プレス・ブリーフィング(報告)

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実施日 : 2016年06月13日

報告:「骨太の方針」に見る、経済再生と財政健全化の行方(高橋進(株)日本総合研究所理事長)

投稿日 : 2016年06月24日

報告写真6月13日、FPCJでは(株)日本総合研究所の高橋進理事長をお招きし、「『骨太の方針』に見る、経済再生と財政健全化の行方」についてお話頂きました。同ブリーフィングには、オーストリア、中国、ドイツ、イタリア、韓国、シンガポール、英国、米国などの外国メディアの記者14名と駐日大使館関係者18名を含む44名が参加しました。

 

まず高橋理事長は、日本経済について、経済状況が悪化しているということではないが、安倍政権の下で始まった日本経済の好循環が弱くなっているのは間違いないと述べ、世界経済、特に中国を中心とした新興国経済の減速が、日本企業のマインドに大きな影響を与えており、賃上げや設備投資に慎重になっていると指摘しました。日本経済の課題としては、新市場を開拓し、もう一度需要を拡大しなければならない一方で、供給面にも問題があるとし、例えば、需要が少し拡大しただけで、人口減少や少子高齢化を背景として労働力不足が顕在化したことを挙げました。

 

高橋理事長は、このような人口動態の見通しの下、アベノミクスが掲げる国民一人一人が活躍できる「一億総活躍社会」の実現に向けた「新・三本の矢」のうち、新たに打ち出されたのが、第2の矢の少子高齢化対策(子育て層への支援)と、第3の矢の介護問題への取組であると指摘。これらを通じて、労働供給の減少を緩和することで所得や消費が増え、第1の矢(600兆円経済の実現)も強化されるという「成長と分配の好循環」の実現を目指すと説明しました。また、「一億総活躍社会」が実現すれば、900万人程度の雇用が増え、多様な人材が確保され、少子高齢化問題の克服につながる。そのためには、「同一労働同一賃金」「長時間労働の是正」「高齢者の就業率向上」の三本を柱とした働き方改革が最重要課題の一つであると強調しました。また、成長戦略を加速するためには、IoTや人工知能、ロボットなどを活用した第4次産業革命を推進することで、労働力不足が想定される日本経済の生産性向上が大きなテーマであると述べました。

 

また、TPP等に対応した海外市場との連携強化については、2つの目玉となる政策として、行政手続きの抜本的な簡素化と世界最速級の日本版高度外国人材グリーンカードの創設を挙げました。

 

最後に、消費増税再延期の理由の一つである個人消費の低迷については、30代の賃金は上昇傾向にありながらも、社会保障の負担増による将来的不安から消費マインドが上がらないとし、子育て層の消費の弱さを指摘しました。また、低所得の高齢者の消費の弱さも顕著ではあるものの、年金受給者でもパートなど仕事に就いている場合は消費が落ちないことが分かっており、そういう意味でも、高齢者雇用を促進すべきだとしました。また、今後、個人消費の活性化策が間違いなく必要だとし、賃上げと同時に子育て層への支援強化が不可欠であり、大胆な経済対策の必要性を強調しました。

 

質疑応答では、マイナス金利が財政健全化にどのような影響を与えているのか、賃上げにつながる労働条件や労働環境の改善に対する対策等について多くの質問が挙がりました。

 

配布資料

 

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