注目の日本報道

一覧に戻る

注目すべき海外メディアの日本報道(2012年12月13日)

投稿日 : 2012年12月13日

1.内政

(1)12月4日付ウォールストリート・ジャーナル紙(米国)の「安倍氏は日本を再生できない」でマイケル・オースリンAEI日本部長は、日本経済のファンダメンタルズは、自民党政権の失敗と輸出主導の成長への過度の依存により衰え、民主党政権下で更に悪化したと分析。安倍氏は止血策があると主張するが、その提言のほとんどは、成長をもたらさなかった1990年代からの自民党によるケインズ的実験の繰り返しであるとした。また安倍氏はTPP参加の可否を明言していないが、安倍氏は農村部の反対を押し切ることはできない可能性が高く、TPPに参加できなければ日本の重要性はさらに低下すると指摘。さらに安倍氏にとって最大の難関は壊れた政治システムの中で政策を推し進めることであり、説得的政策要綱なしにいかにうまく統治し日本を再生させるかを予見するのは困難だと評した。
http://online.wsj.com/article/SB10001424127887323401904578156601335278008.html

 

(2)11月28日付ビジネス・タイムズ紙(シンガポール)の社説「日本に興味深い時代が訪れようとしている」は、総選挙での政権奪回に向け自民党が勢いを増すのに対し、民主党は目新しい政策もなく政権委譲に向け準備を整えているように見えると述べた。自民党は、金融・規制緩和、新規需要創造、日銀に対する強硬姿勢等あらゆる手段を駆使して経済成長率3%を目指し、衰退しつつある日本に希望の光を灯しているが、仮に安倍政権が中国に対して強硬に出るならば、政府と日銀の争いは比較的大した問題ではないのかもしれないとの見方を示した。

 

(3)ル・モンド紙(フランス)のフィリップ・ポンス東京特派員は、12月5日付の「有権者の政治不信は拡大」で、石原前東京都知事のセンセーショナルな言動は、日本の政界の状況を端的に物語っていると述べた。また日本政治の専門家である米政治学者ジェラルド・カーティス氏の指摘「日本政治の麻痺により、自民党も民主党も優秀な人材による自らの党の刷新に失敗した。政治の方向性は、明確な政策を打ち出し、それを有権者に伝えられる政治家がいてこそ見えてくるものだが、今の日本にはそれがない。」を引用、外国人には日本の政治が不透明かつ退屈で理解し難いとし、小政党画策の中、国民の半数以上はもはや伝統的な政党を支持しておらず、有権者は魅力に欠ける候補者からの選択を迫られていると分析。さらに日本はアジアで最も古い民主主義の国だが、政界よりも社会の方が時代に応じて早く変化したため、政治家が国民の声を代表することに無理が生じていると論じた。

 

2.その他

(1)フィナンシャル・タイムズ紙(英国)は12月4日、「特別レポート:日本 技術と革新」題する日本特集を発行し、エネルギーや電気自動車、ロボット等に関する12の記事を掲載。ジョナサン・ソブレ東京特派員の「惨事の後、日本は新しい平常を模索」では、福島原発事故から2年近く経ち、日本が直面する技術的な課題はより明白に、より困難になってきているとし、日本の選択が「原発ゼロ」であれ「ほぼ廃止」であれ、事実上すべての化石燃料を輸入している国が、経済や環境に壊滅的なダメージを与えずに原子力エネルギーを置換できるかは疑問であると述べた。また「iPS細胞研究の受賞、共同研究の利点を示唆」では、英国人ジョン・ガードン博士と京都大学山中伸弥教授のノーベル賞共同受賞について、現代日本の研究調査における素晴らしい証左となるとし、受賞決定後の政府の再生医療への公的資金援助、文部科学省の研究助成への対応、さらに「天然資源の少ない日本にとって、未来は科学に依る」との山中教授のコメントを紹介した。

 

(2)インターナショナル・ヘラルド・トリビューン紙(米国)は11月30日、来年再開される六ヶ所村での核燃料再処理操業について、フランク・N・フォン・ヒッペル米プリンストン大学教授、田窪雅文氏による論稿「日本の核に関する過ち」を掲載。同稿は、核燃料の再処理はテロの標的になることに加え、結果的に世界を核拡散へと導くと指摘。日本は自国の備蓄状態は安全だというが、一度でもテロリストが盗み出したら甚大な危険を生むことになる上、核再処理は、核を持とうとする国に格好の隠れ蓑を提供すると論じた。また現在非核国の中で唯一再処理を実施している日本に加えて、韓国と南アフリカが再処理権の取得を主張している点を挙げ、日米両国は世界規模で再処理を抑制し、既存の使用済み核燃料の安全な処理を主導していくべきであると述べた。
http://www.nytimes.com/2012/11/29/opinion/japans-nuclear-mistake.html

 

(3)9名が死亡した笹子トンネルでの天井崩落事故については、フィナンシャル・タイムズ紙(英国)、ニューヨーク・タイムズ紙やワシントン・ポスト紙、CNN(いずれも米国)、KBS (韓国)等の各国大手メディアが報じた。中でもインターナショナル・ヘラルド・トリビューン紙(米国)は「日本、トンネル整備まで手が及ばない可能性」(12月4日付)と題するAPの記事を転電し、「公共事業への支出削減を掲げた2000年代の政治改革の中で、政治家は必要なプロジェクトと不要なプロジェクトを選別することに失敗した」とする専門家の意見を引用、結果として日本には老朽化したインフラ対策のための予算がないと指摘。日本は、膨大な負債以外にも震災復興や原発事故対策などに予算が必要であり、このような問題に注意や資源が割かれていないとも伝えた。またMBC(韓国)は、日本には安全対策面における信頼があるが、見せかけの点検、「安全不感症」が蔓延しているとの批判が出ており、インフラ崩壊元年という新造語まで登場したと報道した。

 

<関連リンク>
外務省「世界が報じた日本(海外主要メディアの日本関連報道)」
http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/sekai/index.html
(了)

FPCJとは
取材協力
取材に役立つ情報
活動の記録
外国への情報発信