首長による情報発信

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川崎市 福田紀彦市長 (2016年12月)

投稿日 : 2016年12月26日

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東京都に隣接する、人口約150万人の川崎市。少子高齢化・人口減少が進む日本において、過去10年間の人口増加率は10%超。さらに出生率(25年連続)、婚姻率(30年連続)がいずれも政令指定都市で第1位となるなど、若い世代に人気の都市として存在感を増しています。今年7月、“多様性”を市の成長につなげる新しいブランドメッセージを打ち出した福田紀彦市長に、人口増加による課題、新しい産業や観光を生かす街づくりについて聞きました。

 

(聞き手:FPCJ 杉田明子事務局長)

 

 

 

■ 「多様性」や「違い」を大事に

 

― 川崎市の新しいブランドメッセージ“Colors, Future!”にどのような思いを込められたのか、お聞かせください。

 

IMG_1130川崎市が92年前に発足したときの人口は、わずか4万8千人ほどでした。今は大きな街になりましたが、川崎生まれ・川崎育ちという人は少ない。国内外から人が集まり、文化や産業を発展させてきたのが川崎市の歴史なのです。

 

8年後に市制100年を迎えるにあたり、どんな街でありたいかを考えたとき、「多様性が可能性や力を生む」「違いを豊かさとして認め合う」という価値観が大事だと考えました。

 

― 今年6月には、市内で計画されていたヘイトスピーチのデモに対して、公園の使用を不許可とされる判断を下されました。多様性を尊重する方針が、具体的な行動となった一例でした。

 

川崎市には、約3万5千人の外国籍の方が住んでいます。こうした外国籍の方、あるいは障害を持った方など何らかのサポートが必要な方は、今後も増え続けていくでしょう。そういった方々に寛容なまちでない限り、将来の成長はないと思ってます。ヘイトスピーチだけにとらわれるのではなく、多様性を重視し、いろいろな立場の方が住みやすい地域づくりを進める。こういった方針のもとでは、当然、ヘイトスピーチはないということなのです。

 

近年、ローカルな都市が抱える課題は、グローバルな課題にもなっています。格差の問題、超高齢社会など、自治体同士が知恵を出し合って乗り越えることが求められます。先日、中国のある都市から、「介護問題に対応するために川崎市のモデルを共有してほしい」という依頼がありました。また、介護ロボット研究に力を入れているデンマークのオーデンセ市とは、ロボット産業等に関する覚書を結びました。こうした新しい都市間連携がイノベーション(技術革新)を生み、世界の都市が抱える問題解決の糸口になるのではと期待しています。

 

■ 若者に選ばれる街

 

― 川崎市は過去10年間の人口増加率が10%を越え、特に若い世代の転入が多くなっています。この背景をどう分析されていますか。また、保育所の確保等、新しい課題解決への取り組みをお聞かせください。

 

子ども(保育園)大きな視点で考えれば、どの国でも首都圏に人口が集中する傾向はあります。東京と横浜に挟まれた川崎市は交通の便が良く、地政学的に有利です。一方で、利便性だけではない理由もあると考えています。川崎市の人口は昨年1年間で1万4千人増えましたが、その半数以上が20~30代で、圧倒的に若者に選ばれています。子育て関係の施策には、最重要課題として取り組んでいます。私が2013年に市長に就任する前は、待機児童が438人と県内で最も多い自治体でしたが、2015年は0人、2016年4月時点では6人という状況です。

 

具体的な施策としては、国の基準で「認可外」の保育施設でも、市の基準を満たせば「川崎認定保育園」に認定して保育の質を保証しています。認定保育園は認可保育施設に比べ料金が高い傾向があるため、その差を埋めるために最大2万円を補助しています。最近では、最初から川崎認定保育園に申し込む保護者も増えています。施設を増やすというハード面の整備だけでなく、一人ひとりの保護者に丁寧に対応し、子育てをしながら働ける環境を整えることが重要です。

 

■ 重化学工業から中小・ベンチャー企業まで

 

― 川崎市には、鉄鋼・石油関連などの大手企業から、中小・ベンチャー企業まで幅広い企業が立地しています。これからの日本の産業・研究開発を後押しするために、川崎市としてどのような施策を展開していますか?

 

鉄鋼、石油などの重化学工業が、これからも日本やアジアの経済の中で欠くことができない存在であることは変わりません。また、川崎を含む京浜工業地帯がその中心であり続けたいと思いますが、各企業の施設が老朽化してきた時に、もう一度川崎を再投資先として選んでもらえるよう、企業と課題を共有しながら、地方自治体としての役割を果たしていく必要があります。

 

一方で、これからどの分野が新しい産業として成長していくかを考え、支援することも大事です。川崎市の産業政策の3本柱である、生命科学(ライフイノベーション)、環境(グリーンイノベーション)、福祉(ウェルフェアイノベーション)の分野ですでに関連企業の集積が進んでいるので、連携をさらに強めていきたいと思います。

 

― ライフサイエンス・環境分野の研究開発から新産業創出を目指す「殿町国際戦略拠点キング スカイフロント」での今後の展開を教えていただけますでしょうか。

 

キングスカイフロント①顕微鏡キングスカイフロントは、世界最高水準の研究開発から新産業を次々と創出することを目指す、オープンイノベーション拠点です。異なる産業や企業がここで掛け合わさり、ぶつかる貴重な環境です。例えば、製薬会社が、がんやアルツハイマーの治療薬などを生み出すのに、異業種とスムーズにコラボレーションして研究・開発できる環境があれば、革新的なイノベーションが生まれるかもしれない。iCONM(ナノ医療イノベーションセンター)を中心に、開かれた「知の交差点」として、川崎が日本の中核を担っていく覚悟でやっていきます。

 

また、川崎に立地する企業の99%以上は中小企業で、ロケットに搭載する部品などさまざまなものづくりが行われています。既存の中小企業も、新たなものづくりに参画することで、イノベーションの一端を担えると考えます。

 

国際環境技術展― 環境分野の優れた技術を有する企業が多いのも特徴です。毎年、環境技術関連企業・団体のビジネスマッチングの場として、2月に「川崎国際環境技術展」を開催されていますが、これまでの成果と、2017年の計画をお聞かせください。

 

川崎国際環境技術展は今回で9回目になります。“公害の街”だった川崎が環境の技術やノウハウを蓄積し、現在は国内外のビジネスマッチングを行っていることが、ようやく定着してきました。2016年には、約15,000人の方が来場され、海外からも35カ国から約250人が参加しました。これまで商談に結び付いた事例は多くありますが、今後マッチングの精度をもっと上げるために、もっと事前の調整を行うなどの工夫が必要だと感じています。

 

■ 外国人観光客への情報発信

 

― 東京へのアクセスの良さに加え、2020年には羽田空港との連絡道路の完成が予定され、外国人観光客のさらなる増加が見込まれます。インバウンド受け入れの課題と、海外に発信したい川崎の魅力を教えてください。

 

羽田空港から京急川崎駅までは、わずか13分です。羽田空港でトランジットのために時間を持て余してしまう外国人観光客に、ぜひ川崎に来てご飯を食べたりしてほしい。そのための体制を整えたいと思っています。

 

ところが、市内にある飲食店約4000店のうち、多言語対応している店を調べると、たったの7店という結果が出ました。そこで、2015年に株式会社ぐるなびと「地域活性化連携協定」を結んで多言語化を進めた結果、現在は約200店に増えました。行政がお金をかけなくても、ビジネスをつなげることができる一例です。

 

市内でもやや交通が不便な北部地域に「藤子・F・不二雄ミュージアム」がありますが、3年ほど前まで10%台だった外国人観光客が、22%と急増しています。アクセスが悪くても、環境が整えば観光客は集まるということです。空港からアクセスがよい川崎駅周辺だけではなく、市全域で、外国人観光客の「行ってみたいな」という気持ちを受け入れる、ハードとソフト両面の整備が必要です。

 

外国人観光客川崎を知ってもらうために工夫を凝らした情報発信をしようと、今年5月、ムスリム圏で人気のインドネシアの女性モデル7人を藤子・F・不二雄ミュージアム、日本民家園、川崎大師などの観光地に案内し、SNSを通じて発信してもらいました。全員のSNSのフォロワー数をあわせると46万人近くになるそうで、大勢の方に川崎の魅力が発信されたと思います。

 

― 最後に、川崎から世界に発信したいことをひとこと、お願いします。

川崎は、今までにないものを作り出すことができる、チャンスの街です。公害など困難を乗り越え、ピンチをチャンスに変えながら発展してきた背景があるからだと思います。こうした川崎の魅力を、少しでも多くの方に知っていただきたいと考えています。

 

― 本日はお忙しいなか、ありがとうございました。

 

対談写真①パネル

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

写真は川崎市にご提供いただきました(対談の写真を除く)。

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