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注目すべき海外メディアの日本報道(2013年3月29日)

投稿日 : 2013年03月29日

「注目すべき海外メディアの日本報道」では、日本発のものを中心に、日本のみなさまに知っていただきたい日本関連の報道をご紹介し、できるだけオリジナルの記事(Web版)へのリンクも貼っております。

 

注目すべき海外メディアの日本報道
(3月12日~3月22日)

2013年3月29日

 

 1. 世界初の海底メタンハイドレードからのガス生産成功に注目が集まる

 

3月12日に日本政府が、愛知・三重県沖合海底のメタンハイドレート(通称「燃える氷」)から世界で初めて天然ガスの試験生産に成功したと発表した。海外メディアは、ガス採掘に伴う海洋生態系への影響や、採掘されたガスの大気中への放出による環境への影響を危惧する声も紹介しつつ、今回の成功を、特に日本および世界のエネルギー供給事情との関連で報じた。13日付デイリーテレグラフ紙(英国)掲載の記事は、今回の試験生産成功を、日本の今後100年のガス需要を満たすとともに、世界のエネルギー見通しに大きな変化をもたらすものと報道。日本では福島原発事故以降、殆どの原子力発電所が稼働を停止しており、多くの企業が主たる代替エネルギー源である液化天然ガス(LNG)の輸入コストにより多大な損害を被っている等とした上で、今回の成功は高額な輸入燃料に依存する日本の現状を終わらせるかも知れないと報じた。ニューヨーク・タイムズ紙(米国)も、同日付で田淵広子記者による東京発の記事を掲載。メタンハイドレートからのガス産出は、世界最大のLNG輸入国であり、再びエネルギー供給を原子力発電に依存するかを巡って議論が交わされている日本にとってはとりわけ重要であると報じ、技術面で乗り越えるべきハードルはあるが、安定的なガス生産を確実なものにしていきたいとの茂木経産相の発言を伝えた。同日付ファイナンシャル・タイムズ紙(英国)は、ジョナサン・ソブル東京特派員による記事「日本が“燃える氷”の可能性に沸く」を掲載。関係省庁のコメントも織り交ぜながら、資源に乏しい自国にエネルギー面での独立をもたらし得るメタンハイドレートへの日本政府の並々ならぬ期待を報じつつ、今後ガス抽出を商業化していく上では生産コストの高さが課題になると指摘した。

 

2. 安倍総理のTPP交渉参加表明に英米主要紙が反応

 

16日付ニューヨーク・タイムズ紙(米国)田淵広子記者による東京発の記事「日本、TPP交渉へ参加」を掲載した。記事は、国内の農業団体等がTPP交渉参加に強固に反対しており、安倍総理は大きな政治的リスクを取ったことになると報道。一方で、ショックを和らげるために、安倍総理は曖昧ながらも米国から「米を含む日本の幾つかの農産物はTPP交渉の対象外とする」との言葉を取り付けたが、こうした例外を強く主張すれば、自国製品の他のTPP加盟国市場へのアクセス拡大を交渉する上で困難に直面する可能性もある等と指摘した。また、同日付ファイナンシャル・タイムズ紙(英国)掲載のジョナサン・ソブル東京特派員等による記事「安倍総理、TPP交渉への参加を明言」は、日本はTPP加盟国の中で第二の経済大国であり、日本の加盟はTPPの影響力を高めることとなろうと報じた。

 

3. 欧州各紙が伊東豊雄氏のプリツカー賞受賞を報じる

 

日本人建築家の伊東豊雄氏が「建築界のノーベル賞」として知られる「プリツカー賞」を受賞した(日本人としては6人目の受賞)。19日付ガーディアン紙(英国)の記事「満足することを知らない建築家にプリツカー賞」は、伊東氏のこれまでのキャリアと業績を紹介しつつ、受賞を受けての「一件の建築デザインを終える度に『自分の力不足』を痛切に感じ、それが次のプロジェクトに挑戦するエネルギーとなる。だから、私は建築スタイルを固定化しないし、自分の作品に決して満足しない」との同氏コメントを掲載した。19日付リベラシオン紙(フランス)記事も、建築の可能性を模索するような挑戦を40年間に渡って国内外で行って来たことが評価された、と伊東氏の受賞を報道。20日付ル・モンド紙(フランス)記事は、他の著名な日本の建築家が好んでコンクリートを利用するのと違って、伊東氏はメタルを利用した作品が多く、クリエイティブな自由さを常に求め、大変洗練された技術・意表をつく技術を用いてきたと紹介。伊東氏の東日本大震災被災地復興への協力にも触れた。

 

4. 福島原発での停電を米国主要紙等が報道

 

3月18日に発生した東京電力福島第一原子力発電所での停電が、各国メディアでも報じられた。20日付ニューヨーク・タイムズ紙(米国)掲載のマーティン・ファックラー東京支局長による記事「停電は福島原発の脆弱性を示唆する」は、今回の停電は、日本政府と原子力業界が国民に多数の原発を稼働させる必要性について納得させようとしている最中に起こったとした上で、停電により「福島原発内で重要な役割を果たしている安全システムは、先の事故で危険が最も高まっていた中で設置されたその場しのぎのものであり、同原発には未だ危険性が残っている」との専門家の見方が支持されたように思えると報じた。同日付ウォール・ストリート・ジャーナル紙(米国)も、大辺暢記者による記事を掲載し、今回の停電は、大量の燃料棒を抱える4号機の燃料プールを巡る懸念を再燃させるものであり、国民の信頼を取り戻し、震災の影響を受けていない原発を再稼働させようとしている東電の信頼性を傷つけ得るものだと報じた。

 

<関連リンク>
外務省「世界が報じた日本(海外主要メディアの日本関連報道)」
http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/sekai/index.html

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