プレスツアー(報告)

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実施日 : 2014年08月25日 - 26日

報告:秋田プレスツアー「ここにしかない文化を守り伝える」

投稿日 : 2014年09月17日

秋田県には、古くから受け継がれた伝統芸能や風習、独自の食文化が現在も多く存在していると同時に、人口減少という課題を抱えています。今回、秋田県が誇る文化を守り伝えながら、少子高齢化の課題にも取組む自治体や人々を取材すべく、秋田県主催のプレスツアーを実施しました。本プレスツアーには、台湾、中国、バングラディッシュ、ドイツ、スイス、デンマーク、ブラジルの7カ国/地域から10名の記者が参加しました。(ツアー案内はこちら

 

【1日目】

1.KAMIKOANIプロジェクト秋田」 

人口減少、少子高齢化という日本各地で見られる課題に直面している上小阿仁村。平成の大合併が行われた2005年にも合併せず、独立の道を選びました。現在の人口は約2,600人。中田吉穂村長は、村の特色や歴史を紐解きながら3年目を迎えるアートイベント、「KAMIKOANIプロジェクト秋田」について、開催に至った経緯やその目的などを説明しました。秋田公立美術大学准教授であり、当プロジェクトのディレクターを務める芝山昌也氏は、「村の中にいる人にとっては当たり前で評価していなかったものを、外から来た人やアーティストが評価することによって、村の人にとっても新しい発見がある」と話しました。さらに、飲食店のないアートイベントの会場(八木沢集落)で、特設のカフェを開いて特産品のズッキーニなどを使ったカレーを提供している上小阿仁村婦人会のメンバーにも話を聞きました。武石悦子婦人会会長は、衛生面など気を遣うが、続けてほしいという声が励みになると語りました。記者たちからは、アートイベントによる効果や、若者の定着に向けた産業振興策などについて質問が挙がりました。

 

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2.KAMIKOANIプロジェクト秋田」 旧沖田面小学校会場視察

廃校のため7年間閉じられていた旧沖田面小学校を訪問しました。ここは「KAMIKOANIプロジェクト秋田」開催のためにその鍵が開けられ、レジデンス作家が作品を制作する作業場や作品展示の場として使われています。記者たちは芝山氏の案内で、レジデンス作家として村に滞在しながらアート作品の制作に関わっている田中望さん、衣川泰典さん、陳誼嘉さんにインタビューをしました。記者からは、作家の方々に対し、「上小阿仁村に来て作品を作ることで学んだことや、作品への影響はあったか」など、上小阿仁村という場所に実際に来て感じたこと、またそれをどのように作品で表現しているのかを問う質問が多く聞かれました。京都出身で今回が2回目の参加となる衣川さんは、「村の人々から話を聞くことで、村の風景の見え方が変わった」とコメントしていました。

 

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3.八木沢番楽 

八木沢集落に長く受け継がれていた伝統芸能「八木沢番楽」は、20年前に後継者不足から一度途絶えてしまいました。多いときには200人が住んでいたといわれる八木沢集落の人口は、現在9世帯16名にまで減少しています。しかし、県外からやってきた地域活性化応援隊の水原聡一郎さんや桝本杉人さんの協力もあり、地元の小中学生に伝え教え、2010年に復活するに至っています。

かつて番楽が盛んに行われていた時代を知る八木沢番楽保存会会長の佐藤敏雄氏は、学校の文化祭や地域の催し、そして「KAMIKOANIプロジェクト秋田」と発表の場が増えたとコメント。記者からは、「20年間途絶えていた間にやり方を忘れなかったか」、「昔は男性だけが演じていたのか」といった質問がありました。次に、村の小中学生、保存会の皆さんが八木沢番楽を披露。(演目は「露はらい」、「鞍馬」、「曽我兄弟」。)その勇壮な演技にカメラやマイクを向ける記者の顔には驚きと笑顔が見えました。演技後、演者である小中学生に対し、記者から、番楽に参加した理由、やりがい、将来村に残りたいかなど多岐に渡る質問がありました。ある記者からは、「素晴らしい演技なので、50歳になっても続けてほしい」という声も上がりました。八木沢番楽の余韻を残した会場で、記者は特産品のほおずきで作ったジュースも堪能しました。

 

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4.「KAMIKOANIプロジェクト秋田」 八木沢会場視察 

「KAMIKOANIプロジェクト秋田」会場の一つである八木沢集落には、野外にアート作品が点在しています。空き家や稲を干すのに使われていた木枠がアート作品として生まれ変わり、田園のなかに存在しており、記者は上小阿仁村の緑豊かな風景と新鮮な空気のなかで、村ならではのモチーフによって生み出されたアートを見て回りました。

 

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2日目】

5.株式会社諸井醸造

食生活の変化や後継者不足で生産者が次々と減っていた秋田の魚醤「しょっつる」。醤油メーカー諸井醸造の諸井秀樹社長は、郷土の味を守るため、ハタハタ100%の魚醤の開発に取り組んでいます。記者は諸井醸造を訪れ、ハタハタを漬け込んだ樽を視察し、その独特の匂いや、長い年月をかけて発酵する過程を見て回りました。また、諸井社長から、しょっつるの特徴や、イタリアで魚醤による地域おこしに感銘を受けた話など、しょっつるに対する思いについて聞きました。記者からは、生産量や売上など経営に関連する質問が多く出ました。また、モツァレラチーズや野菜スティックにかけたしょっつるを試食した記者からは、その奥深い味わいに「おいしい」という感想が聞かれました。また、新たに開発されたしょっつるパウダーを使った「しょっつるソフト」が地元では評判だと聞いて、記者から驚きの声が上がる場面もありました。

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6.なまはげ館

解説員からなまはげの4つの由来などについて説明を受けながら館内を視察しました。なかでも60集落から集められた110体のなまはげ装束と150枚のお面の展示は圧巻で、記者たちは熱心にシャッターを切っていました。記者からは、「女性もなまはげになれるか」、「他県にはないのか」といった質問が投げかけられました。館内の一角で面彫り氏の石川千秋氏がなまはげ面を手彫りで作っている様子も視察しました。

 

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7.男鹿真山伝承館IMG_0383

なまはげ館に隣接する男鹿真山伝承館を訪問。同館は移築された古民家で、なまはげが家を訪れ、主人と問答する大晦日のなまはげ行事を忠実に再現するパフォーマンスが行われています。記者もカメラを片手に、その様子をビデオやカメラに収めました。「子供はよく勉強しているか」、「嫁は朝早起きするか」となまはげが迫り、それを主人がなだめる場面や、なまはげが大きな音を立てて四股を踏む場面は迫力満点で、記者の顔に驚きの表情が浮かんでいました。

 

 

 

 

8.真山なまはげ伝承会 

IMG_0396男鹿真山伝承館で真山地区のなまはげ行事の再現を視察した後、実際に真山で地区のなまはげを守り伝える活動を行っている伝承会会長の菅原昇氏に話を聞きました。子供の人数が減ったこともあり、なまはげの訪問を受け入れる家庭が減っていることが大きな課題として挙げられました。菅原氏は、小学校でなまはげ装束の作り方や行事の意義について教えるなど、継承に向けて幅広い活動を行っています。記者からは、受け入れる家庭が減った理由や女性が担い手になり得るかといった点について質問が投げかけられました。昔は未婚男性だけがなまはげに扮することができ、結婚するとなまはげにはなれなかった。しかし、担い手不足のなか現在は既婚男性も可能になってきており、時代の流れに伴った変化が見られます。このようななかで、かつては面に触ることも禁じられていた女性もなまはげに扮することが許されるようになるのかという点に外国記者は関心を寄せていました。最後に、菅原会長がなまはげのうなり声を披露し、記者から拍手が起こりました。

 

 

 

9.男鹿市立男鹿北中学校

プレスツアーの最後は、中学生によるなまはげ太鼓を取材しました。なまはげ太鼓は男鹿のシンボルであるなまはげをモチーフとした和太鼓と踊りのパフォーマンスで、男鹿市内にいくつもグループがあります。男鹿北中学校の生徒数は、20年ほど前は280名だったが、現在は全校で37名にまで減少。そのうち、15名がなまはげ太鼓クラブに所属しています。記者は、体育館の舞台の上で堂々となまはげの踊りと演奏を披露する生徒たちに感銘を受けている様子でした。演奏後、記者からは生徒に対し、「男鹿に残り住み続けたいか」、「将来の夢は何か」など多岐に渡る質問が出ました。将来、男鹿市でなまはげ太鼓の奏者になりたい、と話した生徒の答えに記者から拍手が起こる場面もありました。

 

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