【ジャパン・ブリーフ】経済財政白書 景気底打ちを宣言するも雇用が不安

投稿日時 2009-07-31 | カテゴリ: Japan Brief

【ジャパン・ブリーフ / FPCJ, No. 0943】
2009年7月31日


◎経済財政白書 景気底打ちを宣言するも雇用が不安

企業が抱えている実質的に不必要な余剰人員――企業内失業――が推定600万人以上おり、失業が日本経済の今後にとって最大の不安要因である。政府が7月24日に発表した2009年度の年次経済財政報告(経済財政白書)はこのように指摘し、同時に昨年後半からの国内経済の前例のない大幅な落ち込みは春以降底を打ち、持ち直しの傾向が見られるとも表明した。

経済財政白書は、政府が日本経済の現状と問題をどう把握し、どう処方するのかを提示する公式の文書として注目されている。今年度版は当然のことながら、2008年後半から今年春までに日本経済を襲った前例のない規模の不況に焦点を当てている。白書はこの不況は、自動車とIT製品に大きく依存していた輸出市場が突然世界的に崩壊したことに起因するとしている。さらに昨年秋以降の円高が輸出企業の収益に追加的な打撃を与えたと指摘している。その結果、失業が増加し、消費支出の停滞も招いた。

しかし白書は、春以降「持ち直しの動きが見られる」と強調し、その証拠として在庫調整の進展と化学製品などの中国向け輸出の増加などを挙げている。内需が依然として弱い状況のもとでは、日本は当面、景気回復の契機として輸出市場、特に新興市場をあてにせざるをえない、と白書は言っている。しかし外需と内需の「双発エンジン」に支えられた景気回復をめざすことが好ましいと指摘、特に個人消費を重視している。

日本経済が直面する三つの大きなリスクとして白書が挙げているのは、(1)失業の増大、(2)供給に比べ需要が不十分なことによるデフレ回帰、(3)米欧の銀行の危機が続き、それが実体経済に悪影響をもたらす悪循環の長期化――である。

白書は3つの章の1つを景気回復と日本経済の持続可能な成長のカギとしての「雇用・社会保障と家計行動」に充て、初めに、今や日本の全雇用の3分の1を占めるに至った、最近の非正規雇用の急増の問題を取り上げている。こうした非正規雇用の増大が最近の所得格差の増大の大きな原因と一般には考えられている。各種データによれば、非正規雇用者の年収は300万円未満がほとんどで、正規雇用者の約半分である。この結果、正規雇用者の生涯賃金は非正規雇用者の2.5倍に達していると白書も指摘している。さらに、白書は、賃金自体の低さだけでなく、将来に対する不確実性が非正規雇用者を貯金に向かわせ、個人消費が振るわない一因になっているとしている。

しかし白書は、非正規雇用者の増加が格差の拡大を招いた直接の原因であるとはしていない。白書はむしろ、失業の増大と人口の高齢化が格差拡大の二大原因であると分析している。この分析に関して、一橋大学の小塩隆士教授は、世間の認識とはギャップがあるとして、さらなる説明を求めている(24日付日本経済新聞夕刊)。

したがって政府は白書では、新しい仕事の創出による雇用の維持を最重要視している。格差の縮小には成長が不可欠だという考えである。白書はまた、国民が老後に対して感じる不安や公的年金に不信感を抱いていることが、そうでない場合にくらべて貯蓄率を引き上げる作用をしていることを認めている。そこで白書は、公的年金制度に対する信頼感を高めることが過剰な貯蓄を是正し個人消費を促す一つの道であると論じている。

◆主要紙論調

新聞論調は、白書の日本経済の問題分析はおおむね受け入れている。しかし、雇用を創出し、国民を安心させることのできる持続可能な成長を実現するための具体的処方箋を提示することにおいては不十分だと批判している。

読売新聞は7月25日の社説で次のように主張した。「内需と外需の『双発エンジン』による回復を目指すべきだと、白書は説く。異論はないが、2002年からの7年近い景気拡大期でさえ、内需は弱かった。雇用危機の中で、内需をいかに振興すべきか論じてほしかった」、「白書は、年金など社会保障への信頼を高めれば過剰な貯蓄が減って、消費を下支えするとした。いい視点だが、肝心の財源を示さず説得力を欠いたのは残念だ」。

毎日新聞は、単に成長を重視するだけで問題は解決するのだろうかと疑問を呈した。同紙27日の社説は「成長で安心は得られぬ」と題し、「09年1~3月時点で企業内の余剰雇用は607万人と試算しているが、成長率が高まったからといって、すべては解消しない」、「安心社会実現には、思い切った雇用対策や医療制度改革をやるしかない」、「格差拡大に対しては所得再配分を大胆に実施することが欠かせない」と主張した。

日本経済新聞は7月25日の社説で「迫り来る雇用調整の足音」に懸念を表明した。「米欧では失業率が10%の大台近くに上がり、日本も5月の完全失業率が5.2%と過去最悪の5.5%に近づいた。……企業が雇用維持に全力を尽くすのは当然だが、そこに限界もある。企業の雇用維持へ十分な支援策を続けると同時に、新たな雇用の受け皿となる産業を伸ばす政策が必要だ」。
(了)

(Copyright 2009 Foreign Press Center / Japan)

※ジャパン・ブリーフは、(財)フォーリン・プレスセンターが独自に作成しており政府やその他の団体の見解を示すものではありません。


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