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ジャパン・ブリーフ

【ジャパン・ブリーフ】新しく導入された裁判員裁判で初の判決  
【ジャパン・ブリーフ / FPCJ,No. 0946】
2009年8月11日


◎新しく導入された裁判員裁判で初の判決

一般市民が裁判員として刑事裁判に参加する裁判が8月3日より東京地裁で始まり、3日間の集中審理を経て、公判4日目の8月6日に判決が言い渡された。判決後、裁判員たちは記者会見に応じ、「人を裁くことで緊張したが、社会的重責を務め上げた」などと感想を述べた(8月7日付産経新聞)。

裁判員による初の審理の対象となったのは、72歳の男が隣人をナイフで刺殺した事件。選挙人名簿から無作為に選ばれた裁判員6人が裁判官3人とともに審理・評議を行い、裁判長は、被告人に「懲役15年」の判決を言い渡した。主要紙の報道によれば、審理中は、検察官と弁護人が、写真やイラストを用い、難解な専門用語を平易な言葉に言い換えるなど、裁判員に分かりやすく説明するための工夫が見られたほか、裁判員たちから被告人に対する質問も相次いだ。

◆「裁判員制度」導入の経緯

報道を総合すると、裁判員制度は、「裁判内容への国民の健全な社会常識の反映」を目的として、2001年6月に導入が打ち出され、2004年5月の裁判員法の成立を経て、今年5月21日にスタートした。殺人や強盗傷害といった重大な刑事事件が対象で、原則として一般市民による裁判員6人と職業裁判官3人で審理を行い、有罪・無罪及び量刑を決める。

新制度導入の背景には、戦後一貫してプロの裁判官が裁いてきた刑事裁判への反省がある。戦前から戦中まで15年間続いた陪審制度が1943年に停止されて以降、刑事裁判は、職業裁判官だけで司法判断が下され、事件の経緯や背景などを詳細に認定する手法が一定の評価を得てきた。その反面、専門的な正確さを重視するあまり、審理や判決が国民にとって理解しにくく、審理に長期間を要するなどの問題が指摘されていた。また、法廷での供述や証言よりも、警察や検察の取り調べで作成された被告人らの自白調書を重視する「調書裁判」が主流となっていた結果、法廷が検察の主張を追認しがちとなり、容疑者の自白偏重や、ひいては冤罪を生みだす原因となっているとの批判もあった。

◆主要紙の論調

日本の主要5紙は、初めての裁判員裁判を連日大きく報じ、判決翌日の8月7日には、同裁判に関する社説を一斉に掲載した。各紙とも、今回の裁判を概ね評価する一方、裁判員に課された守秘義務の見直しなどを始めとする、不断の検証作業を通じた改善も求めた。

読売新聞社説は、「裁判の内容が一般にも分かりやすくなったのは、歓迎すべきことである」と評価した。一方で、「法曹関係者は今回も含め、問題点を洗い出して検証し、裁判員制度を改善していくことが肝要である」と述べ、連日の公判で心理的負担を強いられる「裁判員の心のケア対策に万全を期していく必要がある」としたほか、今回無作為に選ばれた裁判員の6人中5人が女性だったことに触れ、「裁判員の選考方法も検討課題」であるとした。

朝日新聞社説は、今回の判決を「国民の代表が評議に加わった歴史的な判決」と呼び、「市井の人々がみずからの感覚を生かして真剣に取り組んだ結果は重く受け止めるべきだろう」と述べた。また、「裁判員経験者が自らの体験を社会に伝えることは、国民全体でその経験を共有することにつながるだけでなく、この制度を検証していくうえでも欠かせない」とし、「裁判員には重い守秘義務があるが、これから裁判員に選ばれる人々も積極的に体験を語ってほしい」と述べた。

毎日新聞社説は、「市民の新鮮な感覚が司法や捜査の『常識』を変え得る可能性を感じた人も少なくないはずだ」と今回の裁判を評価する一方、審理日程や守秘義務につき今後の課題を指摘。「実際の公判がこのような短期間では、手続き次第で裁判員裁判は形だけのものになる恐れがある」、「裁判官は評議をどのようにリードしたのか、裁判員の意見はどう反映されたのかという点は最も関心の高いところだが、裁判員に課せられた守秘義務が壁となる恐れがある。……不断の検証が国民の信頼を獲得するということを改めて強調しておきたい」などと述べた。

日本経済新聞社説は、「判決要旨を読んだだけでは、評議の進め方や結論の導き方は分からない。……評議の実態を知る手立てがなければ、裁判員裁判を望ましい姿に近づける制度改善の議論はできない」と述べ、「裁判員経験者のせっかくの語る意欲を妨げ発言内容を規制する、裁判員法の守秘義務条項」の見直しを求めた。

産経新聞社説は、「裁判員初判決―国民の義務見事果たした」との見出しで、「第1号裁判としては意義深く、成果があったと評価できる」、「『市民参加の裁判員裁判』という目的は、立派に達成できたといえる」、「『見て聞いて理解しやすい』という裁判になった意味は大きい」など、今回の裁判を高く評価。その上で、「裁判員の意見や感想を、今後の裁判員裁判に生かさなければならないことはいうまでもない。たゆまぬ検証作業が、制度を定着させる上で欠かせない」と述べた。
(了)

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※ジャパン・ブリーフは、(財)フォーリン・プレスセンターが独自に作成しており政府やその他の団体の見解を示すものではありません。
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