プレス・ブリーフィング(報告)

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実施日 : 2016年09月20日

報告: 「日中関係の現状と展望」高原明生 東京大学 法学部教授/公共政策大学院副院長

投稿日 : 2016年10月07日

●DSC039499月20日、FPCJでは東京大学・法学部教授/公共政策大学院副院長の高原明生先生をお招きし、「日中関係の現状と展望」についてお話頂きました。同ブリーフィングには、中国、香港、台湾、韓国、ベトナム、米国、オーストリアなどの外国メディアの記者18名と駐日大使館関係者20名を含む43名が参加しました。

 

まず高原教授は、2014年11月の日中首脳会談以来、日中関係に改善をもたらしている四つの要因(安全保障、経済、国際関係、内政)は今日も継続しているとしながらも、それらに全く変化がないと言うわけではないと述べました。変化が見られたのは中国の内政においてで、習近平の権力基盤は必ずしも固まっていないと思わせる出来事がいくつか起きたと説明しました。まず、習政権は、大胆な経済構造改革を進めようとしているものの、ゾンビ企業の淘汰による失業問題の深刻化による社会の不安定化を理由に、地方政府から抵抗が起きていることを挙げました。経済停滞が深刻な東北部の遼寧省では経済成長率がすでにマイナスであるとし、国有企業も多いため改革を最も大胆に進めなければならない省であることが、同省の人民代表大会代表が多数汚職で解任されたことの背景にある可能性に触れました。また、汚職腐敗の実態追及は習政権の特徴的な政策だが、他方で官僚たちが労働意欲を失い、そのことが経済減速に拍車をかけるという問題があると述べました。また、習近平のことを党の「核心」と呼び始める地方指導者が出てきたものの、この動きが定着しないまま消滅したことに触れ、これは習近平の権威にとって大きな打撃であり、来年の第19回党大会に向けて高層指導者たちの政治的な綱引きが始まったと解釈できると説明しました。さらに3月には、公式メディアに近いネットで習近平の辞任を要求する公開書簡が発表された他、最近では、地方人事を巡りさまざまな動きがあるなど、来年の党大会に向けて権力闘争の動きが激しくなる時期に入っていると述べました。

 

また、日中両国間の問題については、日本は、紛争は平和的な手段で解決すべきと一貫した姿勢を保っているのに対し、中国は今年6月の中国軍艦および8月の多数の中国公船による尖閣諸島沖接続水域等への侵入など、対日圧力強化の行動が見られたと説明。その強硬な言動の狙いおよび原因として、1.日本の対中批判を抑制するため 2.激しく行動することで、第三国が中国に恐れをなして、中国の味方につくのではないかとの思惑があるため 3.国内を団結させる(共産党が一番恐れているのは国内批判)ため 4.ナショナリズムの高まり 5.海軍および海警の組織的利益 6.習近平の性向の6点を挙げました。

 

しかし、そうした緊張関係が続く中、今月9月5日の第三回の安倍―習会談で、日中関係改善に向けた前向きな発言による双方の基本認識が確認されたとし、今後については、2008年の東シナ海の共同開発の合意に基づく交渉再開や、海空連絡メカニズムの早期運用開始に関する協議の重要性を指摘しました。

 

最後に、今後の日中関係の展望についてのポイントとして、11月のAPECで第4回首脳会談が実現するか、中国側の行動の自制を含む、9月の首脳会談の合意事項が実行されるかを挙げました。また、日中韓の首脳会談で建設的な話し合いが行われるかどうかも注目すべき点とし、いずれにしても、鍵は中国の自制であり、中国の国内情勢がこれからどう動くのか、権力闘争の激化や経済減速が進み、社会がさらに不安定化した場合は、大きな懸念材料になると締めくくりました。

 

記者からは、北朝鮮の核問題が日中関係に与える影響、中国の対日強硬政策が日本の政治に及ぼす影響、東シナ海における中国の目的等について質問が出ました。

  

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