Opinions

一覧に戻る

「核軍縮・不拡散の時代の広島・長崎の取り組み」 (公益財団法人広島平和文化センター 理事長 小溝 泰義)

投稿日 : 2014年04月07日

4月11日からの「軍縮・不拡散イニシアティブ」(広島市)を前に、広島の被爆体験を継承、国内外の平和研究機関などとの連携、平和思想の普及と国際相互理解・協力を推進する、公益財団法人広島平和文化センターの小溝泰義理事長にお話しを伺った。

 

 

小溝理事長 顔写真原爆投下を経験した広島と長崎は、核兵器のない平和な世界を構築する上で重要な役割を担っており、広島と長崎の市民は、平和を願う日本国民の大多数の声を象徴しています。

 

私たちは、平和を粘り強く訴える被爆者に心から敬意を表するとともに、その尊い訴えや祈りを現実政治に活かすべく努力する責任を感じています。「他の誰にも二度と被爆の苦しみを経験させてはならない。」との被爆者の人道的訴えと彼らの心からの平和への願いが国際社会、とりわけ若者と共有されることを願っています。

 

現存する1万7千もの核兵器が今なお世界に脅威をもたらしています。大量殺戮の脅し(いわゆる「核抑止」)により平和を維持しようとする仕組みには持続可能性はありません。核兵器廃絶のためには、核抑止の考え方そのものを変える必要があります。安全保障の1要素として軍事力は必要かもしれませんが、核兵器のような残忍な大量殺戮の兵器が必要なはずはありません。国際社会に相互理解を進め同じ人間家族の一員であるとの帰属意識を育むことによって、世界の指導者が勇気を持ってより人間的な安全保障体制の構築に向けて行動する環境が整うと信じます。

 

被爆者の平均年齢は78歳に達します。被爆者の証言を直接聞ける機会はもう長くありません。被爆者の方々が元気なうちに次の世代にかれらからのメッセージを伝え、メッセージの中核部分が世代を超えて継承される体制を整えておくことが必要です。どのような未来像を描き、創造していくかを決めるのは若者たち自身ですが、年長者は、経験を通じ、彼らに助言をすることはできます。若者たちが被爆者の人道的なメッセージの核心部分を理解すれば、自分たちの手で築く平和への道の有益な示唆を得ることができるでしょう。一方、地域紛争に接する中で、若者の一部には、軍備拡大を歓迎する層が生まれてきているのも事実です。将来、彼らがより適切な選択をし、平和な社会を築けるよう助言する必要があります。

 

私たちの啓蒙活動の中核には平和首長会議があります。平和首長会議は、核兵器のない平和な社会実現への志を共有する自治体の長の団体として、1982年広島・長崎の両市長のイニシアティブで発足しました。若い世代と一緒に働くと同時に、国連並びに赤十字・赤新月社運動、平和NGO、国会議員、文化、芸術、スポーツ等の分野の著名人等、市民社会の幅広い団体との連携を強化しています。2014年3月現在、加盟都市数は6000を数えるに至りました。広島・長崎の両市長は、率先して、世界中の市民社会に平和の大切さを説いています。

 

広島と長崎市民の声が、平和を願う世界の市民、特に若者たちに勇気とひらめきを与えることができますよう願っています。

FPCJとは
取材協力
取材に役立つ情報
活動の記録
外国への情報発信