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九州電力が川内原子力発電所を再稼働(2015年8月17日)

投稿日 : 2015年08月17日

注目すべき海外メディアの日本報道

(8月9日~12日)

 

2015年8月17日

 

九州電力が川内原子力発電所を再稼働、各国メディアが報道

 

8月11日午前、九州電力は、鹿児島県薩摩川内市にある川内原子力発電所1号機を再稼働したと発表した。東日本大震災後の福島第一原子力発電所での事故を受けて、日本では国内すべての原発が停止。地震や津波を想定してより厳しい規制基準が設けられて以降、初めて再稼働となる。14日には発電と送電を開始し、徐々に原子炉の出力を上げて来月上旬には営業運転に入る見込み。日本は、約2年もの間続いた“原発ゼロ”の状態から脱することとなった。

 

福島の事故を経て初めての原発再稼働というだけあって、各国メディアも広く関心を寄せて報じている。中央日報(韓国)は11日付けで、「日本、およそ2年ぶりに『原発ゼロ』終了」を掲載し、日本が23カ月ぶりに「原発時代」に再び入ったと伝えた。ガーディアン紙電子版(英国)は、9日付けのジャスティン・マッカリー記者による薩摩川内発の記事で、「福島の事故後、初めての原発再開に意見が割れる日本」と報じ、今回の再稼働は、福島の事故以降、原発推進政策を訴えてきた安倍総理の勝利だと伝えた。ウォール・ストリート・ジャーナル紙電子版(米国)は、アレクサンダー・マーティン記者が東京発の11日付けの記事で「日本、2年ぶりに原発を再稼働」を掲載し、日本には稼働可能な原発施設が43あるが2013年9月以降は一切稼働していないこと、福島の事故後に安全対策の基準を大幅に引き上げたが、その基準をクリアしている施設も現状5つしかないと報じた。ニューヨーク・タイムズ紙電子版(米国)はジョナサン・ソブル記者が11日付けで、「日本、再稼働で原子力産業の回復へと踏み出す」と報じ、原発は長期的に見ると日本経済には必要だが、福島の事故を受けて永久に廃止すべきか、長い議論を重ねてきたうえでの再稼働であった旨を伝えた。

 

日本ではいまだ原発再稼働に対し市民から反対の声も多く、その様子を報じているメディアも多い。ロイター通信(米国)は11日付けで、アーロン・シェルドリック記者加藤一生記者が東京/薩摩川内発で「日本、安倍政権の原発政策の試しとして原子炉を再稼働」と報じ、日本の原発監視機関は新基準は福島の事故の再発防止を意味するものとしているが、抗議者はこれに納得しておらず、川内原発付近に寝泊まりしながら抗議活動をしている男性の声なども伝えた。また、CNN電子版(米国)は11日付けで「日本、福島の災害後初の原発再稼働」を掲載。日本はエネルギー供給の約3割を原発に依存してきたが、福島の事故以降は高価な天然ガスや石炭を大量に輸入して賄ってきたこと、世論は再稼働には一貫して否定的であることなどを報じた。また、ル・モンド紙電子版(フランス)の11日付けのフィリップ・メスメール記者の記事では、川内原発の外でプラカードを掲げて抗議活動をする市民の写真が大きく掲載され、「日本、市民の反対にもかかわらず原発再稼働」と題し、市民の抗議の声を伝えるとともに、現状は原発なしでエネルギー燃料のコスト増を食い止めることは難しいという電力会社側の分析も紹介した。

 

そのほかにも、BBC電子版(英国)は12日付けで、「日本はなぜ、川内原発を再稼働させたのか」を掲載。2011年の福島での事故以来、初の再稼働が国内で大きな議論を呼んでいるとしつつ、原発停止と再稼働の仕組みを写真とともに詳しく紹介。資源に乏しい日本は原発なしでエネルギー供給を維持するのは難しく、電力会社は政府に川内原発の再稼働を働き掛けてきたこと、さらにルパート・ハイエス東京特派員の取材によると、現在25の原発が再稼働を申請しているが、市民の反対が大きくすぐには難しいのではないかとの分析を伝えた。また、フィナンシャル・タイムズ紙電子版(英国)は11日付けの東京発のレオ・ルイス記者の記事「川内原発、非難の渦中再開」で、再稼働は日本の電力会社、安倍総理、財界などにきわめて重要であったと伝えるとともに、原子炉の建設などを手掛ける株式会社日本鉄鋼所の佐藤育男社長のインタビューを掲載。「この再稼働は、三菱、東芝、日立など原発産業の日本の主力企業の世界的イメージの改善、自社の利益にもつながる」とのコメントを紹介した。

 

 

<関連リンク>

外務省「世界が報じた日本(海外主要メディアの日本関連報道)」

http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/sekai/index.html

 

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