注目の日本報道

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注目すべき海外メディアの日本報道(2012年12月4日)

投稿日 : 2012年12月04日

1.内政

(1)ストレーツ・タイムズ紙(シンガポール)の19日付の社説「試練が日本の次の指導者を待ち受ける」は、日本は膨大な債務を抱えているが、日本の次期政権は経済の立て直し、震災からの早期復興、加えてさらに根深い急速な高齢化という問題に立ち向かわなければならないと指摘。他方では、中国との貿易が再び傷つくことがないよう日中関係の安定化も課題だが、安倍氏や石原氏の登場により日本はこれまでより「右ぶれ」するものと見られることから、どう見ても、日本の次期政権は国内外で難しい試練に直面することになるだろうと論じた。

 

(2)朝鮮日報(韓国)の社説「『平和憲法を改正しよう』に変わった日本世論を注視すべき」(20日)は、憲法9条改正への賛否を問う東京新聞の世論調査で改正賛成が改正反対を上回ったことを取り上げ、その背景について、長い経済不況と中国との関係悪化とともに日本国民は挫折感を感じており、日本の「極右政治家」がそのような国民感情からナショナリズムに火をつけたとの見方を示した。さらに、日本は現在も世界第3位の経済大国なのであり、中国との国力競争に過敏に反応して北東アジアの平和と繁栄のための積極的・肯定的な役割を放棄してはならない、と論じた。
http://news.chosun.com/site/data/html_dir/2012/11/19/2012111902539.html

 

(3)フィナンシャル・タイムズ紙(英国)のミュア・ディッキー東京支局長は、「日本政治の回転ドアが再び回り始める」(11月21日)で、日本の総理大臣の頻繁な交代の背景について、有権者が頻繁に行われる参院選を政権与党を懲らしめる手段として用いていることや、日本の政党は英国などの政党と比べて統制がとれていない(例えば民主・自民各党には貿易自由化に断固賛成の者から断固反対の者までが含まれている)ことなどを指摘。その上で、野田総理が短い在任期間中に、ねじれ国会や党内の内紛という困難にもかかわらず、消費税増税法案を成立させたことを評価し、「野田総理の実績は、誰が日本の政治を率いるかが重要であること、そして、たとえ執権期間が短くとも足跡を残せることを示した」と評した。
http://www.ft.com/intl/cms/s/0/df51ef1a-3321-11e2-aabc-00144feabdc0.html

 

2.国内経済

(1)フィナンシャル・タイムズ紙(英国)は20日付の社説「日本政府の策略」で、安倍自民党総裁が「日銀の独立性」を政治争点化していることを取り上げ、たしかに日銀にも責められて然るべきところが多々あるものの、政治的リーダーシップの欠如が経済改革を長いこと放置してきたことに目を向けずに日銀の政治からの独立性を経済停滞の原因とするのは誤りだ、と批判。中央銀行の独立性の維持は金融政策の政治化を避けるための最良の方法で、総理大臣が頻繁に変わる国にとっての大切な安全装置なのであり、いま日本に求められているのは政界と中央銀行の両方でのリーダーシップだ、と論じた。
http://www.ft.com/intl/cms/s/0/dab82c32-3252-11e2-b891-00144feabdc0.html

 

(2)レ・ゼコー紙(フランス)が掲載したヤン・ルソー記者による東京発の記事「幸福な景気後退の国、日本」(20日)は、ユーロ圏の将来を巡る議論では日本がしばしば「避けるべき悪い例」として取り上げられているが、フランスと比較すれば日本は平均寿命が長く、乳児死亡率・殺人率・失業率はいずれも低いと指摘。失業率が低い水準にとどまっている背景には、日本では景気後退局面になると労組の合意により企業が柔軟に労働コストを調整できることなどがあると指摘し、その結果、日本は経済成長がない中でも、欧州諸国がうらやむような調和を確保できている、との見方を示した。
http://www.lesechos.fr/opinions/analyses/0202394520921-le-japon-ou-le-pays-de-la-recession-heureuse-512372.php

 

(3)人民日報(中国)の劉軍国東京特派員は、「日本、『失われた30年』の訪れを懸念」(22日)で、日本の今年10月の貿易赤字が10月としては過去最大となり、日本人の中には日本経済低迷のさらなる長期化を懸念する声も多いと報じた上で、日本政府にとっての最善の経済対策は、量的緩和の拡大ではなく、中国との関係改善を進め、対中輸出の拡大、そして中国人観光客増加による内需の拡大を図ることだ、と主張した。
(日本語版)
http://j.people.com.cn/94476/8031143.html

 

(4)ウォール・ストリート・ジャーナル紙(米国)のチェスター・ドーソン記者による「円高の陰で戦う日本企業」(24-25日付)は、日本の輸出企業が急激な円高に苦しむ中、オンリーワンの技術を有する特定の分野に特化した中小企業の中には輸出を増やしているところもあり、例えばハイブリッド車に用いられるセンサーの分野で世界市場をほぼ独占する多摩川精機(長野県)は、好調な輸出に支えられ日本国内での生産を拡大し続けていると報じた。同記事は、円高の中でも成功している中小の輸出企業の例として、多摩川精機のほか、ボールペン先端用のバネで世界市場の70%のシェアを誇るミクロ発條、直径わずか0.2ミリの皮下注射針を製造する岡野工業なども挙げている。

 

3.外交

(1)ニューヨーク・タイムズ紙(米国)のマーティン・ファクラー東京支局長は、27日付の「太平洋地域での中国の台頭への対応として、日本が軍事的影響力を拡大」で、日本はこれまで、平和主義を逸脱することになることへの懸念から、米国からの地域の真のリーダーになることを求める呼びかけを拒否してきたが、今年に入って東南アジア諸国への軍事援助の提供や自らの防衛力の誇示を始めたと伝え、その背景については、日本自身が中国への脅威を共有する国々との関係構築を必要としていることや、東南アジア諸国においても中国の軍事的脅威の前に安全保障ニーズが高まっていることなどを指摘した。
http://www.nytimes.com/2012/11/27/world/asia/japan-expands-its-regional-military-role.html?pagewanted=all&_r=0

 

(2)28日付のフィナンシャル・タイムズ紙(英国)は、ジョセフ・ナイ・ハーバード大学教授による論稿「日本のナショナリストへの転換は弱さの表れ」を掲載した。ナイ教授は、日本の世論はナショナリストの方向にシフトしているのは確かだが、これを1930年代のような軍国主義の台頭として不安視する必要はないと指摘。真に懸念すべきは、日本があまりに弱く内向きになり、世界に対して積極的に貢献することをやめてしまうことだと論じた。
http://www.ft.com/intl/cms/s/0/c6b307ae-3890-11e2-981c-00144feabdc0.html

 

4.その他

(1)ガーディアン紙(英国)のジャスティン・マカリ―東京特派員は、「福島の食べ物の素晴らしさが放射能による汚染を退ける」(17日)で、安全性が確認された福島産の食材を提供している東京・高井戸の居酒屋「47 DINING」を取り上げ、郷里の農家や漁師を応援したいとの思いで営業を続けて来たという福島県いわき市出身の店主の思いや、食事が美味しいから頻繁に来ているが安全性については検査済みなので心配していないとの常連客の声などを伝えた。
http://www.guardian.co.uk/world/2012/nov/16/fukushima-food-nuclear-disaster

 

<関連リンク>
外務省「世界が報じた日本(海外主要メディアの日本関連報道)」
http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/sekai/index.html

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