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IUCN

国際記者発表 持続不可能な食料体系が野生の作物種とイルカに脅威を与える

2017年12月05日

「健全で種数の多い生態系は,世界の膨張する人口に食料を供給し,国連持続可能な開発目標を達成するための基盤でもある」

2017年12月5日16:00JST解禁


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Elaine Paterson, IUCN Media Relations, t+44 (0)1223 331128, e-mail elaine.paterson@iucn.org
Goska Bonnaveira, IUCN Media Relations, m +41 792760185, e-mail goska.bonnaveira@iucn.org
Cheryl-Samantha MacSharry, IUCN Media Relations, t+44 (0)1223 331128, e-mail samantha.macsharry@iucn.org – 2017年12月4日より1週間日本滞在
古田 尚也, IUCN日本リエゾンオフィス, t+81 (0)359445482, m+81 (0)7031930698 email naoya.furuta@iucn.org
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2017年12月5日,東京(IUCN)最新のIUCN絶滅危惧種レッドリストによれば,野生のイネ,ムギ,ヤムイモは,過剰な集約的農業生産と都市膨張により脅威に晒されており,他方,貧弱な漁業活動はカワゴンドウ(イラワジイルカ)やスナメリの数を急激に減らしてきたことがわかった。最新のレッドリストはさらに,気候の乾燥化はリングテイルポッサムを絶滅の淵に追いやっていることを明らかにした。

 

オーストラリアの島でしか生息が知られていない爬虫類3種(クリスマストカゲ,アオオトカゲCryptoblepharus egeriae,リスターヤモリ)は絶滅してしまったということになった。しかしニュージーランドでは,保全努力が功を奏し,鳥類のキーウィ2種の生息状況が改善された。

 

IUCN事務局長のインガー・アンダーセンは,「健全で種数の多い生態系は,世界の膨張する人口に食料を供給し,国連持続可能な開発目標2(2030年までに飢餓をなくす)を達成するための基盤でもある」と述べた。「野生の作物種はたとえば,農作物の遺伝的多様性を保っており,気候変動に適応し,食料・栄養安全保障を確実なものにすることができる。本日のIUCNレッドリストの最新版は,それらの減少に警告を鳴らし,それに緊急に対処しなければならないことを強調するものである。私たち自身の将来がかかっている」とも述べた。

 

持続不可能な農業と都市化が野生の作物種を脅かす


野生ムギ26種,野生イネ25種,野生ヤムイモ44種がIUCNレッドリストのために評価された。その多くが初めて評価された種である。これは,世界の生物多様性の危機に関する知見を拡大するためのIUCN‐トヨタパートナーシップによって明らかになった。全体では,野生イネ3種,野生ムギ2種,野生ヤムイモ17種が絶滅の脅威に晒されている。森林伐採と都市膨張が,集約農業,とくに過剰放牧と除草剤の広範な使用とともに,これら野生種への主要な脅威となっている。

 

現代の栽培種と野生の近縁種を交雑させることで,旱魃,病気,害虫への抵抗力を高めることができるだろう。これらの要因はすべて,気候変動による大きな問題となってこよう。最近の研究によれば,作物の野生近縁種の4分の3(72%)が遺伝子バンクで十分保管されていないし,野生状態での生息域内保全も懸念材料のままであるという。作物の野生近縁種は経済的にも大きな価値がある。世界全体の経済に,年間1,150億ドルの貢献をしており,将来さらに拡大していく可能性を有している。

 

「野生近縁種によりもたらされる遺伝的多様性は,気候変動の時代にあって,われわれがより回復力の強い作物を開発することを可能にするものである。これにより,食料安全保障が確保される。これらの種の運命を無視することで,自分たち自身を危機に陥らせている」とIUCN-SSC作物野生近縁種専門家グループのナイジェル・マクステッド共同委員長は言う。「作物の野生近縁種をIUCNレッドリストで評価することで,これらの種が直面する脅威についてのより詳細な情報が得られている。今回の新しい評価のおかげで,われわれは,過放牧や無分別な除草剤散布のような集約的農業経営を減じることにより,作物の野生近縁種を保全するための体系的な行動ができるようになった。」

 

気候変動がオーストラリアのリングテイルポッサムを脅かす


オーストラリアでは,乾燥化と温暖化が急速に進んでおり,それによりニシリングテイルポッサム(Pseudocheirus occidentalis)の劇的な減少を招いてきた。このポッサムは「危急VU」から「深刻な危機CR」へと変更された。この変更は,過去10年間に80%以上もの個体数の減少があったことによる。

 

このポッサムは,かつては,西オーストラリアのアゴニス(Agonis flexuosa)とユーカリ(Eucalyptus gomphocephala)の林に広く生息していたが,今では海岸近くの分断化の進んだ林にしか生息していない。ポッサムを,パース市の南100kmに位置するレインプール保全公園に再定着させようという試みは失敗に終わった。乾燥化が進んでおり,これら餌となる木の葉の質が低下したからである。このリングテイルポッサムは特有の消化器官を有していることから,高品質の食物,とくにアゴニスの葉を必要としているのである。

 

このリングテイルポッサムは,熱ストレスに弱く,35度以上になると体温が上がり過ぎてしまう。オーストラリアのこの地域ではそうした高温がふつうになってきている。ポッサムの個体数は,市街化,アカギツネ(Vulpes vulpes),ノネコ(Felis catus)による捕食,伐採,野火,不適切な火入れ管理によっても悪影響を被っている。

 

アジアのイルカとスナメリが持続不可能な漁業により脅威に晒されている


カワゴンドウ(Orcaella brevirostris)とヨウスコウスナメリ(Neophocaena asiaeorientalis)はいずれも減少しており,「危急VU」から「危機EN」のカテゴリーに変更された。カワゴンドウは過去60年間で,ヨウスコウスナメリは過去45年間で半分以下の個体数になってしまった。

 

両種とも海岸近くの浅い淡水域に生息する。そのため,人間の活動に対して極度に脆弱である。両種とも,非選択的な漁網に絡まってしまう事故に遭いやすい。漁網の設置がこの減少の主要な原因である。これに加え,餌である魚類の乱獲や生息環境の破壊も問題となっている。

 

「カワゴンドウは多くの地域社会で崇められているし,イルカ目当ての観光はインドやカンボジアの一部では地方経済にとって重要なものだ。両種とも保護動物に指定されていることは,狩猟や捕獲は滅多にないか,まったくないことを意味している。しかし,漁網による溺死やほかの脅威からの保護はまったく欠けているか,あっても効果的なものではない。この問題に対する現実的な解決策なしでは,カワゴンドウとスナメリの減少は当分続くだろう」とIUCN-SSC鯨類専門家グループのランドール・リーブスは言う。

 

メコン川では,最近のカワゴンドウの死亡の大部分が刺し網に絡まっての溺死である。刺し網は,水中にカーテン状に仕掛ける漁網である。刺し網は,海産哺乳類にとっても最大の脅威である。刺し網を禁止,もしくは少なくともその利用を管理する努力は,多くの地域で不十分であり,その結果,クジラ,イルカ,スナメリなど,多くの種の減少を引き起こしている。その中には,「深刻な危機CR」のコガシラネズミイルカ(Phocoena sinus)や,「深刻な危機」のヨウスコウカワイルカ(Lipotes vexillifer)が含まれている。後者は,すでに「絶滅」してしまっているかもしれない。

 

侵略性種と生息環境喪失が日本の爬虫類を絶滅に追いやっている


IUCNレッドリストで新しく評価した,日本に固有の46種のヘビ類とトカゲ類の3分の1が,絶滅危惧種に分類された。これらの爬虫類の個体群は小さく,分断されていることから,生息環境の変化に対しての脆弱性が増している。日本の国内中で,持続不可能な農業と市街化に伴う生息環境の破壊により,種の減少が加速してきた。ペット取引用の捕獲と侵略性種による脅威も問題である。爬虫類に影響を及ぼしている侵略性種には,たとえばインドクジャク(Pavo cristatus)と日本の小さな島のいくつかに導入されたニホンイタチ(Mustela itatsi)がある。

 

「深刻な危機CR」に分類された、久米島に固有で日本のヘビの中では最も稀なキクザトサワヘビ(Opisthotropis kikuzatoi)は1990年代半ばまでは比較的ふつうであった。この種は過去15年間にわたり,侵略性のウシガエル(Lithobates catesbeianus),ニホンイタチ,インドクジャクの捕食により,劇的に減少した。このヘビの生息域は小さく,分断されており,減少をさらに悪化させている。汚染と混獲による偶発的捕獲も個体数を減少させてきた。

 

同じような脅威は,徳之島に固有のオビトカゲモドキ (Goniurosaurus splendens),宮古諸島に固有のミヤコカナヘビ(Takydromus toyamai)にも及んでおり,いずれもIUCNレッドリストで「危機EN」に分類されている。日本の爬虫類の評価も、IUCN-トヨタパートナーシップにより可能となった。

 

オーストラリアのクリスマス島での謎めいた絶滅


オーストラリアの島に固有の爬虫類3種は野生で絶滅してしまった。その3種とはリスターヤモリ(Lepidodactylus listeri)と2種のトカゲであるアオオトカゲ(Cryptoblepharus egeriae)とクリスマスモリトカゲ(Emoia nativitatis)である。

 

クリスマス島の爬虫類は全体的に,1970年代以降に急速に個体数を減少させた。この減少の理由は不明であるが,1980年代半ばに島に導入された侵略性のシモフリオオカミヘビ(Lycodon capucinus)が影響を与えたのかもしれない。新奇の病気とアシナガキアリ(Anoplolepis gracilipes)の侵入に伴う島嶼生態の変化がこれら爬虫類に対してさらなる圧力を与えたかもしれない。モリトカゲの飼育下繁殖プログラムを確立しようという努力は,2013年に失敗に帰しており,この種は「深刻な危機CR」から「絶滅EX」に変更された。今では,飼育下での繁殖個体群はリスターヤモリとアオオトカゲについては確立されているが,両種とも「野生絶滅EW」と宣言される。

 

IUCNレッドリストによれば,固有種の島嶼個体群は,小さな個体数,限定的な遺伝的多様性,新奇病気への免疫の欠如,導入捕食者への無経験により,とくに減少を被りやすい。

 

保全努力の結果としてのキーウィの復活


今回のレッドリストの更新では,ニュージーランドの小さな島で捕食者を集中的にコントロールしたことから,オカリトキーウィ(Apteryx rowi)とブラウンキーウィ(Apteryx mantelli)の個体数が回復し,「危機EN」から「危急VU」へカテゴリーを変更することとなった。

 

これらキーウィ2種は,生息環境の喪失,オコジョ(Mustela erminea)やノネコのような導入哺乳類による捕食を含む脅威に直面してきた。ブラウンキーウィはフェレット(Mustela furo)とノイヌによる捕食の影響を受けている。

 

政府と地域社会による保全努力は,捕食者コントロールと野外に放鳥するための卵の孵化に焦点を当ててきた。オカリトキーウィは,1995年の160個体から今日の400-450個体にまで増加した。ブラウンキーウィ個体群は年間2%以上成長していると推定されている。ただし,一部の未管理の個体群は減少を続けている。

 

キーウィのカテゴリー変更は,ニュージーランドの鳥類の広範な評価の一部を構成するものである。評価の結果,多くの固有種が減少していることがわかった。侵略性種による結果として減少している事例が多い。

 

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より詳細な情報とインタビューの申し込みは下記まで:

Elaine Paterson, IUCN Global Species Programme, t +44 (0)1223 881128, e-mail elaine.paterson@iucn.org
Goska Bonnaveira, IUCN Media Relations, m +41 792760185, e-mail goska.bonnaveira@iucn.org
Cheryl-Samantha MacSharry, IUCN Media Relations, t +44 (0)1223 881128, e-mail samantha.macsharry@iucn.org
– 2017年12月4日の週は日本に滞在中
古田 尚也, IUCN日本リエゾンオフィス, t+81 (0)359445482, m+81 (0)7031930698 email naoya.furuta@iucn.org

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編集者への注

IUCN-トヨタパートナーシップ: IUCNとトヨタ自動車株式会社の5年間にわたるパートナーシップにより,作物野生近縁種と日本の爬虫類の評価結果がIUCNレッドリストに新たに追加されることになった。このパートナーシップは,「トヨタ環境チャレンジ2050」により生まれたものである。これは,クルマのもたらす負荷を限りなくゼロに近づけるとともに社会にプラスをもたらすことを目指している。


今回の更新で付け加わったその他の種に関する事例

ブータンの固有種: ブータンの固有植物のほぼ全種(99%)が初めてIUCNレッドリストに追加された。追加された125種のうち,4分の1が絶滅危惧と考えられ,その理由はほとんどが生息環境の喪失と悪化(主に市街化とインフラ開発による)および持続不可能な採取である。絶滅危惧種には,道路拡張と土地利用変化の影響を受けている「深刻な危機CR」のラン2種(Oreorchis sanguinea, Cheirostylis sherriffii),「危機EN」のNeopicrorhiza minimaが含まれている。後者の種は風邪と軽い病気を治すための伝統的薬用植物として,地方で利用されており,持続不可能な採取により脅かされている。


鳥類: 最新のIUCNレッドリストで再評価された238種の鳥類の4分の1(26%)がより高いカテゴリーにアップリストされ,28%が低位のカテゴリーにダウンリストされた。南部アフリカと東部アフリカの一部に在来のアフリカオタテガモ(Oxyura maccoa)は「準絶滅危惧NT」から「危急VU」にアップリストされた。汚染,刺し網による溺死,農業と市街化による生息環境の喪失により,個体数が30‐49%減少したことによる。北アメリカの北極地方での情報に基づき,シロフクロウ(Bubo scandiacus)が初めて絶滅危惧種となった。シロフクロウは,これまで「低懸念LC」であったのが,一足飛びに「危急VU」となった。個体数が以前考えられていたよりもずっと少なく,3世代で30‐49%も減少した。本種に対する数多くの脅威のひとつとして気候変動がある。融雪に影響し,餌であるげっ歯類を捕獲しづらくなっている。アジアでは,かつて豊富にいたシマアオジ(Emberiza aureola)が「危機EN」から「深刻な危機CR」へとアップリストされた。2004年以前は,本種は「低懸念LC」に掲載されていた。中国では食料用にシマアオジが捕獲されており,これが主要な脅威となっている。好ましいニュースがエクアドルのガラパゴス諸島からもたらされている。ここでは,繁殖期の状況がよい年が続いて,フロレアナマネシツグミの個体数が十分回復したので,「深刻な危機CR」から「危機EN」にダウンリストされた。


ニュージーランドの鳥類のより詳細は,12月12日にバードライフインターナショナルとIUCNレッドリスト鳥類当局により発行されるので,Shaun Hurrell, BirdLife Communications Officer, +44 (0)1223 747555 email shaun.hurrell@birdlife.orgに連絡されたい。

 

参考になる引用

トヨタ自動車株式会社 常務理事 新美俊生 「私達は気候変動問題に直面しており、健全な生物多様性は人類の健康と食料安全保障にとってますます重要になる。IUCN絶滅危惧種レッドリストを支援することにより,トヨタは絶滅の危機にある数多くの種の保全に貢献している。新しく評価された作物野生近縁種と日本の爬虫類もそのひとつである。野生イネ,野生ムギ,野生ヤムイモの新しい評価は,農作物を変動する気候に適応させることを確実にすることに役立つだろう。爬虫類の評価は,生息環境の喪失と侵略性種のような迫りくる脅威から日本固有の生物多様性を守ることに役立つだろう」と述べる。


オーストラリア,チャールズダーウィン大学,保全生物学教授,John Zichy-Woinarski「クリスマス島の2種の爬虫類の絶滅は,その原因が不明であるため,まさにミステリーである。この絶滅は,種の減少の主要原因を特定し,危機にある種と減少している種の頑強なモニタリングと保全に関するプログラムに情報を提供することがいかに重要かということを思い起こさせる。この事例では,減少の範囲と強度がわかるのがあまりにも遅すぎたため,クリスマス島の爬虫類を救うことができなかった。」


レッドリストパートナーからの引用


バードライフ・インターナショナル 世界科学コーディネータ Dr Ian Burfield「侵略的外来種は近年の鳥の絶滅の大きな原因であり,とくに島嶼では何百種もの絶滅危惧種に悪影響を及ぼし続けている。幸いなことに,キーウィのダウンリストは,希望が残っていることを示すものである。ニュージーランドは,侵略性種に対処する上で,世界的なリーダーでもあり,技術を開発してきた。その技術は,世界中で改造され,利用されている。今我々が必要なのは,この努力をさらに強化するための人的・金銭的資源であり,それらを早急に多くのほかの島に配備させることである。」


レッドリストパートナーのテキサスA&M大学 IUCNレッドリスト委員会  Dr. Thomas E. Lacher, Jr 「海産哺乳類を保護する仕事を長年続けてきた自分にとっての大きな懸念は,最近のイルカ類の劇的な減少である。ヨウスコウカワイルカが絶滅,コガシラネズミイルカが「深刻な危機」,カワゴンドウとヨウスコウスナメリが「危急」から「危機」になったことは,鯨類への脅威が続いていることへの警鐘であり,見守っていく必要がある。最も重要なのは,アグレッシブな保全行動が必要だということである。」


最新のレッドリストパートナーのアリゾナ州立大学 生物多様性成果センター Leah Gerber 「ヨウスコウスナメリの減少の主要な要因は,海岸の開発と漁業による混獲など,人為的影響である。彼らはスローな生活史(長い妊娠期間,遅い性成熟)のため,スナメリは,保全措置の結果が出るのもゆっくりである。スナメリ属の唯一の種であり,ネズミイルカ類の中でも最も原始的な種が存続させるため,今行動に移すことが必要である。」


英国王立キューガーデン ヤムイモ研究者 Paul Wilkin「野生のヤムイモは,避妊ピル用のステロイドを作るために使われた。また,マダガスカルをはじめ多くの国で主要な炭水化物を提供してくれる。野生のヤムイモから作出された栽培種は,アフリカだけでも1億人もの食料を供給している。ヤムイモのような作物野生近縁種の保全(CWRs) はキューガーデンやほかの組織で実行されており,これらの植物が現在および将来,食料や薬品を供給するために利用可能になることを保証している。改良された,将来の作物品種を作出するための主要な形質の供給源ともなるだろう。今回の評価により,どのヤムイモや他の種が保全行動のために優先されるべきかを特定することができる。」

 

2017‐3 IUCN絶滅危惧種レッドリストに関する世界的統計:
評価済みの種数 = 91,523
(絶滅危惧種全数 = 25,821)
絶滅 = 866
野生絶滅 = 69
深刻な危機 = 5,583
危機 = 8,455
危急 = 11,783
準絶滅危惧 = 5,967
低リスク/保全依存 = 219 (これは,旧カテゴリーであり,IUCNレッドリストからは次第に消えていっている)
低懸念 = 44,148
データ不足 = 14,433


上に示されている数字は,今日までにIUCNレッドリスト用に評価された種に関するものに限られている。世界に生存する種がすべて評価されたわけではないが,IUCNレッドリストは 今日,種に何が起こっているかの有益な概観を提示するもので,保全行動が緊急に必要であることを強調するものである。IUCNレッドリストの多くの分類群について,絶滅危惧種の相対的割合を提示することはできない。というのは,包括的にすべての種を評価したものではないからである。これらの種群について,評価努力は絶滅危惧種に対してのものであり,それゆえ,これらの種群に占める絶滅危惧種の割合は,ひどく偏ったものである。


包括的にすべての種が評価された分類群では,絶滅危惧種の割合を計算することができる。しかし,絶滅危惧種の実数は,しばしば不確実である。というのは,データ不足(DD)の種が実際に絶滅危惧なのかどうかがわからないからである。それゆえ,上に示した割合は,包括的に評価された分類群(絶滅種を除く)の絶滅リスクの最善の推定値である。これは,データ不足種はデータが十分な種と同じ割合で絶滅危惧であるという仮定に基づくものである。換言すれば,これは,絶滅危惧種x%(DD種はすべて絶滅危惧でない)からy%(DD種はすべて絶滅危惧である)までの範囲にある中央値でもある。利用できる証拠に基づけば,これが最善の推定値である。

 

IUCNのレッドリスト絶滅危惧カテゴリーは以下の通り。上のほうが危機が高い。

「絶滅 EX」もしくは「野生絶滅 EW」
「深刻な危機 CR」「危機 EN」「危急 VU」: 地球規模で絶滅危惧にある種
「準絶滅危惧 NT」: 絶滅危惧カテゴリーの閾値に近い種,もしくは現在の保全措置が中止されると絶滅危惧になる種
「低懸念 LC」: 絶滅の危険性が低いと評価された種
「データ不足 DD」: 絶滅するかどうかを決めるにはデータが不十分である

深刻な危機 (おそらく絶滅): これは新しいIUCNレッドリストカテゴリーではないが,たぶんすでに絶滅しているものの,最終確認を必要とする「深刻な危機」種を特定するために作られた標識である。たとえば,より広範な調査を実行することにより,個体を発見することができないことを確認する必要がある。


IUCNレッドリストカテゴリーの構図
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IUCN絶滅危惧種レッドリスト™について
『IUCN絶滅危惧種レッドリスト™』(『IUCNレッドリスト』)は保全行動と政策決定の手引きとなる価値のある資源である。レッドリストは植物,動物,菌類の地球規模での保全状況に関する世界で最も包括的な情報源である.保全対策がない状況下での,その種の絶滅リスクを評価するための客観的な制度に基づいて作成されている.

評価対象となるすべての種は,8つのカテゴリーのどれかに当てはめられる.個体数の動向,個体群のサイズと構造,地理的分布範囲に関する基準に合致しているかどうかに基づいている.「深刻な危機」,「危機」,「危急」に分類された種は,全体として「絶滅危惧」であると表現される.

『IUCNレッドリスト』は種名と絶滅危惧カテゴリーをただ登録したものではない.当該種への脅威,生態学的要件,生息地に関する情報,絶滅を減じたり,絶滅を防いだりするために用いる保全措置に関する情報の大要を詳述したものである.

『IUCNレッドリスト』はIUCNと種の保存委員会の共同作業の結果であり,IUCNレッドリストパートナーである以下の組織の協力を仰いで作成されている: アリゾナ州立大学; バードライフ・インターナショナル; 植物園自然保護国際機構;コンサベーション・インターナショナル; NatureServe; 英国王立キューガーデン; ローマ・ラ・サピエンツァ大学;テキサスA&M 大学;ロンドン動物学会

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IUCNについて
IUCNは会員制の組織で,政府機関と市民社会の組織からなっている。IUCNは,人間の発展,経済的開発,自然保全が同時に起こるようにするための知識と道具を公的機関,私的機関,非政府機関に対して提供している。1948年に設置されたIUCNは今では世界最大かつ最も多様な環境に関するネットワークであり,1,300もの会員組織と10,000名もの専門家の知識,資源,拡がりを擁している。IUCNは保全に関するデータ,評価,分析の主導的な提供者でもある。その広範な会員制により,IUCNは最善の経験,道具,国際標準のインキュベーターと信頼に足る貯蔵庫の役割を果たすことを可能にしている。

 

政府,非政府機関,科学者,財界,地域社会,先住民組織などのような広範なステークホールダーが一緒になって,環境的チャレンジに対する解決方法を作り上げ,実行し,持続可能な発展を成し遂げることができる中立的な場を提供している。多くの協力者と支持者とともに,IUCNは世界の保全プロジェクトの大きく多様で広範な活動を実施している。最新の科学を地域社会の伝統的知識と統合させることにより,これらのプロジェクトが生息環境の喪失を止め,生態系を回復し,人間の福祉を改善するために機能している。
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種の保存委員会について
種の保存委員会(SSC)はIUCNの6委員会のなかで最大の委員会であり,世界じゅうの7,073人ものメンバーにより構成されている.SSCはIUCNとその会員に対して,種の保全に関する広範な技術的・科学的側面の助言をおこなっており,将来にわたり多様性が保証されるべく,注力している.SSCは生物多様性保全を扱う国際協定にも大きな貢献をしている.

 

アリゾナ州立大学(ASU)について
アメリカでの革新1位にランクされているアリゾナ州立大学(ASU)はアメリカの高等教育の新しいモデルであり,学問的秀逸性,企業家エネルギー,広範なアクセスを結合したものである。アリゾナの首都フェニックスで7万人の学生に奉仕している。アリゾナ州立大学は,知的多様性と文化的多様性を支持しており,国内50州と世界の100か国以上から学生を受け入れている。アリゾナ州立大学の生物多様性成果センター(CBO)はジュリー・アン・リングリー世界持続可能性研究所と生命科学部(SoLS) とのパートナーシップである。後者は非政府機関,会社,政府機関とパートナーシップを確立している。Follow CBO’s work on Twitter (@BiodiversityASU).

 

バードライフ・インターナショナルについて
バードライフ・インターナショナルは,世界で最も大きな自然保護パートナーシップである。世界中に120ものバードライフパートナーを有しており,さらに拡大を続けている。1,100万人の支援者,7,000の自然保護団体,7,400人の職員とともに働いている。鳥類に関するIUCNレッドリストの公式レッドリスト当局として,バードライフは,世界の鳥類全種の絶滅リスクを評価するため,レッドリストカテゴリーと基準に照らして評価する過程を調整している。バードライフと絶滅防止プログラムについては,www.birdlife.orgを参照されたい。

 

植物園自然保護国際機構について
世界には25,000の植物園と樹木園があり,毎年5億人もの訪問者が来訪している。合計すると,植物園は少なくとも世界の3分の1の生きた植物種を保全していると推定されている。植物園自然保護国際機構(BGCI)はこのネットワークの中心的役割を担っている。会員には,世界で最大で,名声のある植物園がいる。キュー,ニューヨーク,ミズーリ,シンガポール,シドニー,上海の植物園も会員である。それだけに限らず,世界の植物多様性ホットスポットにある小さな植物園も会員である。会員植物園のすべてが,植物種が絶滅しないことを確実にすることを約束している。これに加え,何千人もの植物栽培愛好家と研究者がその目的に向かって働いている。つまり,私たちは世界で最大の植物保全ネットワークである。


コンサベーション・インターナショナル(CI)について
科学,パートナーシップ,現場での実証という強い基盤に立ち,CIは社会が持続的に自然,地球の生物多様性,長期的な人間の福祉を育むことを目的としている。1987年に設立され,2012年には25周年を迎えた。CIは,ワシントンDCに本部を有し,900人の職員が4大陸30か国で働いている。さらに,世界中に1,000人ものパートナーがいる。詳しくはウェブサイトwww.conservation.org を訪れるか,フェイスブックかツイッターをフォローされたい。

 

ネイチャーサーブについて
ネイチャーサーブは,非営利の自然保護団体であり,効果的な保全行動にとっての科学的基礎を提供することに尽力している。82の自然遺産プログラムのネットワークとアメリカ,カナダ,中南米のデータセンターを通じて,ネイチャーサーブは,アメリカの植物,動物,生態系に関する詳細な科学情報と生物多様性保全の専門的技術を提供している。www.natureserve.org

 

英国王立キューガーデンについて
英国王立キューガーデンRoyal Botanic Gardens, Kew は世界的に有名な科学組織で,その傑出した植物収集と英国と世界中の植物多様性,保全,持続可能な発展に関する専門的知識の点で国際的に尊敬されている団体である。キュー植物園は,国際的にも,ロンドンの訪問客にとっても大きな呼物である。キュー植物園の132ヘクタールの庭園とウェイクハーストにある地所には,毎年150万人もの人が訪れる。キュー植物園は,2003年7月に世界遺産に指定され,2009年には250周年記念を迎えた。ウェイクハーストにはキュー・ミレニアム種子バンクの施設があり,ここは世界で最大の野生植物の種子バンクである。キューの運営資金の半分近くは,環境食糧農林省とリサーチカウンシルを通じての英国政府の拠出金である。キューの仕事を支援するために必要な追加資金として,このほかに,寄付金,会費,入園料などがある。

 

ローマ・ラ・サピエンツァ大学について
700年以上の歴史と11万人もの学生を有するサピエンツァ大学は,ヨーロッパ最大の大学であり,世界ではカイロ大学に次ぐ2番目の規模である。サピエンツァ大学は,11学部,67学科から構成されている。4,500人以上の教授と5,000人もの事務・技術職員がいる。サピエンツァ大学では,様々なコースがあり,300の学位と200の専門資格を取得することができる。ローマ以外から入学する学生は3万人,留学生は7,000人以上に上る。サピエンツァ大学は,あらゆる分野で重要な科学的調査を計画,実行しており,国内的にも国際的にも高水準の成果を生み出している。2014年11月以降,ユージニオ・ガウディオがサピエンツァ大学の学長を務めている。http://www.uniroma1.it/


テキサスA&M大学について
1876年にテキサスでは初めての小規模な公立大学として開学して以来、現在では5,200エーカーのキャンパスを有し、国内有数の学部を持つまでになったテキサスA@M大学は、陸地、海洋、宇宙に関する公的支援を受けられる数少ない指定大学である。入学生は、男子と女子が半々で、新入生の25%は家族の中で初めて大学に入った人たちである。39,000人の学部生と9,400人以上の大学院生は世界レベルの研究プログラムと受賞歴のある教授陣に接している。テキサスA&M大学はほかに2か所のキャンパスがある。テキサス州のガルベストンと中東のカタールである。10のカレッジを持つこの研究主体の大学は最近、回収率(教育経費に比較して、どれだけの利益を得られるか)の点で、「スマートマネー」という雑誌により1位に格付けされた。2011年版の米国ニュース・ワールドレポートではテキサスA&M大学は、公立大学の中では、「グレートスクール、グレートプライス」カテゴリーで2位に、私立も加えると22位にランクされた。多くの学位取得プログラムが国内でトップ10にランクされている。www.tamu.edu

 

ロンドン動物学会(ZSL)について
1826年に設立されたロンドン動物学会(ZSL)は,国際的な科学,保全,教育に関する慈善団体である。主な役割は,動物とその生息環境の保全である。協会は,ロンドン動物園,ウィプスネイド動物園を運営しているほか,動物学研究所で科学研究をおこなっている。また,世界の50か国以上で現地での保全活動に参加している。 www.zsl.org

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