プレスツアー(報告)

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実施日 : 2017年09月11日 - 12日

実施報告:壱岐市プレスツアー(9月11日~12日実施)

投稿日 : 2017年11月24日

 壱岐市(長崎県)は、長年にわたって大陸と日本の接点として繁栄し、離島ならではの豊かな自然や独自の文化・風習を育んできました。同市は、これらの魅力をインバウンド増加につなげるため、平成26年をインバウンド元年と位置付け、外国人観光客の誘致に注力しています。

 一方で、壱岐では、1955年頃にピークだった人口が、2017年には半数近くにまで減少するなど、少子高齢化や産業の後継者不足などの課題も抱えています。

 そこで本ツアーでは、取材テーマを次の2つに絞り、壱岐が誇る自然景観や観光資源、そして壱岐が社会課題の解決に向けて市民や企業と一体になって取り組む政策を取材しました。

 

 


 

   <取材テーマ> 

  ・歴史と文化に彩られた実りの島

  ・壱岐×地方創生-離島が不利にならない働き方、持続可能な資源管理



 

 



【プレスツアー実施概要】


1.実施日:

  平成29年9月11日(月)~12日(火)

 

2.参加メディア:

  7か国・地域から、10社12名の外国メディアが参加しました。

 【欧州】 ドイツ、スイス

 【アジア】中国、台湾、韓国、ベトナム、バングラデシュ

 

3.プレスツアー取材行程:

  ― ツアー案内はこちら


4.取材内容:


【1日目:平成29年9月11日(月)】

 

(1)壱岐市マグロ資源を考える会

 

 壱岐北部に位置する勝本漁港において、「壱岐市マグロ資源を考える会」会長の中村稔 氏から、壱岐のマグロ漁について説明を受けました。

 中村会長によると、壱岐の基幹産業である水産業は、漁業従事者の高齢化、後継者不足、漁場環境の悪化等で非常に厳しい状況にあります。このような中で、勝本漁港の漁業従事者は、平成25年に「壱岐市マグロ資源を考える会」を設立し、持続可能な資源管理を推進するため、産卵期のマグロの漁獲制限に関する政府への提言や、大間(青森県)・那智勝浦(和歌山県)などの漁業従事者との意見交換を行っています。

 記者は、中村会長および漁業従事者の方々から、普段の漁に実際に使用している釣り竿を見せてもらいながら、壱岐では、魚を追い込んで一網打尽に漁獲する「巻き網」漁法ではなく、「一本釣り」漁法に拘ることで、マグロに与えるストレスを極力抑え、品質保持を可能にしつつ、乱獲を防いでいることの説明を受けました。

 記者からは、「会長の御子息は漁師を継ぐ予定か」「昔と比べて漁獲量が減少した理由」「天然マグロと養殖マグロの違い」「韓国・釜山で開催された中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)での検討結果に関する意見」などについて、活発な質問があがりました。

 

 

 

 

 

(2)筒城浜、鬼の足跡(牧崎公園)

 

 壱岐を代表する自然景観を取材するため、「筒城浜」と「鬼の足跡(牧崎公園)」を訪問しました。記者は、エメラルド色に輝く海や遠浅の白い砂浜、そして長い年月をかけて玄界灘の荒波に浸食されてできた自然の造形に感嘆の声を上げつつ、壱岐の自然の多様性を写真に収めていました。


 

 

 

(3)長崎県立壱岐高等学校

 

 壱岐高校では、積極的な目的意識や意欲を持った高校生に、特色ある学習コースを提供する「離島留学制度」を実施しています。記者はまず、同校の鳥居正洋教諭から、「真の国際人として国際社会で活躍するためには、話者人口が多い英語・中国語を活用でき、自国の歴史への深い教養を身につけることが大切。壱岐は国境の島として、昔から大陸諸国とのつながりが深く、史跡も多く残されている。離島留学生たちは、壱岐や島外の史跡で行う巡検学習などを通して、グローバルな視点を養うことができる。また、親元を離れて生活することで、自立心や向上心が強い生徒が多い」と説明を受けました。

 その後、「歴史学専攻」と「中国語専攻」の離島留学生4名から、壱岐で実際に発掘した化石の紹介や、中国・上海での語学研修について、時おり中国語を交えたプレゼンテーションを聞きました。

 記者は、北海道出身の離島留学生がいることに驚きの声をあげつつ、「壱岐高校で勉強がしたくて、北海道から留学してきたのか」「将来はどのような進路を希望しているか」「離島留学生への経済的サポートはあるのか」などの質問を、鳥居教諭と生徒たちに投げかけていました。また、壱岐の人口減少問題を、離島留学生の誘致という手法で解決しつつ、グローバル人材の育成にも力を入れている壱岐高校の取組に感心していました。

 

 

 

 

(4)白川博一 壱岐市長

 

 壱岐市役所で白川博一 壱岐市長に面会し、壱岐の歴史的・地政学的特徴について説明を受けた後、少子高齢化や産業の後継者部族などの課題を解決するための新しい取組について、話を聞きました。

 白川市長からは、平成29年4月に施行された「有人国境離島法」を受けて、離島で受け継がれてきた食文化や独自の知恵・暮らしなどを、観光資源としてPRしていく施策(日本の国境に行こう!!プロジェクト)の紹介や、民間企業と連携した取組(壱岐なみらい創りプロジェクト)などの紹介があり、先人が残してくれた島の宝を最大限活かし、全国離島のベンチマークモデルとなるべく全力投球していると、力強く語られました。

 記者からは、「大陸から近いというメリットを活かし、どのようなインバウンド政策を行っているか」「海外からの労働者受け入れに関して、どのように考えるか」「北朝鮮からのミサイル攻撃に対して、国境の島として、壱岐はどのように対処しているか」など、具体的な質問があがりました。白川市長は、記者の夕食の場にも同席してくださり、友好的な雰囲気の中で率直な意見交換が繰り広げられました。

 

 

 

 

(5)猿岩

 

 2015年に「日本奇岩百景」(特定非営利活動法人地質情報整備活用機構)に選定された「猿岩」を訪問しました。観光ガイドの伊佐藤由紀子 氏から、「猿岩」は波の浸食によって自然に形成された形が猿の姿に似ていることが名づけの由来だと説明を受け、記者は思い思いのアングルから写真を撮影していました。また、伊佐藤ガイドから、壱岐は「古代からの架け橋」として、平成27年に日本遺産第1号に認定されたことを聞き、記者は興味深そうに質問を重ねていました。

 

 

 

 

【2日目:平成29年9月12日(火)】

 

(6)レオタードでの海女漁

 

 壱岐の八幡半島の海女漁は、保温性の高いスウェットスーツは使わず、レオタードを着用して潜るというユニークなスタイルで全国的に知られています。これは、動きやすさを重視するとともに、資源の乱獲・枯渇を防止し、海の生態系維持を主眼においた持続可能な漁業スタイルともいえます。

 記者は、空気ボンベを着けずに6~10メートルもの深さを素潜りする海女の姿を少しでも近くで見ようと、岸辺から身を乗り出して撮影に臨みました。取材に応じてくれた海女の一人、藤本彩子 氏は、海女の暮らしに憧れて横浜から壱岐に移住した女性です。記者は藤本氏に対して、「移住を決断した経緯」「壱岐での暮らし」「一人前の海女になるまでの修行」などについて、熱心に質問をしていました。

 最後に、海女の皆さんが、採れたてのアワビを焚火で調理し、記者に振舞ってくれました。

 

 

 

 

 

(7)壱岐市立一支国博物館

 

 一支国博物館では、須藤正人 館長が館内を案内しながら、海上交通の要衝として栄えた壱岐の通史を説明しました。壱岐では、大陸との交易の拠点として栄えたことを示す遺跡が数多く出土しており、同館では出土品の実物を実際に自分の手で触れて観賞することができます。記者は出土品を持ち上げ、その重さに驚きながら、写真に収めていました。


 

 

 

(8)壱岐テレワークセンター


 離島という立地をチャンスに変え、離島活性化につなげるため、平成27年、壱岐市は富士ゼロックス株式会社と地域創生連携協定を締結しました。そして、平成29年9月、原の辻遺跡公園内の倉庫をリニューアルしてテレワークセンターが新設されました。

 記者は、富士ゼロックスの高下徳広 氏および壱岐市の篠原一生 氏から説明を受け、壱岐の歴史や自然を生かしたリゾート型テレワークを目指していること、そして島外企業のサテライトオフィスや壱岐拠点開設に伴うスタートアップ拠点、市内在宅ワーカーがクラウドソーシングにより新たな仕事を創出する拠点、起業者の事業拠点としての利用を見込んでいることなどを聞きました。

 記者からの質問では、「富士ゼロックスはもともとハードの会社だが、ソリューションビジネスにも取り組んでいるのか」「テレワークセンターの利用に関して、既にどのくらいの申し込みがあったか」「テレワークに対して、主婦層の関心度はどのくらいか」「高下氏が壱岐に来て生活が変わったことはあるか。都会に戻りたいと思ったことはあるか」などがあがりました。

 

 

 

 

(9)月讀神社

 

 古神道発祥の地と言われる月讀神社。宮司の榊原伸 氏は、「月讀神社はパワースポットとして全国から多くの参拝者が訪れる」と説明し、同時に「ここ30年で氏子の数が減少し、祭礼の存続にも不安が残る」と話しました。記者は、「いつから宮司職に就いているのか」「後継者はどのように決めるのか」などと質問し、歴史ある神社を守っていくことについて高い関心を示していました。

 

 



(10)壱岐の蔵酒造

 

 壱岐島内7蔵元のうち、壱岐の蔵酒造を訪問しました。同酒造では、500年の伝統技法を守りながらも、新しい技術や販売戦略を巧みに取り入れ、撫子や日日草の花酵母を利用した焼酎や、アニメ「新世紀エヴァンゲリオン」をラベルにあしらった焼酎を販売しています。

 記者は、同酒造の福田綺乃 氏の案内で焼酎づくりの工程を取材し、様々な味の焼酎を試飲していました。


 



(11)壱岐しごとサポートセンター(Iki-Biz)

 

 壱岐の最重要施策である産業活性化を実現するために、地方創生の切り札として2017年8月に設立された「Iki-Biz(イキビズ)」。Iki-Bizは、中小企業や個人事業主からの相談を受け、それぞれの強みを活かせるようなビジネスコンサルテーションを行い、売上アップをサポートするワンストップ支援拠点です。

 Iki-Bizのセンター長は、全国391名の応募者の中から選出された、森俊介 氏。森氏からは、「人口や観光客の減少で失われつつある島の活気を取り戻すため、創業支援および中小企業の売上向上を通じた究極の島おこしを行いたい」「すべてのビジネスにはセールスポイントがある。島内の企業はその魅力の発信方法に気づいていないだけ。Iki-Bizは、企業からの相談に丁寧に耳を傾け、手厚いケアを行っていきたい」「島内の限られた企業の売上を伸ばすのではなく、島全体のマーケットを伸ばすことをIki-Bizの目標としている」という説明がありました。

 記者からは、「森氏が東京を離れ、壱岐でIki-Bizセンター長に挑戦してみようと思ったきっかけは何か」「Iki-Bizが8月にオープンしてから、既にどの程度の相談を受けたか」「壱岐でビジネスを展開するにあたり、どのような障壁があり、それをどのように解決できると思うか」「他地域の“Bizモデル”とIki-Bizとの違いは何か」などの質問があがりました。さらに、「1年後、再びIki-Bizを訪問し、壱岐のビジネスがどのように発展したのか、取材してみたい」という感想も聞かれました。

 

 

 

 

5.報道実績:本プレスツアーに関連する報道の一部を御紹介します。

 ※記事のタイトルをクリックすると、報道記事を原文で読むことができます。




◆中央通信社(台湾、通信社)

 9月11日:⽇本離島⾼中全校僅33⼈ ⾼⼀必修中⽂

 (仮訳:わずか33名の日本の離島の高校で、1年生は中国語必修)

 

◆Frankfurter Allgemeine Zeitung(ドイツ、新聞)

 9月16日:Die Reichtümer des Meeres sind nicht endlos

 (仮訳:海の資源は無限ではない)


◆Neue Zürcher Zeitung(スイス、新聞)

 9月17日:Hartes Brot auf der japanischen Insel Iki

 (仮訳:壱岐ー海の資源は有限である)


◆東亜日報(韓国、新聞)

 9月29日:젊은이 유턴・・・ 외지인 유치・・・ 미래 꿈꾸는 활기찬 섬으로

 (仮訳:若者Uターン…島外から誘致…未来を夢見る活気あふれる島へ)


◆Vietnam Television(ベトナム、テレビ)※音声が出ます 

 9月20日:Ama - Những thợ lặn nữ bí ẩn ở Nhật Bản

 (仮訳:海女‐日本の神秘的な女性素潜り漁師たち)


 10月8日:Quy trình chưng cất rượu truyền thống trên 500 năm tuổi của Nhật Bản

 (仮訳:日本の500年以上の伝統を誇る酒の製法

  壱岐焼酎は、日本の大きな焼酎ブランドの一つであり、500年以上の歴史を有している)


◆SBSソウル放送(韓国、テレビ)※音声が出ます

 10月1日:젊은 후계자 찾지 못해 '비상'…日 전통직업 사라지나

 (仮訳:若い後継者を見つけられず「非常事態」……日本、伝統職業が消え去るか)


 10月11日:[월드리포트] 원격 근무에 유학생까지…日 '젊은 섬 만들기' 혈안

 (仮訳:[ワールドリポート]テレワークに留学生まで…日本「若い島づくり」に懸命)


◆新華社(中国、通信社)

 11月15日:日本的故乡

 (仮訳:日本のふるさと)



 


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