投稿日時: 2009-04-30【ジャパン・ブリーフ / FPCJ, No. 0923】
2009年4月30日
◎中曽根外相 「世界的核軍縮への『11の指標』」を提案
中曽根弘文外相は4月27日、東京都内で開かれた講演会(主催・日本国際問題研究所)で包括的な核軍縮を目指す日本政府の考えを表明した。「ゼロへの条件―世界的核軍縮のための『11の指標』」と題した演説で、中曽根外相は「世界的核軍縮を先頭に立って推進する」との意欲を述べ、来年の早い時期に核軍縮・不拡散に関する国際会議を日本で開催する意向を明らかにした。外相はこの会議の目的として、来年5月の核不拡散条約(NPT)再検討会議の成功に向け「世界的核軍縮を推進する国際社会の一致した行動を生み出す」ことを挙げた。
中曽根外相は演説冒頭で、オバマ米大統領が4月5日にプラハでの演説で発表した「核のない世界を目指す」包括的戦略への支持を表明した。その上で同じ日に北朝鮮がミサイルを発射したことを強く非難し、北朝鮮による弾道ミサイル開発と核開発が国際社会全体への「重大な脅威になる」と指摘した。
◆「11の指標」の提言内容
中曽根外相が提言した世界的な核軍縮への「11の指標」は、(1)核保有国による取り組み、(2)国際社会全体の取り組み、(3)原子力の平和利用のための取り組みの3分野に大別される。
(1)核保有国による取り組みでは、世界の核兵器の9割以上を保有する米国とロシアに一層の核弾頭削減を求める一方で、中国やインド、パキスタンなどの核保有国には軍備の透明性向上やミサイルを含む核兵器開発の凍結を要求している。(2)国際社会への提言では、包括的核実験禁止条約(CTBT)の発効促進を求め、オバマ政権による早期批准に期待を表明し、中国やインド、パキスタンなどにも批准促進を働きかけていくとしている。ウラン濃縮活動を拡大するイランには国際原子力機関(IAEA)への査察協力を要請し、北朝鮮が発射した弾道ミサイルは核兵器運搬手段になりうるとして「国際社会の重大脅威」と非難している。(3)原子力の平和利用に関しては、核兵器テロリズムの防止のため核物質の管理強化を訴え、原子力発電の新規導入国への人材育成支援の継続などをうたっている。
麻生太郎首相は4月29日に北京を訪問し、温家宝中国首相と会談した。朝日新聞(4月30日)報道によると、核問題について麻生首相が「米国ではオバマ政権が誕生し、従来と異なる対応をしている。核兵器を削減していくため、中国にも協力してほしい」と求めたが、温首相は「中国は一貫して核兵器の全面禁止を唱えている。核の先制不使用も約束している」と従来通りの見解を示したという。
◆外相演説をめぐる主要紙論調
中曽根外相演説を論評する主要紙社説は、政府が核軍縮へのより積極的な関与姿勢を示したことを原則的に評価している。しかし日本に求められる具体的な政策については、各紙はそれぞれ異なった視点からの議論を展開している。
読売新聞社説(4月30日)は「スローガンより具体的行動だ」との見出しを付け、「日本にとって、特に気がかりなのが中国の動向だ。米露英仏が核弾頭数などを公表し、削減に努めているのに対し、中国は一切の情報を開示せず、核兵器削減にも取り組んでいない。核戦力を強化する動きもみられる。南シナ海の海南島にSLBM搭載の新型原子力潜水艦を配備したほか、射程を大幅に延ばした新たなタイプのSLBMも開発中と言われている」と述べる。同社説はさらに「より眼前に迫った脅威は、北朝鮮の核開発だ。北朝鮮は使用済み核燃料の再処理再開を宣言した。世界全体の核軍縮が進んでも、北朝鮮が核の小型化に成功すれば、地域の平和と安全は深刻な危機に瀕(ひん)する」と警鐘を鳴らす。
「核軍縮をリードしよう」との見出しの毎日新聞社説(4月28日)は、核軍縮・核不拡散を目指す国際会議構想について「この種の国際会議を日本が主催するのは極めて異例である。唯一の被爆国であり非核三原則を国是とする日本が核軍縮分野でリード役を買って出ることは意義がある」と書く。05年の前回NPT再検討会議が成果なく終わった一因は、ブッシュ前政権の核軍縮への消極姿勢にあったと述べ、「オバマ政権はこの反省から核廃絶へ向けた包括的戦略の柱の一つにNPT強化を掲げる。……核保有国と非核国の間の不信感を除去しNPT体制への信頼を回復させるための橋渡し役は、非核国であり原子力の平和利用大国でもある日本こそふさわしい」と結ぶ。
朝日新聞社説(4月29日)は、「首相が先頭に立ってこそ」との見出しの下に「外相の意欲は評価するし、来年、日本で開くという核軍縮のための国際会議も成功させたいと思う。だが、残念ながら、演説は物足りない。なぜか。唯一の被爆国家としての主体的な取り組みが乏しいのだ」と述べる。「肝心なのは、核の役割を減らす中で、東アジアの安定をどう確かなものにしていくのかということなのではないか。困難な作業ではあるが、中国にも日本にも、その他の周辺国にも利益になる新しい安全保障の枠組みづくりを考える必要がある。なのに、外相演説はこの点にほとんど触れていない。何より物足りないのは、麻生首相がこの問題を外相に委ねてしまっていることだ」と、麻生首相に核軍縮問題への所信を明確に発信するよう要望する。
日本経済新聞社説(4月28日)は「『中曽根軍縮』を世界に説け」との見出しを掲げ、「(中曽根外相演説は)オバマ米大統領のプラハ演説に呼応し、日本の立場を加えた包括提案である。精神論ではなく具体的論点を示し、特に中国にも核軍縮を求めた点に意味がある。世界に発信したい」と書き出す。そして「日本の安全保障にとっては特に中国の核軍縮が重要なのは、論を待たない」、「中国はこれまで核軍縮を必ずしも自国にかかわる問題としては意識してこなかった。米ロとの核弾頭数の差は大きく、まず米ロの削減が先決と考えるのは、それなりの理屈ではあるが、中国が東アジアで最大の核大国である事実は、隣国日本にとって重い」と論じる。
(了)
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