3.11 東日本大震災関連情報

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実施日 : 2011年04月27日

報告(プレス・ブリーフィング):大震災後の日本経済(2011年4月27日)

投稿日 : 2013年08月22日

img4dc746ddd88a0FPCJでは、安倍・福田内閣で経済財政政策をご担当された大田弘子・政策研究大学院大学教授をお招きし、日本経済の復興への道筋についてお話し頂きました。参加者は、海外プレス14名の他に在日外国大使館関係者、FPCJ賛助会員を含む計45名でした。

 

大田教授は冒頭、「ここからどのような形で立ち直っていくかが日本経済全体を左右するほどの意味をもつ。日本経済は震災前からさまざまな問題を抱えていた。単に元に戻すだけの復興では問題の克服にはならない。被災地の再生を、日本経済の成長への突破口にするという
ぐらいの発想で復興に取り組む必要がある」と述べました。

 

大田教授は、今回の大震災の日本経済への影響について、政府の推計によれば、(1)「ストック」(災害によって日本から失われた資産)の損害は16~25兆円、(2)GDPの変化として表れる「フロー」は被災地での生産減少と、被災地以外のサプライチェーンを通じた影響を合わせて今年度1.4兆円から2.5兆円のマイナスとなること、(3)一方で復興需要があるため年度を通してみればGDPは2.4兆円から6.4兆円のプラスになることなどを説明。しかし同時に、原発事故による電力不足や風評被害などの影響はここには含まれていず、その影響は未知数であり、また長引くほど二次的影響は大きくなるので一刻も早い収束が望まれると述べました。

 

大田教授は、90年代の経済危機に対する政府の対応の拙さが日本経済の長期低迷を招いたとして、その反省の上に立ち、今回の危機下における政府の役割として、(1)景気対策(景気刺激策)には「3T(timely, targeted, temporary)」が重要、(2)財政政策と金融政策の連携が必要、(3)短期の需要刺激策と合わせて中期の構造改革が必要、という3点を指摘。今回の復興を新たな成長につなげる出発点にする観点からは「(3)中期の構造改革」が特に重要であるとし、復興の青写真を描く政府の復興構想会議に対して、自治体間の境や国と地方の垣根を越えたグランドデザインを描くことや、漁業・農業・医療等の産業分野で被災地を「改革特区」として大胆な制度改革に取り組むことなどを求めました。

 

その上で大田教授は、復興に際して重要な点として以下の4つを挙げました。
(1)日本経済の弱みは、グローバル化の遅れ、サービス産業の生産性の低さ、硬直的な労働市場。農業を国際化に耐え得る産業へと立て直す、人口集積を進めサービス産業を活性化するなど、復興への取り組みを日本経済の弱みを乗り越える一歩にしていくことを考えるべきだ。
(2)企業の海外移転を抑制するには、経済拠点としての魅力を高めることが重要。TPPの交渉参加を遅らせてはならないし、法人税率も引き下げるべき。経済のグローバル化を正面から受け止め、国内の構造改革を進める以外に日本経済の生きる道はない。
(3)今回の震災による首都圏での電力不足は、10の電力会社が各地域の発電・送電を独占する日本の硬直的な電力市場のあり方によって増幅された。原発事故が収束した後、単に原発見直しや東電だけの問題にとどめず、本格的な電力市場の改革が必要だ。
(4)復興のための財源調達が必要となるが、その一方で復興費用を除いた財政については2015年度までにプライマリー赤字を半減させるという目標を目指すべき。社会保障制度改革を含め、財政再建のビジョンを明確にすることが必要だ。

 

最後に大田教授は、「今回の大震災で取り組むべき課題は、日本経済全体の課題に直結している。大震災によってスタート地点ははるかに厳しくなったが、危機感をもって復興に取り組むことができれば成長への長い停滞を抜け出す第一歩になるだろう」と講演を結びました。

 

質疑応答では、日本における構造改革実現の見通し、復興財源確保に向けた民主党マニフェストの見直しなどに話が及びました。

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