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ブリーフィング・レポート

「日本のマクロ経済見通しFY2004-05 ―製造業の復活:わが国は長期不況から脱却する― 」

みずほ証券会社 チーフエコノミスト
佐治 信行

[経済] 2004年2月18日

 日本経済は、2003年度を境に過去12年間の長期不況から脱すると我々は予想しています。2月18日に発表されたGDP速報値も成長率を年率換算すれば、7%〜8%という高い成長率で、最近の先進国の成長率と比較してもこの12月期、第4四半期の日本のGDP成長率は、圧倒的な高い伸び率を達成しています。我々は、この景気回復には持続力があると判断しており、その分析の背景についてお話します。
 日本経済を駆り立てる要因は先ず設備投資です。今回の設備投資の回復は、過去10年間に見られた周期的な設備投資の回復ではなく、構造的かつ持続力のある設備投資の回復であることが、次の3つの理由で結論づけられると思います。
 1点目は日本製品の高度化が急進展していること。これまで数年間、日本企業はアジア中心に設備投資を海外へ移転させる作業を続けてきましたが、昨年夏以降、むしろ設備投資の焦点を国内に戻す回帰現象にあります。2点目の理由は、国内に存在する設備の平均使用年数が昨年半ば以降、急速に若返り始めていること。3点目は、日本企業のバランスシートの調整がある程度一巡したと考えられることです。設備投資が活気づいた後、18日に発表されたGDP統計の中にも見られる新しい展開としては、個人消費にも回復の兆しが見え始めてきたことも付言しておきます。
 以上を勘案すると、日本経済の行き懸念材料は、円高、米経済の減速、中国経済の先行きの3点が挙げられます。しかし、それらを十分相殺出来るだけの国内経済の力はあると判断してもよいと思います。
 では具体的に我々がどの様な指標を見て、何故今のような判断をしているかという点について説明します。大手製造業の海外設備投資の比率が2002年をピークに、それまでの上昇が止まったことに注目です。産業別に見て、この海外設備投資の比率が低下している代表的な部門は、精密機械、電気機械、化学、自動車部品の4部門です。これらの部門で国内投資を増強している製品はデジタル家電とか、それに使う装置と素材、そして自動車の軽量化技術等です。「製品の高度化」がキーワードです。
 日本製品の高度化のスピードも過去1年間急速に進んでいます。それは、日本の製造業の意識的な改革による競争力の復活です。今、日本企業は高度化された製品をより多く作り、製品の売上構成を一気に高精度化された製品の方にシフトしていくために、保有している機械を猛烈なスピードで切り替えています。そうして新しい設備を入れて、設備を一気に若返らせているのが日本の製造業の現状です。設備の平均使用年数は2002年に7.08年、つまり日本の設備の平均年齢が7歳で2002年にピークアウトして最近は低下局面に入っています。今、日本企業が実行している設備は2つの面で従来と異なります。1つは海外へハイテクを流出させるような設備投資はしない、つまり、国内へハイテク製品を集中させる方針に変わってきています。2つ目は、日本企業には古い設備を除去して新しい設備に切り替え、生産性を大幅に引き上げる意識が強くなっています。
 日本のバブルのツケをどれ位まで清算出来たかという視点から見ると、中小企業のバランスシートの中に占める借入金の残額がバブル前の水準、つまり83年位の水準まで低下してきています。土地PER比率(土地総額を名目GDPで割った値)で見ると、30年前の水準まで土地の調整が終わり、過去バブルで異常なまでに膨らんだ過剰な信用構造はある程度、適正なレベルまで戻ったと言えます。このように、日本の企業部門は製品の高度化に成功し、かつ高度化された製品の技術力、若しくは競争力を国内に設備投資を集中させて技術を守ることにより、体力を明らかに強めてきていると我々は判断しています。
 一方、家計部門では最近日本の個人消費は低迷が続いてきました。政府は社会保障および税制改革で国民の負担を増やす制度改革を行ないましたが、家計部門の負担総額の殆どが年金で、総額は可処分所得に対して0.6%の規模にしか過ぎません。