ウォッチ・ジャパン・なう

一覧に戻る

理想のオフィス候補地は山の中:徳島発「ICTを活用した集落再生プロジェクト」(2012年1月30日)

投稿日 : 2012年01月30日

【ウォッチ・ジャパン・なう vol.18/FPCJ】

2012年1月30日

 

理想のオフィス候補地は山の中:徳島発「ICTを活用した集落再生プロジェクト」

 

img4f25ff706947b

 

徳島県では65歳以上の高齢者が住民の半数以上を占める「限界集落」が35.5%と全国平均の約2.3倍にもなっています。これにより、「住民が共同で行う行事の実施が困難になる」、「地元に働く場所がないため人材が流出する」、「空き家の増加する」などの課題が出てきています。

 

img4f260cce259da

しかし、この一方で、これらの課題克服のために、集落が有する「資源」を見直し、具体化する取り組みも始まっています。その取り組みの一つが「ICT(Information and Communication Technology:情報通信技術)を活用した県外企業によるサテライトオフィスの展開」です。同県では、地上デジタル放送化によって電波が届きにくくなり(デジタル波は、電波が一定以下の弱さになると画面がまったく映らない)、新たにアンテナを建てるよりも光ファイバーを敷き詰めることの方が安価であったため、全県に光ファイバー網を張り巡らせました。その結果、「限界集落」と呼ばれるような場所に至るまで光ファイバー網が整備され、全国的にも非常に進んだインターネットの環境が整っています。

 

img4f25ff62b8f36

 

既に2010年に東京のIT会社が徳島市の西約30キロに位置する神山町の築70年の古民家にサテライトオフィスを開設し、テレビ電話や社内Twitterを用いて東京のオフィスとミーティングを行い、東京にいる時とまったく同じ開発環境で仕事をしています。澄んだ空気やきれいな水、心が癒される自然風景などの豊かな地域資源は、仕事のパフォーマンスの向上に寄与しているようです。また社員のブログには、休日にボランティア活動を始めとする地域活動に積極的に参加し、町おこしや活性化に貢献している様子が記されています。

 

昨年の9月には、首都圏企業約10社が参加した「限界集落」を含む過疎地域での実証実験が行われ、10月~12月には第二弾も実施されました。実験では、本格的なサテライトオフィスの展開に向けて運用コストやセキュリティの確保などの検証が行われました。12月中旬にはサテライトオフィス体験ツアーが実施され、首都圏企業数社が全国屈指のブロードバンド環境に触れました。

 

img4f25ff51c91a9

これまでにない、まったく新しい集落再生モデルの構築は、「ソーシャルメディアを活用した情報発信により、特産品の販路開拓、観光振興」、「県外企業と地域のコラボによる新たな雇用創出の可能性」、「地元の子どもたちや若者への働きかたのヒント」になるのでは、と期待されています。

 

東日本大震災とそれに続く福島第一原発事故の後、リスクの分散からオフィスを首都圏以外の場所へ移したり、家族と過ごす時間を増やしたいとの理由で今までの働き方を見直したりする動きが見られます。今回ご紹介した徳島発のビジネスモデルは、今後日本企業に広く受け入れられていくでしょうか。

 

 

 

写真提供:徳島県

地図の出典:Map of Japan with highlight on 36 Tokushima prefecture.svg(ウィキペディア)

(Copyright 2012 Foreign Press Center/Japan)

FPCJとは
取材協力
取材に役立つ情報
活動の記録
外国への情報発信