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情報発信で復興を支える被災地の地域メディア:宮城編 part 1 (2013年4月23日)

投稿日 : 2013年04月23日

【ウォッチ・ジャパン・なう vol.39/FPCJ】

2013年04月23日

 

情報発信で復興を支える被災地の地域メディア:宮城編 Part 1

 

前号では、東日本大震災により大きな被害を受けながらも、地域に根差した情報媒体として懸命に活動する岩手県沿岸部の地域メディアをご紹介しました。

 

今号および次号では、「被災地の地域メディア紹介」の第2弾として、宮城県の石巻市の3メディアと、同県気仙沼市役所が震災後に新たに開始した英語版Facebookページでの復興情報発信の取り組みをご紹介します。「地域の情報を地域の人に」をモットーに古くから地域を見つめてきたメディアや、世界中から多大な支援を受けたことをきっかけにグローバルな復興情報発信を目指して新たに立ち上げられたメディアなど、震災を機に、被災地ではそれぞれの立場から積極的に地域の現状を発信する多様な動きが生まれています!

 

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まず初めにご紹介するのは、震災からおよそ1年半が経過した2012年9月に創刊された石巻発の英字メディア、「Rolling Press(ローリング・プレス)」誌(発行元:石巻の地域・国際貢献サークル「フォーラ夢」)です。同誌は、毎号カラー10ページで、1月、4月、7月、10月の年4回発行(各号300円)。年間購読も可能で、日本国内のみならず国外からの申し込みにも対応しています。毎号、後程ご紹介する「三陸河北新報社」「石巻日日新聞社」の2社から提供される記事の英訳を「My story of 3. 11」と題して掲載しているほか、復興に向けた動きや再開した店舗の情報などを伝えるオリジナルの記事も複数掲載しています。同誌発行は、取材・記事の執筆から翻訳、編集に至るまで、被災地から意欲的に情報発信していこうという石巻内外のボランティアによって支えられています。

 

発行責任者を務める石巻市内の会社経営者、荒川元一さんは「2011年5月の連休以降、震災ボランティアの数が減る中で、地元の人間が驚くほど、多くの外国人が継続してボランティアとして石巻に来てくれました(※)。・・・震災から一年後にパネリストとして参加したシンポジウムで、アメリカのメディアで復興の中身については殆ど報道されていないと知り、『何か被災地から情報を発信する媒体があるべきだ』と考えました」と、Rolling Press創刊のきっかけを語ります。
※荒川さんは、「ウォッチ・ジャパン・なう」Vol.6でご紹介した「外国人ボランティア・ツアー」にも言及していらっしゃいました!

 

現在、同誌では4月に予定している第2号の発行に向けて準備を進めています。同号では、再開した魚市場の現状を特集する予定で、同誌では、「今後もタイムリーなものや、外国人ボランティアが多く関わって復興した店舗の情報などに焦点を当てて行きたい」としています。

 

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ローリング・プレス誌に記事提供を行っている石巻の地域紙の一つが三陸河北新報社です。東北6県で発行されている「河北新報」の姉妹会社として設立された同社は、6~8ページから成る日刊紙「石巻かほく」を47,000部発行。同紙は、河北新報に折り込まれる形で石巻圏(石巻市、女川町、東松島市)の読者に配布されており、多岐にわたる地域の情報を日々届け続けています。

 

震災時、同社事務所には1階の床上約60センチまで津波が押し寄せました。同社は、停電により、翌3月12日付および13日付の新聞発行を断念。その後、作成した記事・写真データをUSBに保存して仙台市内の河北新報社まで車で運ぶことで、わずか2ページの紙面であったとのことですが、やっとの思いで、3月14日付で新聞発行を再開したそうです。現在は編集システムをリニューアルし、4~6ページで40,000部を発行しています。

 

 

震災後、三陸河北新報社では、人々の被災経験やその後の復興の歩みを積極的に発信しています。2011年5月には、「特別報道写真集 大津波襲来 石巻地方の記録」を出版。また、2012年8月には、紙面で連載していた津波生存者の九死に一生の体験を取りまとめた証言集、「津波からの生還-東日本大震災・石巻地方100人の証言」を旬報社(東京)から出版しました。同社では証言集の英語版の発行も企画しているそうです。

 

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同社ではさらに、震災発生から2年の節目である今年3月11日に合わせ、ホームページをリニューアルしました。地域で暮らす猫たちが大切にされていることで有名な、同市の田代島にちなんで作られた新ページ「石巻かほく メディア 猫の目」は、一見、新聞社のホームページには見えないユニークなページです。同社デジタルメディア戦略室では、「人間と深くかかわってきた猫のように、地域に密着した視点で地域の情報を発信したい」と、新ページに込めた思いを語ってくれました。

 

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次号では、ローリング・プレス誌に記事提供している石巻のもう一つの地域紙「石巻日日新聞」と、気仙沼市が震災後に始めた英語のフェイスブックページを利用した情報発信の取り組みについてご紹介します。お楽しみに!

 

(Copyright 2013 Foreign Press Center/Japan)

 

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