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注目すべき海外メディアの日本報道(2015年7月31日)

投稿日 : 2015年07月31日

注目すべき海外メディアの日本報道

(7月23~25日)

 

2015年7月31日

 

日経がフィナンシャル・タイムズを買収、各国メディアが報道

 

日本経済新聞は7月23日、英国の経済紙フィナンシャル・タイムズ(FT)の発行元であるフィナンシャル・タイムズ・グループを買収することを発表した。もう一社の候補であった独のメディア企業アクセル・シュプリンガーとも直前まで交渉していたが、親会社である英国の教育・メディアグループ・ピアソンが同日に開いた取締役会を経て、最終的に日経の買収が決定。買収額は8億4,400万ポンド(約1,600億円)におよび、対海外企業の買収では、日本のメディアとして過去最大規模となった。

 

FTは1888年創刊の老舗の大手メディアで、1957年にピアソンが買収。国際的な視野で経済界の動向に鋭く切り込んでおり、ビジネスマンを中心に世界各地に読者を有する。1995年には電子版に世界でも先駆けて取り組み、有料購読者は約50万人におよぶ。一方、長年にわたって日本の経済紙をけん引してきた日経は、2010年から着手した電子版の有料購読者数が43万人に達しているほか、2013年には「Nikkei Asian Review」を創刊し、アジアの経済情報の英語での発信に力を入れている。

 

この2大経済紙の動きに各国メディアも注目し、連日報道を続けている。ニューヨーク・タイムズ紙電子版(米国)は23日付けで、ジョナサン・ソブル記者らの「日経、フィナンシャル・タイムズをピアソンから13億ドルで買収」を報じ、近年の他紙の買収と比べものにならない、目の飛び出るような買収額だと伝えている。ロイター通信(米国)も23日付けで「日本の日経、フィナンシャル・タイムズを13億ドルで買収」を掲載。日経の喜多恒雄会長の「フィナンシャル・タイムズとパートナーシップを組めることを誇りに思う。2社はジャーナリズムの価値を共有している」といった発言を紹介した。

 

英国内でも衝撃が広がっている。BBC電子版(英国)は23日付けで、「フィナンシャル・タイムズ、ピアソンから日経に8億4,400万ポンドで売却」を報じ、ピアソンのジョン・ファロンCEOが「約60年にわたり、ピアソンはFTの誇り高き経営者であったが、モバイルやソーシャルメディアが急速に普及する中で、メディアとして転換期にいるのも事実」とし、「グローバルかつデジタルなニュース会社の一部となることが、最善の方法である」との発言も紹介した。エコノミスト誌電子版(英国)は24日付けで「日経によるフィナンシャル・タイムズの驚くべき買収」と題した東京発の記事を掲載。双方のメディア文化の違いに加え、昨今の日中関係の緊張を背景として、FTグループはこれまで中国の政治指導者と比較的うまく付き合ってきたが、今回の買収が中国での評価に影響を与えうると伝えている。ガーディアン紙電子版(英国)は23日付けの「フィナンシャル・タイムズ、日本のメディアグループ日経に8億4,400万ポンドで売却」の記事で、創刊127年、ロンドン金融街の象徴でもあるFTが英国ではあまり知名度のない日経に買収されたとして、その動きに注目していることを紹介した。

 

また今回の買収について、FTの編集権の独立が保たれるのかという懸念も多く報道されている。FT紙電子版(英国)は24日付けで東京発の稲垣佳奈記者らの記事を掲載し、「日経、FTの編集権の独立を尊重することを約束」と報じ、喜多会長の東京での記者会見の写真と共に、「編集権の独立は維持される。FTは今後もFTであり、何も変わらない」との発言を紹介した。アイリッシュ・タイムズ紙電子版(アイルランド)は、東京発のディビッド・マクニール記者による24日付けの記事で、FTの新オーナーは主張の強い記事の掲載には消極的という評判」を掲載。日経は金融関係を堅実に報道する評価もある一方、過去にオリンパスの巨額損失という大スキャンダルを報じなかった事例を伝えた。両社の報道文化の違いから、今後のコミュニケーションが課題となるとの有識者の声を紹介している。

 

アジア各国のメディアも、各社で速報を流している。中央日報日本語電子版(韓国)は24日付けで「英国の経済新聞FT 、日本の日経が買収」東亜日報日本語電子版(韓国)は25日付けでFT 紙買収の日経、世界のビジネスメディアが2強体制に再編」朝鮮日報日本語電子版(韓国)は25日付けで「日経がFT買収に投じた1600億円、高いのか安いのか」人民日報日本語電子版(中国)は24日付けで「日経新聞社が英紙『フィナンシャル・タイムズ』買収」中国日報電子版(中国)は24日付けで、「フィナンシャル・タイムズの買収、誰も予想をしなかった取引」などの記事を掲載した。

 

 

<関連リンク>

外務省「世界が報じた日本(海外主要メディアの日本関連報道)」

http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/sekai/index.html

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