投稿日時: 2009-10-29【ジャパン・ブリーフ / FPCJ, No.0966】
2009年10月29日
◎鳩山総理、就任後初の所信表明演説
鳩山由紀夫総理は10月26日、衆参両院の本会議で就任後初の所信表明演説を行った。演説で鳩山総理は、明治維新を引き合いに衆院総選挙(8月30日)による政権交代を「無血の平成維新」と位置づけ、日本の政治を官僚依存から政治家主導へと転換し「戦後行政の大掃除」を行うと宣言し、さらに国民の生活及び弱い立場の人々を重視した「友愛政治」の実現をめざす決意を表明した。
◆所信表明演説に盛り込まれた諸政策
所信表明演説とは政権の基本政策を、総理が国会で公約するものである。それに対する各党の一般質問で論戦が開始される。国権の最高機関である国会にとって、その最重要な機能となるのが所信表明演説と一般質問といえる。鳩山総理の所信表明で話題を呼んだのは、52分という演説時間の長さだった。08年9月の麻生太郎前総理、07年10月の福田康夫元総理の演説時間はともに22分だった。
鳩山総理は演説のほとんどを、民主党の政権公約(マニフェスト)に盛られた諸政策をエピソードを交えながら詳しく説明することに当てた。朝日新聞(26日夕刊)は演説内容の骨子を次のように箇条書きした。
・官僚依存の仕組みを排し、政治主導・国民主導の新しい政治に百八十度転換する。
・私の政治資金の問題では捜査に全面的に協力する。
・弱い立場の人々、少数の人々の視点が尊重されるのが友愛政治の原点だ。
・市民やNPOの活動を側面から支援する。
・家計を直接応援することで「人間のための経済」への転換を図る。内需中心の安定的な成長を実現する。
・地域のことは地域に住む住民が決める「地域主権」改革を断行する。
・2020年に温室効果ガスを1990年比で25%削減する目標を掲げ、国際交渉を主導する。
・緊密かつ対等な日米関係を基盤とする。
この所信表明演説を受けて、国会では10月28日から30日まで各党の代表質問が行われる。ただし民主党と連立与党の国民新党は「審議時間の短縮」などの理由で、衆院での代表質問は行わない方針だ。11月30日までの36日間の臨時国会会期を通じて、政権交代後で初めてとなる与野党間の国会論戦が展開される。
◆主要紙の論調
全国紙5紙はいずれも10月27日、所信表明演説を論評する社説を掲載した。
読売新聞は「鳩山政治の『理念』満載である。確かに理念は大切だ。しかし、理念だけでは政治が動かないのも、また事実だろう」と書き出す。そのうえで官僚依存の排除、人間のための経済政策、多様な文明の間の「架け橋」としての役割を果たす外交、温室効果ガス削減などの環境政策、「対等な日米同盟関係」構築などへの総理の「哲学」に触れつつ、「理念は、法案や政策として具現化されねばならない。今国会で、鳩山内閣は、その用意がどこまであるのか」と述べ、理念と具体的施策の間にギャップがあるのではないかと危惧する。
朝日新聞は「さまざまな格差や痛み、制度のほころびが深刻になる日本社会にあって、正面から『社会の作り直し』を呼びかけた率直さが、新鮮に響いたのは確かだ」と総理演説を評価する。そして「首相は、12月末に向けて編成作業が進む来年度予算案の中身や、それを審議する年明けの通常国会で具体的な肉付けを語る心づもりのようだ。政権発足からまだ40日。しっかり準備してからという気持ちは分からなくはない」と鳩山政権の今後の対応への期待を表明する。
毎日新聞は、「無血の平成維新」などのキーワードに託す鳩山総理の政治姿勢を「その気概や良し、である」と好意的に受け止める。そのうえで、「友愛政治実現のためには、それなりの財源の裏付けや経済戦略が必要だが、その道筋が示されていない」、「その過程で重要なのは、……(選挙のさまざまな目玉公約について)その優先順位や実施工程について改めて整理を行い、公約通りいきそうもない問題が生じた時には率直に事情を説明し理解を求めることである」と述べる。
日本経済新聞は、「(鳩山総理が)自分の言葉でわかりやすく語ろうという意欲は感じられた」と述べながら、「演説全体の基調は、成長戦略を通じて国を豊かにするというメッセージ性が乏しい。首相は成長戦略をはじめとするマクロの経済運営の方針を早急に示す必要がある」と論じる。また「普天間(飛行場)移設問題で米側は11月のオバマ米大統領の来日前の決着を求めており、安保摩擦は深刻だ。展望のないまま結論を先送りする首相の姿勢には危惧を抱かざるを得ない」と書く。
産経新聞は「『戦後行政の大掃除』や人と人が支えあう『新しい公共』の概念なども盛り込まれ、その方向性は妥当だろう。しかし、内政・外交とも政策を具体的にどう実現していくかが明確に示されておらず、説得力に欠ける」ことを不満視する。また「米軍普天間飛行場の移設問題は現状を説明したにすぎない。世界の『架け橋』として国際社会から信頼される国を目指すと唱えているが、基軸となる日米同盟の揺らぎを回避するのが先決だ」と主張する。
(了)
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