野村市長は京都大学卒業後、大蔵省(現財務省)に入省、国税庁調査査察部長等を務めた後、1993年に萩市長に就任された。

 

<吉田松陰が主宰した松下村塾>

幕末の思想家吉田松陰が若者たちを教えた塾。1854年、伊豆下田で米密航に失敗した松陰は萩に送還され、実家である松本村で幽囚の身のまま後進指導にあたった。木造瓦葺きの50㎡ほどの平屋建ての小屋に近所に住む少年が集まり、多いときには30名ほどがここで学んだ。松陰は「志」を立てて貫くこと、学問を実行に移すことを説きつつ、塾生一人ひとりの個性を尊重する指導を行った。教えたのはわずか1年に過ぎなかったが、明治維新を推進した原動力となった伊藤博文(初代内閣総理大臣)や高杉晋作(倒幕運動推進者、奇兵隊創設)など数多くの人材をこの小さな塾から輩出した。一方で松陰自らは幕府の弱腰外交を厳しく非難し尊王攘夷の実現を目指したが、幕府が断行した「安政の大獄」で江戸に送られ、30歳で処刑された。しかし、その遺志は塾生たちに受け継がれ、日本は9年後に「明治」という新時代の到来をみた。

 

 

 

 

 

<萩反射炉>

反射炉は西洋で開発された金属溶解炉で、固くてもろい鉄を大砲に適した強靭な鉄にかえることができた。萩反射炉は、1856年、洋式の鉄製大砲を製造するための試験炉として築造されたが、実用には至らなかったと考えられており、まさに萩藩の自力による近代化における試行錯誤(トライアル&エラー)の物的証拠であるといえる。現在残っている遺構は、玄武岩積み(上方一部レンガ積み)の高さ11メートルの煙突部分のみ。また、現存する反射炉は萩と静岡県韮山の国内で2ヵ所だけであり、産業技術史上貴重な遺跡である。

 

 

 

 

6.「2010全国伝統的工芸品フェスタin萩」

同ウェブサイトへ

年に一度、国指定の伝統的工芸品を一堂に集めて、その魅力を紹介する伝統的工芸品月間国民会議全国大会(2010全国伝統的工芸品フェスタin萩)が11月4~7日にかけて萩市で開催される。山口県が誇る伝統的工芸品は、約800年の歴史があるとされる硯(すずり)の高級品「赤間(あかま)硯」。室町時代からの歴史を持つ華やかな漆器「大内塗(おおうちぬり)」。約400年前、朝鮮半島出身の陶工によって始まり、茶陶の世界で愛されてきた「萩焼」の3つ。開催期間中は「日本伝統工芸士会作品展」を実施するほか、全国の伝統的工芸品の展示・販売、製作実演などのコーナーが設けられる。

 

*本ツアーは、フォーリン・プレスセンター、山口県、萩市が共催して実施するものです。参加者には経費の一部を負担して頂いていますが、営利を目的とした事業ではありません。

 

【実施要領】

1.日程:2010年11月4日(木)~5日(金)

 

2.参加資格:外務省発行外国記者登録証保持者

 

3.参加費:1人13,000円(東京-現地往復交通費及び、宿泊、食事を含む)
*お支払い方法、キャンセル料等は、直接参加者にご連絡します。

 

4.募集人数:先着順10名(各社ペン1名、カメラ1名、TVは1社2名まで)*申し込み人数が10名を超えた場合は、国別の参加者数に上限を設定することがあります。

 

5. FPC担当者:小泉、吉田(TEL: 03-3501-3405, 5251)

 

6. 備考:
1) 写真・TV撮影は一部制限があります。担当者の指示に従ってください。
2) フォーリン・プレスセンター、山口県、及び萩市は、ツアー中に生じるいかなる不都合、トラブル、事故等に対して、一切責任を負いません。

FPCJとは
取材協力
取材に役立つ情報
活動の記録
外国への情報発信